ツイステッドワンダーランド
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「俺も悪かった。お前が苦しんでるのを知ってたのにずっと見ない振りをしてた」
「うっうっ、うう……」
「だから、今日は言うよ。リドル、お前のやり方は間違ってた。だからみんなにちゃんと謝るんだ」
「……うっ、ぐす……ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」
「……よく言えました」
「うん……っ」
クローバーが俺を見た。
……此奴、何時から思い出してたんだ?
「オレ、寮長が今までの行動を謝ってくれたら言おうと思ってたことがあンすけど……ゴメンの一言で済むわけねーだろ!絶ッッ対許してやらねーーー!!!!」
思いっ切り息を吸ったトラッポラが言った言葉に俺達は思わず驚く。
「え~っ!?この空気でそれ言う!?」
「ったりめーだ!こっちは散々コケにされたわけだし?せっかく苦労して作った手作りマロンタルトを捨てられそうになったわけだし?涙ながらに謝られたくらいじゃ許せねーなあ」
「コイツオレ様より根に持つタイプなんだゾ」
「フフ、ははは」
「ハルのツボに決まったな」
「「楽しそうですね」」
「そんな……じゃあ、どうすれば……」
俺は面白くて笑ったが、リドルは相当なショックを受けたらしい。
「……オレ、しばらくは誕生日じゃないんだよね」
「は?お前なにを言って……」
「だから『なんでもない日』のパーティーのリベンジを要求する。オレたち、結局パーティーに参加できてねーし。そんで今度はお前がタルトを作って持って来いよ。あっ、トレイ先輩とハルに手伝ってもらうのはナシだから!自分で苦労しろ!……そしたら、許してやらないことも、ない」
「素直じゃないなあ」
「外野は黙ってろっ。いい?わかった?」
「……うん。わかった」
「うんうん。歩み寄りは美しきかな。これで一件落着ですね」
「……お前、大した事してねぇだろ。つーか、なんで俺まで名前が挙がるんだよ」
俺が何時もの感じで言うと、リドルが俺を見て来た。
「何だ?」
「ハーヴェル兄様の口調が違う……」
「やっぱりハーヴェル兄さんだったのかぁ」
「今は一生徒のハルだからな」
「え、兄様?兄さん?」
「気にすんな。説明する気もねぇから」
さて、後はこの荒れた庭を何とかするか。
「そんじゃ、オレたちはまずお庭の片付けといきますかぁ。せっかくのフォトジェニックなお庭がボロボロだよぉ……とほほ」
「俺も手伝う」
「トレイはリドルくんを医務室に運んできて……オーバーブロットしちゃったわけだし一度先生に診せたほうがいい」
「ダイヤモンドくんの言う通りです。私も付き添いましょう」
「……はい。ありがとうございます」
「ハル、無理するなよ」
「分かってる」
「「「?」」」
俺の聖主としての力を開放した。
俺は──時空の聖主。
だから、ある程度時空間を操れる。
その能力で庭を元通りになるまで時間を戻した。
「えっ、えぇえええええ!?」
「……流石に疲れた」
「じゃあ、帰ろうか。ルア、ソル。後は任せた」
「「畏まりました」」
俺はアキに体を預けて眠る。
夢渡りの時についでにリドルの穢れを浄化したから、余計に疲れた。
──数日後。
「我らがリーダー!赤き支配者!リドル寮長のおなーりー!」
「「リドル寮長、バンザーイ!」」
今日は例のやり直しの日。
正直、俺はまだ回復し切れないから眠い。
「うん。庭の薔薇は赤く、テーブルクロスは白。完璧な『なんでもない日』だね。ティーポットの中に眠りネズミは……って。いや、いなくてもいいか」
「そんなに急に変えなくたっていいさ。ジャムはネズミの鼻に塗らなくたってスコーンに塗ればいい。絶対ないとダメ、じゃなくてあったっていい。にしていけばいいだろ?」
「うん、そうだね」
「はーぁ。今回の準備全部オレらがやらされたんだけど?」
