ツイステッドワンダーランド
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「他の奴らも、魔法封じられるのが怖くて言い出せないけどこんなのおかしいと思ってるんだろ!?」
「いや、僕たちは……」
「へえ、そうなのかい?」
「と、とんでもありません、寮長!」
「すべては寮長のご決断次第です!」
「そんなぁ~!」
「チッ…日和りやがって。ダッセー」
他の寮生は彼が怖くて逆らえないらしい。
「ボクが寮長になって1年。ハーツラビュル寮からは1人の留年者・退学者も出していない。これは全寮内でハーツラビュルだけだ。この寮の中でボクが一番成績が優秀で、一番強い。だから、ボクが一番正しい!口答えせず、ボクに従っていれば問題ないんだ!」
「そんな……!」
「ボクだって、やりたくて首をはねてるわけじゃない。お前たちがルールを破るからいけないんじゃないか」
「……」
あ、アキがマロンタルトに近付いた。
「ボクに従えないのなら、まとめて首をはねてやる!」
「みんな、ほら。『はい、寮長』って言って」
「…………言えません」
「嫌です!」
「こんなワガママな暴君、こっちから願い下げだ!」
「今、なんて言った?」
「オマエはおこりんぼでワガママで食べ物を粗末にする暴君って言ったんだゾ!」
「お、おい、そこまでは言ってな………」
「ソル」「はい!」
「
「「うわああーー!!!…………?」」
「「「!?」」」
彼の魔法をソルの防御壁が防ぐ。
「いい加減にしなさい。ほら、此れでいいだろう?」
「!」
その間にアキはマロンタルトを輝石化、そのまま懐へ。
「悪ぃが、気分が優れない。俺達は先に帰らせて貰うぞ」
「おっと」
更に何かしそうなアキの襟を掴んで歩き出し、ルアとソルが一礼してついて来た。
「……ハル、あの子は……」
「向こうは覚えてねぇみたいだ。お前も知らねぇフリしとけ」
「……納得いかないが、仕方ないか」
「くっそーー!!ぜっっってぇ謝らねえからなーーー!!!」
少しして、そんな声が後ろからしてくる。
「ハルー!アキー!」
「おう」
少しして、彼等が追い付いてきた。
「あーくそっ、腹立つ!!あの赤毛のチビ暴君!自分がハートの女王にでもなったつもりかよ」
「寮長に逆らって追い出されるなんて……どんどん優等生から遠ざかってる……」
怒っているトラッポラに何やら落ち込んでいるスペード。
「「誰だ」」
「!?」
「おっと、危にゃい危にゃい」
気配を感じて俺は振り返り、アキが輝石を放つ。
「ふぎゃーーー!!生首お化け~~!!」
その先に居たのは、頭だけの青年だった。
「おっと、体出すの忘れとったわ」
「な、なんだ。ちゃんと身体もあるんじゃないか。君は?」
「スペード、人に尋ねる時は自分から名乗るのが礼儀……つーか」
「多分、向こうの方が年上だな」
しっかり全身を出した青年は一瞬俺を見て目を瞠り、不敵な笑みに戻る。
……此奴は覚えてるのか。
「俺はアルチェーミ・アルチェーミエヴィチ・ピンカー。猫のような、人のような魔力を持った摩訶不思議なヤツ」
「アルチェー……なんだって?」
「ひひひ、みんなチェーニャって呼ぶかねぇ。少なくとも……そのへんのヤツらとはレベルが違うぜー」
「また変な人が……」
「そうかい?ここいらじゃあ、これくらい普通だけどね」
そこでアキが俺を見た。
「ややこしい名前なら、ハルもだな」
「うっせ」
「?どうして?」
「ハル様の本来の名前はハーヴェル・ディノイア・コールブランドですから」
「因みにアキ様はアーキス・テレジア・コールブランドです」
「確かに、ややこしいかも」
「まぁ、其れもあるからハルって名乗ってるしな」
「成る程」
……俺にとっては、ディノイアもコールブランドも大切な名前だ。
「オレは暴君に理不尽な目にあわされて機嫌が悪いんだよ。どっか行け」
「リドルが暴君……フフフ。まあ、そう言えなくもないかもしれないけどにゃあ。ちっこい頃からあいつは真面目なヤツなもんで……フフフ」
