ツイステッドワンダーランド
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「うっ!?」
「!?なんだ…卵?寮生が投げた……のか?」
「誰だ!ボクに卵を投げた奴は!」
「「「………………」」」
ハーツラビュルの寮生は黙り込んでいた。
「フ……ハハハ、アハハ!!うんざりだって?うんざりなのはボクのほうだ!!何度首をはねても、どれだけ厳しくしてもお前たちはルール違反をおかす!どいつもこいつも、自分勝手な馬鹿ばっかり!いいだろう。名乗り出ないなら全員連帯責任だ!全員の首をはねてやる!
「待てリドル!!」
「「御下がりください!」」
無差別攻撃。
咄嗟に俺達の前にルアとソルが出て防壁で護る。
「う、うわああ!!逃げろ!」
「ぐええっ!首輪がっ……!」
逃げ惑う寮生達。
「アハハハ!どうだ!誰もボクに手も足も出ないだろう!フフフ、やっぱりルールを厳守するボクが一番正しいんだ!」
「おやめなさいローズハートくん!ルールを守る君らしくもない!」
「トレイ、これヤバいよ。あんなに魔法を連発したら……」
「くっ…!リドル!もうやめろ!」
「おい、お前!なんでも自分の思い通りになるはずないだろ!?そうやってすぐ癇癪を起すところが赤ん坊だってつってんの!」
「今すぐ撤回しろ!串刺しにされたいのか!」
顔を真っ赤にした彼が怒鳴った。
「やだね。絶っ対にしねえ」
「うぎいいいいいい!!!!!!」
「ガチでヤバいって!お前ら逃げろ!」
ダイヤモンドの本気の声がした後、景色が一転する。
何本もの薔薇の木が宙に浮かんだ。
「うわわ……庭中のバラの木が全部浮き上がっていくんだゾ……!」
「なんて大がかりな魔法なんだ!まさかアレ全部で突っ込んでくる気か!?」
「薔薇の木よ、あいつの身体をバラバラにしてしまえーーー!!!」
「いけない!避けなさい!」
「言ってないで動け!」
咄嗟に愛刀を出し、トラッポラに迫る薔薇の木を切る。
が、その間にも次が迫っていた。
「早く逃げて!」
「………ッ!!」
俺が技を出そうとし、アキが動こうとした時……薔薇の木がトランプへと変化する。
「「…………」」
「!?これは……」
「……あ、れ?生きてる?なんだこれ、トランプ?」
「薔薇の木が全部トランプに変わった!これは……」
俺は仕掛人であるクローバーを見た。
「リドル、もうやめろ!」
「トレイの『ドゥードゥル・スート』!?えっ……どういうこと?」
「魔法封じの首輪が外れてるんだゾ!」
確かにトラッポラや無差別攻撃で寮生が嵌められた首輪が消えている。
「言っただろ。俺の『ドゥードゥル・スート』は少しの間だけならどんな要素も上書きすることができる。だから……“リドルの魔法”を“俺の魔法”で上書きした」
「うっそ……そんなんあり!?チートじゃん!」
「く……っ、首をはねろ!首をはねろったら!なんでトランプしか出てこないんだよぉ!」
「リドル、もうやめろ。これ以上はお前が孤立していくだけだ!みんなの顔を見てみろ!」
逃げ惑っていた寮生は今は腰が抜けた状態になっていた。
「ほ、本気でやる気だったのかよ……」
「さすがにやり過ぎだろ……」
「バ、バケモノだ……」
その顔は恐怖。
「は……?トレイに魔法を上書きされた……?ボクの魔法よりキミの魔法のほうが優れてるってこと?」
「そんなことあるわけないだろ。リドル、いったん落ち着いて話を聞け」