「まあまあ。寮長の体調も何事もなく回復したわけだし。片付けはハルがやってくれたんだし」
「お庭にフォトジェニックな飾りつけも付け加えれたし、オレ的には大満足♪」
「うーっ!早く料理が食べたいんだゾ!」
グリムは元気だな。
欠伸を噛み殺しながら、腕の中のルアを撫でた。
「オッケー♪ではさっそく……」
「ちょっと待って!」
「えっ?」
「その白い薔薇……」
リドルが指した先には塗り残しと思われる白い薔薇の木。
「げっ!塗り残し!?」
「あわわわ……エースちゃん、デュースちゃん、ちゃんと塗ってって言ったじゃん~!」
「僕たちのせいですか!?」
「リ、リドル。これは……」
「まさかまた……!?」
「「「…………」」」
「…………」
俺とルアとソルはアキを見る。
今回は俺は眠くて準備を手伝えず、ルアとソルは俺に付き添っていた。
結果、変な所で面倒くさがるアキだけ行かせたが……思い切り目を逸らしてやがる。
「……なんてね。もう薔薇の木の1本や2本で罰したりしないさ」
「ほ、ほんとー!?リドルくん寛大!」
「みんなで塗れば早いだろうしね」
「って塗るのは変わんねーのかよ!」
「まあまあ。それでも本当に……うん。変わったな、リドル」
「もう1秒も我慢できねえんだゾ!さっさとバラでもなんでも塗ってパーティーだ!」
「それじゃみんな、準備はいい?」
「…………アキ?」
「今度はちゃんとやる」
今度はって、やっぱりお前か。
それから全員で手分けした事で、あっという間に薔薇塗りは終わった。
「で、寮長の詫びタルトは結局どうなったの?」
「ち、ちゃんと作ってきてるよ。これ。この苺のタルトはボクが作った」
「うんうん。形は少し不格好だけど、苺の艶を出すナパージュを塗るひと手間もかけてるし、初めてにしては上出来じゃないか」
「はい、すかさず甘やかし入りました~。ほっといて実食といきますか」
「あっ、レアなタルトの写メ撮るから切るのちょっと待って!……はい、オッケー!」
少し歪な苺タルトを撮るダイヤモンドに俺達は苦笑する。
「先輩もマジぶれないよね……んじゃ、いただきまーす……パクッ!」
「はぐっ!」
「……ん!?」
「「こ、これは……」」
「「「「…………」」」」
「「「「「しょっぱい!!!!!」」」」」
「えぇっ!?」
甘い筈の苺のタルトは、一口食べただけでも叫ぶ程しょっぱかった。
「なんだこりゃ!?めちゃくちゃしょっぱい!なに入れたらこうなるワケ!?」
「塩のしょっぱさじゃねぇな」
「厳密に材料を量って、ルール通りに作ったんだ。そんな間違いないはず……あっ!もしかして……オイスターソースを入れたから?」
「ゲホッ……もしかしてクローバー先輩が冗談で言ってたセイウチ印の?」
「はあ?」
タルトにオイスターソースだ?
「だってトレイが昔、レシピには載ってないけど美味しいタルトには絶対隠し味でオイスターソースが入ってるって……」
「オエッ、んなわけねーだろ!ちょっと考えれば嘘だってわかるでしょーが!」
「絡み合う苺とオイスターの斬新すぎるお味」
「「よく食リポ出来るな」」
「しかもこれ、隠し味って量のしょっぱさじゃないよね。どれだけたくさん入れたの?」
「だ、だって適量とか言われてもわからないだろう?何cc使うのか正確に教えておいてくれないと……」
「適量は食う奴の味覚に合わせて変えるから、適量なんだよ」
「厳密に計れるものじゃない」
俺はある程度料理するし、アキは飲み物関連が凄く美味い。
だから、それくらいの知識はある。
「……プッ、あはは!まさかあの冗談を真に受けて本当に入れる奴がいたなんて……あははは!」
元凶であるクローバーはまさかの事に爆笑した。
「……あは、あはは、そうだね。馬鹿だな、ボク……あはははっ!」
「はは、不味すぎて笑えてきたな」
「つーか、これもう笑うしかなくね?ははっ」
「でも、なんかこれはこれで美味い気がしてきたんだゾ!」
「あ、それわかるかも。案外悪くないよね」
「ダイヤモンド先輩もグリム並にゲテモノ食いじゃないですか!」