「なにか知ってるのか?」
「知っとるといえば知っとるし知らないといえば知らにゃあ」
「どっちなんだゾ」
不適な笑いで曖昧な返答をするチェーニャ。
「なあにぃ?君ら、リドルについて知りたぁの?」
「ああ知りたいね!どうやって育てりゃあんな横暴に育つのか」
「それじゃあ、あの眼鏡に聞いてみにゃあ」
「眼鏡って……クローバー先輩のことか?」
「あいつはリドルがちっちゃい頃からよう知っとるよ。リドルについて知りたいなら俺ならまずあの眼鏡に聞くにゃあ」
「幼なじみってことか。そんな感じはしなかったが……」
「おみゃーがそう思うなら、そうなんじゃにゃーの。ほんなら、俺に聞く必要はないにゃあ。ほいじゃあ」
言いながらチェーニャは体を消して、また生首状態になった。
「あっ、おい!」
「フフフ~ン♪」
鼻唄を歌いながら去っていく。
「なんか変なヤツだったんだにゃあ「「にゃあ?」」……あっ!口調がうつった!」
「ずっと首輪をはめられたままじゃまともにエースが授業も受けられない。クローバー先輩に話を聞きに行ってみよう。それに……」
「謝って外してもらうなんて、ダセーから絶対やだ!」
「待ち伏せしてみよう」
俺とアキは視線を交わした。
「悪ぃが、俺は止めとく」
「俺もハルが行かないなら行かない」
「何だよ、二人もあの暴君のこと怒ってたんじゃないのかよ」
「俺は食べ物を粗末にする奴が嫌いなだけだ」
「俺はアキが手を出さねぇ様に連れ出しただけ……取り敢えず、寮に戻るか」
「「「はーい」」」
後日、話を聞きに行った筈の彼等は、何故かローズハートと寮長の座を掛けて決闘する事になる。
そして、決闘の日。
念の為、気合いに満ちた彼等についてハーツラビュル寮の薔薇の迷路へとやって来た。
「これよりハーツラビュル寮の寮長の座をかけた決闘を行います。挑戦者はエース・トラッポラ。そしてデュース・スペード。挑戦を受けるのは現寮長であるリドル・ローズハート。では、決戦の掟に従い、挑戦者のハンデである魔法封じの首輪を外してください」
学園長の指示に、トラッポラの首輪が外される。
「あー、やっと首輪が外れた!」
「どうせすぐまたつけられることになるんだ。つかの間の解放感を味わうといい。キミたちがボクに決闘を挑むと聞いて耳を疑ったよ。本気で言ってるのかい?」
「あたりまえじゃん」
「冗談で決闘を挑んだりしません」
「フン。まあいいや。それじゃあさっさと始めよう」
……作戦を立ててたみてぇだが、勝てる算段はあるのか?
「リドルくん。今日の午後のお茶の用意はどうする?」
「愚問だね。ボクのお茶の時間は毎日キッカリ16時とルールで決まってる」
「でももう15時半を過ぎてるけど……」
「ボクが遅刻すると思うのか?どうせすぐ決着がつく。そういうわけで、ボクには時間がない。1人ずつ相手するのも面倒だ。2人まとめてかかっておいで」
「「「いいぞー!寮長!軽く捻っちゃってくださーい!」」」
「………」
余裕な様子のローズハートに乗る寮生達の一方……クローバーの表情は優れなかった。
「ずいぶんと言ってくれるな」
「カ~ッ!カンジ悪いんだゾ!」
「こっちだって作戦くらい立ててきてるっつーの!」
「学園長、決闘の合図を」
「私が投げた手鏡が地面に落ちて割れるのが始まりの合図です。では……レディ、ファイッ!」
学園長が放った手鏡が地面に落ちて割れる。
直後……
「
「「うわああああ!!」」
トラッポラとスペードに首輪が嵌められた。
「ぐ……っ、くっそぉ!魔法を具現化させるヒマもなしかよ!」
「ここまで手も足も出ないなんて……」
「なにが起こったのか見えなかった……」
所謂瞬殺だな。
「魔法の強さはイマジネーションの強さ。魔法の効果を正確に思い描く力が強いほど正確性も強さも増す。ローズハートくんはますます魔法に磨きがかかっていますね」
「ふな゛あぁ……レベルが違いすぎるんだゾ」
「「…………」」
アキがチラリと俺を見る。
……此れだけ見させられたら、流石に覚えるな。
っつっても、俺に必要か……?