「キミもボクが間違ってるって言いたいの?ずっと厳しいルールを守って頑張ってきたのに!いっぱいいっぱい我慢したのに!ボクは……ボクは……信じないぞ!!!!!」
クローバーが説得しようとしたが、彼にはもう届いていない。
「いけませんローズハートくん!それ以上魔法を使えば、魔法石が『ブロット』に染まりきってしまう!」
「ボクは……ボクこそが!!!絶対、絶対、正しいんだーーーーー!!!!」
「リドルーー!!」
「…………っ……!!」
「ハル!!」
黒く染まっていく……それは、穢れで人が業魔と化す感覚に近い。
其れに当てられ、一歩退いた時……彼が黒いオーラに包まれて姿を変えた。
「黒いオーラが全身から!」
「ハル!大丈夫か!?」
「「ハル様!!」」
酷く気持ち悪い……此れは……
「ククク……ハハハハハ!!ボクに逆らう愚か者ども。そんな奴らはボクの世界にいらない。ボクの世界ではボクこそが法律。ボクこそが世界のルールだ!返事は『ハイ、リドル様』以外許さない!!ボクに逆らう奴らはみんな首をはねてやる!アハハハハハ!!」
「ああ、なんてことだ!私がついていながら生徒をオーバーブロットさせてしまうなんて!」
学園長の声に、意識を飛ばさない様に拳を強く握る。
「オーバーブロットってなんなんだゾ!?アイツ、めちゃくちゃ邪悪な感じに変わっちまった!」
「オーバーブロットは魔法士が一番避けねばならない状態です。彼は今、負のエネルギーに囚われて感情と魔力のコントロールを失っている」
「なんかよく分かんねぇんだゾ!?」
「僕もだ!」
「堂々と言う事じゃない……ハル、無理はするな」
「……大丈夫だ」
アキが俺を支えてくれた。
「あーもー!平たく言うと闇落ちバーサーカー状態ってこと!」
「このまま魔力を放出し続ければリドル自身の命も危ない」
「命ぃぃぃ!!??」
「とにかく生徒の命が最優先事項です。他の寮生は私が避難させましょう。ローズハートくんの魔力が尽きる前に正気に戻さねば。命を失うことも最悪ですが、さらに最悪なのは……とにかく、君たちは他の教員と寮長たちに応援を要請して……」
「だらあああ!くらえ!!!」
ビュオ…!!
「「「えっ!?」」
「いでよ!大釜!」」
バキッ…!!
「ふな゛~~~~~~~っ!!」
ボォオオ…!!
トラッポラの風が、スペードの大釜が、グリムの炎が、彼に向かっていく。
「……貴様ら、なんのつもりだ?」
「ちょちょちょ、お前らなにやってんの!?」
「アイツ、あのままじゃ大変なことになっちまうんだゾ!?」
「さすがにそこまでいくと寝覚めが悪い。それに……」
「まだ『ボクが間違ってました。ごめんなさい』って言わせてねーし!」
「「…………」」
「……お前たち……わかった!少しの時間なら俺がリドルの魔法を上書きできる。その間に、頼む!学園長、寮生の避難を頼みます」
トラッポラ達同様にクローバーも決断した様だ。
「君たち待ちなさい!危険です!」
「そーだよ!トレイくんまでなに言ってんの?リドルくんに勝てるわけないじゃん!」
「勝てる奴にしか挑まないなんて、ダサすぎんでしょ!」
「そんなの、クールじゃないんだゾ!」
「正気に戻すってとり早い方法はこれしか思いつかないな」
「あぁ、あいつを失うわけにはいかない。俺は……あいつに伝えなきゃいけないことがあるから」
「こうなったら腹を括るっきゃない!」
優羽……スペードに影響されたか?
