ツイステッドワンダーランド
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ガッシャァアアン
奴から放たれた穢れに、思わず聖隷術を解いてしまう。
その上で、奴は重しを払い除けた。
「嘘だろ!?あんだけの重しを全部押しのけて追っかけてきた!」
「ウウ…ウウウッ…イジ……カエセェエ……ッ!!」
奴は鉱山を離れても追い掛けて来る。
「くそ、このままじゃ追いつかれるっ……!」
「でもだいぶ弱ってる!今なら……」
「あーっ、もう!やったろーじゃん!チビんじゃねーぞ、真面目クン!」
「お前こそ!」
「オレ様の真の力、見せてやるんだゾ!」
ボォオオ
彼等はどうやら戦うらしい。
「……チッ、ったく」
仕方ねーな。
「トラッポラ!スペード!」
「「!」」
「俺が前線に出る。だから落ち着いて当てろ」
「「お、おう!」」
「蒼破!とスペタクルズ使用っと」
奴の属性は木?……風に近いのか?それと無属性。
なら……
「鳳凰天駆!」
「「「す、すげぇ!」」」
「いや、魔法使えよ」
一応、花形はそっちに譲るつもりなんだから。
それから何だかんだあって、戦闘は俺達の勝利で終わった。
「はあ、はあ………っ!」
「やっ……た?」
「か、勝った……オレ様たちが勝ったんだゾ!」
「よっしゃあ!」
「やったあ!」
「勝利のハイタッチなんだゾ~!」
「「「イエーッ!!」」
ハイタッチを交わすグリムと少年達。
若いなぁ……。
「みんなすっかり仲良しだね」
「雨降って地固まるってヤツだろ」
「……あっ、ち、違う。別にこれは、そういうんじゃない!」
「そ、そーそー!変なこと言わないでくんない?」
「オッ、オレ様が大天才だから勝てたんだゾ!力を合わせたから勝てたわけじゃねーんだゾ!」
「……って、言い訳すんのもダサいか。悔しいけどユウの作戦とハルの剣術勝ち、かな」
「……ああ、ユウが落ち着いて指示を出してくれたし、ハルが助けてくれたからこうして魔法石を手に入れられた。これで退学させられずに済む……本当に良かった」
「みんなが協力してくれたおかげだよ」
「大袈裟だな……皆、お疲れさん」
優羽とグリムの頭を撫で、少年二人の頭にもついでに撫でる。
……間違いなく、俺は弱体化してる。
あの程度の穢れで聖隷術が解かされる程、弱くはねぇ筈……原因は何だ?
「はいはい、よかったよかったー。マジ、クッタクタのボロッボロ。早く帰ろうぜ」
「いっぱい魔法を使ったら腹が減ったんだゾ…………ン?コレ、なんだ?」
「さっきのバケモノの残骸か?」
その時、グリムが黒い石を拾った。
「魔法石……?いや、でもこんな石炭のように真っ黒な石は見た事がない」
「クンクン……なんだかコレ、すげーいい匂いがするんだゾ……」
「うそだあ!?」
「アイツが隠し持ってた飴ちゃんかもしれねーんだゾ!」
「飴な訳ねーだろ」
「うう~っ、我慢できない!いただきまーす!」
止める間もなく、グリムはその石を口に放り込む。
「ホントに食べた!?」
「う゛っ!!!!!」
「おい、大丈夫か!?」
「あーあ。そんなもん拾い食いするから~」
「う……ううう………っっっうんまぁ~~~い!!」
「「え゛っ!?」」
「…………」
「まったりとしていてそれでいてコクがあり香ばしさと甘さが舌の上で花開く……まるでお口の中が花畑だゾ!」
……いや、何だその食レポ。
「げーっ。やっぱモンスターってオレたちとは味覚が違うの?」
「……かもしれないな。というか……落ちている得体の知れないものを口に入れること自体ほとんどの人間はやらない」
「本当に大丈夫かな?」
「がっはっは!美味美味!心配しなくても、オレ様はオマエたちと違ってそんなヤワな腹をしてねぇんだゾ」
「もー。あとで腹下して泣いても知らねーからな」
「……厄介な事にならなきゃいいが」
「──さぁ、気を取り直して。この魔法石を学園長に届けに行こう!」
「──エッ!?本当に魔法石を探しにドワーフ鉱山へ行ったんですか?」
「「「へっ?」」」
「いやぁ、まさか本当に行くなんて……しかも魔法石を持って帰って来るなんて思っていませんでした。粛々と退学手続きを進めてしまっていましたよ」
鏡の間で学園長を捕まえたら、そんな事を言った。
「んがっ!なんて野郎なんだゾ!オレ様たちがとんでもねーバケモノと戦ってる時に!」
「バケモノ?」
「モンスターが出てきたんスよ。ほんとに、めっちゃエグイわ強いわで大変だったんだんすけど!?」