「いやいや、そんなことないって」
まぁ、過去に食わされそうになった明らかに食べれないヤツや命に関わるものを知ってるからな……。
「このタルトは甘くないから悪くない、だろ?」
「えっ?」
「お前、甘いもの嫌いだもんな」
「でも食べに来てませんでしたっけ?」
確か、優羽達がマロンタルトを作った時に摘まみ食いに来てたんだっけか。
「えっ、えっ……トレイくん、なんで知ってんの?オレ、甘い物苦手だなんて誰にも言ったことないんだけど」
「『ドゥードゥル・スート』を話のネタにするフリでよくケーキの味を変えさせるだろう?全然顔には出さないけど、もしかしたら甘い物が嫌いなのかなとずっと思ってた」
「あ~……バレてたんだ?うわ、はっず……トレイくん、リドルくんの件もそうだけど。その『思ってけど言わない』っての良くないと思うな~、オレ」
「ハルの事もだな」
「次の『なんでもない日』はキッシュも焼いてやるからな」
「そりゃどーも……ケーキ並にフォトジェニックなやつにしてね」
確かにクローバーは言えばいいのに敢えて言わないっつー所があるな。
「ふんふふーん♪トレイのお菓子はいつ食べても絶品だにゃあ~。モグモグ」
「チェーニャ!なんでここに!?」
そんな中、チェーニャが現れてクローバーのタルトを食べる。
「ん?『なんでもない日』だからお祝いにきただけさ。おめでとう、リドル」
「『なんでもない日』はハーツラビュルの伝統行事だ。キミには関係ないだろう?」
「それはそっちの人たちやハーヴェル兄も同じじゃにゃーの」
まぁ、確かに俺達や優羽達は部外者だな。
あと、然り気無く呼んできやがったな。
「あっ、オマエ!こないだ会ったにゃあにゃあしゃべる変なヤツ!そういえば、結局オマエはどこの寮なんだゾ?」
「そもそもチェーニャはうちの学園の生徒じゃない。ナイトレイブンカレッジの長年のライバル学校ロイヤルソードアカデミーの生徒だ」
「ええっ!?違う学校の生徒!?」
「しかもロイヤルソードアカデミー!?」
「なんかすごく格好いい名前だね!?」
「「気にする所そこか?」」
ロイヤルソードアカデミーと、彼等が騒ぐと……
「今、ロイヤルソードアカデミーって言ったか!?」
「あの気取った奴らの仲間が来てるって!?」
「なんだと!?どいつだ!すぐ追い出してやる!!」
「おっと。それじゃ、タルトも食ったし俺は帰るとするかにゃ。フッフフーン♪」
何か、他の寮生が騒ぎ出し、チェーニャが消えた。
「あっ、逃げたぞ!」
「追え追え~!」
そんなチェーニャを追う寮生達。
「なんかみんな急に殺気だったんだゾ」
「ナイトレイブンカレッジの生徒は高確率でロイヤルソードアカデミーを敵視してるからね」
「100年も延々負け続けてればそうもなるというか……」
「まーま!お祝いの日にそんな暗い話はナシナシ!今日は『なんでもない日』のパーティーを楽しもうよ」
「にゃっはー!腹がはち切れるまでごちそうを食ってやるのだー!『なんでもない日』、バンザーイ!」
本当、グリムは元気だな。
「…………あ、ダイヤモンド」
「え?何?」
「キッシュなら俺が焼いたので良けりゃあるけど」
「「「「えっ!」」」」
「おい、何でリドルとクローバーまで反応した」
アキとダイヤモンドは分かる。
けど、リドルとクローバーは何でだ。
「甘い物出されるし、手土産に向かねぇと思って菓子じゃなくてキッシュにしたんだよ」
「だって、ハーヴェル兄様のキッシュとピーチパイとマーボーカレーは絶品だから」
「そうそう、何度焼いてもあの味が出なくてな。あと、出来れば俺の事はトレイで」
「そんなに美味しいの?凄い楽しみ~。あ、俺もケイトでいいよ。もしくはケーくんで♪」
「ちょっと待った!それなら俺をエースって呼ぶのが先だろ!」
「それなら僕だってデュースと」
「分かったから落ち着け…………ルア?ソル?」
「「切り分けました」」
「「流石仕事が早い」」
こうして、この日の『何でもない日』のパーティーは賑やかなものになった。
end.