「………あ~~、くそっ!わかりましたよ。こういうの柄じゃないんですけどねー、ホント!」
「ああもう……生徒を避難させたら私もすぐに戻りますから!それまで耐えてください!」
「どいつもこいつも良い度胸がおありだね……みんなまとめて、首をはねてやる!」
「このままじゃリドルの身体が危ない。手遅れになる前に止めないと」
「ルア、優羽を頼む」
「ソル、逃げ遅れた奴を護ってやれ」
「「「「!!」」」」
俺は愛刀を構え、アキも輝石を出して彼等の前に立った。
「お前達の願い」
「俺達が叶えてやる」
さあ、戦闘開始だ。
俺が狙うのは、彼の背後に現れた化け物の様な存在。
其れが持つ薔薇の木が振るわれる。
「ふん、そんなもの効くか」
「猛けき炎よ 災いを灰塵と化せ……エクスプロード!!」
アキが完全に防ぐ間に詠唱。
薔薇の木は其れだけで破壊された。
「飛びっきりの行くぞ……天光満つる所我はあり 黄泉の門開く所汝あり 出でよ神の雷……沈め……インディグネイション!!」
「うわぁああ!」
後ろの化け物に当たり、消滅したかと思うと……光に包まれる。
『ハル!』
『……優羽?』
モノクロの世界。
何故か其処に居る俺と優羽。
『此れは夢渡りの一種か?』
『夢渡り?あ、誰か居る……』
それから俺と優羽はリドルの過去を見た。
何もかもが管理され、抑圧された日々。
そんな中で見付けたトレイとチェーニャとの憩いの時間も、軈て奪われる。
最後に残ったのは……泣いているリドルだった。
『リドル先輩……』
『……リドル、俺は言ったよな?ちゃんと、息抜き出来る場所や言いたい事言える場所を作れって』
『『え……』』
『忘れちゃったみたいだけどな……昔、トレイやチェーニャと一緒に、俺の街に迷い込んだだろ?』
俺がそう言えば、今度は子供の三人が俺の街に来て、本来の姿の俺と関わっている光景が流れる。
『あ……あぁ……』
『あの場所は疲れた者が羽休めが出来る様にしたから、疲れた子供のお前は一緒に遊びたいと思っていた彼等と来た。でも、あの場所は一時的にしか居れないから……ちゃんと元の世界でも作る様にいっただろ?』
『うん……言われた』
『……目覚めたら、ちゃんとお前のやりたい事を教えておくれ』
『うん』
「ハル、大丈夫か?」
「「ハル様~」」
「……ああ、大丈夫」
どうやら俺の意識が飛んでいたのは数秒だったらしい。
優羽に振り返ると、彼はグリムやトラッポラ、スペードから声を掛けられてハッとした様子を見せる。
そして……リドルはクローバーに抱き起されているが、まだ目覚めていない様だった。
そんなリドルにクローバーが声を掛けている。
「────リドル!!!」
「……はっ!!」
何回目かで、リドルの目が開いた。
「あ、目ぇあけた!」
「ハァ~……マジ、もう起きなかったらどうしようって超焦った……」
「はぁ……はぁ……、ボクは……一体……?」
「良かった、正気を取り戻していますね」
まぁ、消耗は激しそうだな。
「今はなにも考えなくていい。寝てろ」
「あーっ、そうやって甘やかすからちょっと怒られただけで暴走とかするんですよ!庭は滅茶苦茶だし、こっちもヤバイとこだったんだからな!」
「確かに、ヤバかったな」
「まったく。ストレスを溜めるとろくなことがねぇんだゾ」
「そのストレスの原因の一つだろ」
「アキ、言ってやるな……リドル」
名を呼べば……リドルが頷く。
「………………ボク………本当は、マロンタルトが食べたかった」
「へっ?」
「ああ、それで?」
「薔薇は白だっていいし、フラミンゴもピンクでいい。お茶に入れるのは角砂糖より蜂蜜が好きだしレモンティーよりミルクティーが好きだ。みんなと食後のおしゃべりだってしたい……」
「リドル……?」
「ずっと、もっとトレイたちと、遊びたかった………う、うう……うううっ……わぁあああん!」
泣き出したリドルの頭を撫でた。
リドルは空いた方の手を握ってくる。
「うっそ……あのリドルくんがギャン泣きしてる……」
「おいこら!泣けば許されると思うなよ!」
「お前もたいがい空気読まないな……」