「詳しく話を聞かせて貰えますか?」
「……の前に。苦無閃」
「ひょえっ!?」
何時でも出せる所に忍ばせてる苦無を学園長に放つ。
勿論当てる気はなく、顔ギリギリで。
「な、何するんですか!?」
「普通にムカついたから」
「うん、仕方ない」
「そうだな、仕方ない」
「うんうん」
「仕方ないんだゾ!」
「ちょっと!?」
それから俺達は学園長室に移動し、諸々の説明した。
「ほほぅ。炭鉱に住み着いた謎のモンスター。それを5人で協力して倒し、魔法石を手に入れて戻ってきたと?」
「や、協力したっつーか……」
「たまたま目的が一致したというか……」
「お…おお……おおお……………!!!お~~~~~~~ん!!」
なぜか大泣きする学園長。
「なんだコイツ!いい大人が突然泣き出したんだゾ!?」
「全く、いい大人が……」
「この私が学園長を務めて早ン十年……ナイトレイブンカレッジ生同士が手と手を取り合って敵に打ち勝つ日が来るなんて!」
「んなっ!?僕はこいつと手なんか繋いでいません!」
「オレだってヤだよ気持ちわりーな!つーか学園長、歳いくつ!?」
「そーいう意味じゃねぇと思うけどな」
「私は今、猛烈に感動しております。今回の件で確信しました。ユウくん。貴方には間違いなく猛獣使い的才能がある!」
「どんな才能!?」
猛獣って……優羽除いた俺達全員か?
「ナイトレイブンカレッジの生徒たちはみな闇の鏡に選ばれた優秀な魔法士の卵です。しかし、優秀がゆえにプライドが高く、我も強く、他者と協力しようという考えを微塵も持たない個人的主義かつ自己中心的な者が多い」
「ほとんどいいこと言ってねーンだゾ」
「貴方は魔法が使えない。ですが、おそらく使えないからこそ、魔法を使える者同士をこうして協力させることが出来た。きっと貴方のような平々凡々な普通の人間こそがこの学園には必要だったのです!」
「全然いいこと言ってなくね!?」
言いたい放題だな。
「ユウくん。貴方は間違いなくこの学園に必要な人材となるでしょう。私の教育者としてのカンがそう言っています。トラッポラくん。スペードくん。2人の退学を免除するとともに───ユウくん。そして、ハルくん。貴方たちにナイトレイブンカレッジの生徒として学園に通う資格を与えます!」
「「「えぇっ!?」」」
「生徒として!?」
「何で俺まで……」
何か巻き込まれたんだけど。
「ハルくんは話を聞いている限り、魔力ではない魔法を使える様ですし」
「魔法じゃなくて聖隷術だっつーの……」
「それに、ナイトレイブンカレッジには珍しい人助けをする素晴らしい人格!口は悪いですけどね」
「うるせぇ」
……素の方のままじゃ、舐められるからな。
「とにかくなんせ私、とびきり優しいので。ですが、ユウくんには1つだけ条件があります。貴方は魔法が使えない。魔法士としては論外です。満足に授業を受けることすら出来ないでしょう。そこで」
学園長はグリムを見詰める。
「──グリムくん。君は今日、魔法士として十分な才能を持っていることを私に証明しました。よって、ユウくんと2人と1人の生徒として、ナイトレイブンカレッジの在籍を認めます」
「ふな゛っ!オ……オレ様も、この学園に通えるのか……?雑用じゃなく、生徒として?」
「はい。──ただし!昨日のような騒ぎは二度と起こさないように!いいですね?」
「ふな……ふなぁ……ユウ、ハル、オレ様……」
「今日から一緒に頑張ろう」
「……まぁ、よろしくな」
「ふなぁ~~~!!やったんだゾ!!」
喜ぶグリムが飛び込んで来たので、受け止めて頭を撫でた。
「それでは、ナイトレイブンカレッジの生徒の証である魔法石をグリムくん、ハルくんに授けましょう」
学園長がそう言うと、グリムの首に白黒ボーダーのリボンが巻かれ、そして紫色の魔法石が付けられる。
俺の手にはグリムと同じ色の魔法石が付いたペンが。
「ほわっ!魔法石!?」
「本来生徒は魔法石がついた“マジカルペン”を使うのが決まりですが、グリムくんのその肉球では上手く握れないでしょう?特別カスタムです。ああ……なんと細やかな気遣い!私、優しすぎませんか?」
「やったんだゾ!!かっけーんだゾ!オレ様だけの魔法石の首輪なんだゾ~~♪」
「マジカルペンね……まぁ、羽ペンみたいなもんか」
「羽ペン?と、兎も角全然話聞いてませんね……ユウくん。ご覧の通りグリムくんはまだ人間社会に不慣れです。君がしっかり手綱を握って、騒ぎを起こさないよう監督するように!」
この魔法石を媒体に魔法を放つ感じか?