「フン。5秒もかからなかったね。その程度の実力でよくボクに挑もうと思ったものだ。恥ずかしくないの?やっぱりルールを破る奴は、なにをやってもダメ。お母様の言う通りだ」
「くっ……たしかに、ルールは守るべきだ。でも無茶苦茶なルールを押しつけるのはただの横暴だ!」
「ハァ?ルールを破れば罰がある。そして、この寮ではボクがルールだ。だから、ボクが決めたことに従えない奴は首をはねられたって文句は言えないんだよ!」
「そんなの、間違ってる!!」
「……流石にそれは言い過ぎだと思うけどな」
確かにローズハートはハーツラビュルではトップかもしれねぇけど……其れでも絶対の存在では無い。
「間違ってるかどうかも、全部ボクが決めることだ!!そんな簡単なルールにも従えないなんてキミはどんな教育を受けてきたの?どうせ大した魔法も使えない親から生まれてこの学園に入るまでろくな教育も受けられなかったんだろう。実に不憫だ」
「「…………」」
「「主様……」」
その言葉は俺とアキにも突き刺さる言葉だった。
「……テメッ……」
「ふざっっっっっけんなよ!!!!!!!!」
バキッ
「え……っ?」
その時、トラッポラがローズハートの顔を殴り飛ばす。
「「リドルくん!?/リドル!?」」
「ローズハートくん!?」
「「「げっ……!寮長を殴った!?」」」
「右ストレートが綺麗に顔面にキマッたんだゾ!」
「エ、エース!?」
「「おお……」」
「あー、もういい。寮長とか、決闘とか、どうでもいいわ」
「痛……え?ボク、殴られた……?」
何やらキレたらしいトラッポラに対して、ローズハートはまだ何が起きたのか分かっていない様子だった。
「子どもは親のトロフィーじゃねーし、子どものデキが親の価値を決めるわけでもないでしょ。お前がそんなクソ野郎なのは親のせいでもなんでもねーって、たった今よ~くわかったわ!この学園に来てから1年、お前の横暴さを注意してくれるダチの1人も作れなかった、てめーのせいだ!」
「なに……を、言ってるんだ?」
「そりゃお前はガッチガチの教育ママにエグい育てられ方されたかもしんないけどさ。ママ、ママってそればっかかよ!自分ではなにも考えてねーじゃん!なにが赤き支配者だ!お前は魔法が強いだけの、ただの赤ちゃんだ!」
「赤ちゃん……だって?このボクが?なにも知らないくせに……ボクのことなにも知らないくせに!」
「あ~知らないね。知るわけねぇだろ!あんな態度でわかると思うか?甘えてんじゃねーよ!」
「うるさい、うるさい、うるさい!!黙れ!!お母様は正しいんだ!だからボクも絶対正しいんだ!!」
言い合うトラッポラとローズハート。
此れだけなら子供の喧嘩なんだけどなぁ……。
「リドル、落ち着け。決闘はもう終わってる!」
「クローバーくんの言う通りです。挑戦者は暴力行為で失格!これ以上争いを続けるのであれば校則違反になりますよ!」
「新入生の言う通りだ!もううんざりなんだよ!」
誰かの声と共に、ローズハートに卵が投げ付けられる。