この世界の魔法をじっくり見る機会があれば、俺でも使えるか判断出来んだけどな……。
「あはっ!すげーじゃん、お前。入学したばっかで、もう監督生になっちゃったわけ?」
「なるほど。お前たちの寮に寮生は3人だけなのか……つまり、学園長にグリムの監督を任されたユウが監督生ってことになるんだな」
「プッ……前代未聞なんじゃねーの?魔法が使えない監督生なんてさ。いいね、クールじゃん。魔法が使えない監督生!」
「ちょっと自信ないなぁ……」
「ドワーフ鉱山で見せた気合はどうした?頑張れよ、監督生どの」
優羽は監督生という役職を与えられるみたいだな。
「なるほど、監督生ですか。ちょうど頼みたい仕事もありますし、肩書があるのは都合がい……いえ、素晴らしい!」
「……優羽、コイツが面倒事頼んで来たら俺にも教えろ。内容次第で手伝うし、この鴉締めるから」
「お願いします」
優羽に仕事押し付ける気だろ。
本当に教育者か?
「監督生くん。貴方に、これを預けましょう……これは通称『ゴーストカメラ』と呼ばれるものです」
「ゴースト?」
「カメラ?」
幽霊カメラって何だ?
「あ、そればーちゃんに聞いたことあるかも。すっげー昔の魔法道具っすよね?」
「すっげー昔というほどでも……ゴホン。確かに、君のひいお祖母様かひいひいお祖母様が子どもの頃に開発されたものかもしれません。このカメラには特別な魔法がかけられていて、被写体の姿だけでなく、魂の一部をも写し取ることができるのです」
「魂の一部……?」
「『
「飛び出してくる?」
……いきなり写真の中の奴が出て来たら驚く所じゃねぇ気もするけどな。
「撮影者が被写体と親しくなることにより写真が動画のように動いたり、実体を伴って抜け出したりするようになるんです。面白いでしょう?」
「映ったものが抜け出す?まるで心霊写真じゃないですか!」
「ええ。だから『ゴーストカメラ』と呼ばれたそうです。まだ動画のない時代、より鮮明に思い出を残すために開発されたものらしいですが……スペードくんの言う通り、昔の人は飛び出したメモリーを見て『ゴーストだ!』と驚き、このカメラで写真を撮られることを非常に恐れたんだとか」
「なんか人騒がせなカメラだな……」
確かに。
てか、何でそんな物持ってんだよ。
「ユウくん。貴方はこのカメラでグリムくんやハルくん、他の生徒たちを撮影し、学園生活の記録を残してください」
「らんららん♪オレ様がかっこいいところじゃんじゃん撮るんだゾ~♪」
グリムはノリノリだな。
俺はあんまり、こう……形に残る様な物には撮られたくねぇけど。
「……特にああいうお調子者が悪さをした時には必ず『メモリー』を残しておくこと。私への報告書代わりにうってつけでしょう?監督生としてしっかり周囲に目を光らせ記録をとるように。魔法士でなくても使える希少な魔法道具を気前よく渡すなんて……私の優しさ、天井知らずじゃありません?」
「一々うるせぇ」
「やってみます」
「さて、今日はもう遅い。詳しい話は明日にしましょう。みなさん、寮に戻りなさい」
「では、失礼します」
そして、俺達は部屋を出た。
「はぁ~~~~っ…………退学免除……力が抜けた」
「やれやれだねー」
「らんららん♪明日からナイトレイブンカレッジの生徒なんだゾ!オマエたちなんかぶっちぎって学年主席になってやるんだゾ~~~!」
安堵の息を吐くスペード少年に、疲れた様子のハート少年、そしてご機嫌なグリム。
「ハルはともかく、ユウと2人で1人の半人前のクセしてよく言うぜ……まー、良かったんじゃないの?」
「明日からは同級生だな。監督生、グリム、ハル」
「改めてよろしく!」
「あー……よろしく?」
なんか結構疲れたな。
弱体化が関係してんのか?
「改めてそういうの、ハズイからやめない?」
「フッ、そうだな。これから嫌でも毎日顔を見合わせるだろう。特にこいつとは同じハーツラビュル寮だし……」
「毎日こんな真面目くさった顔を見なきゃいけないかと思うと、やんなっちゃうね」
「それはこっちのセリフだ、サボり魔エース」
「はいはい、退学に半べそかいてた泣き虫デュースくん。んじゃ。また明日ね、監督生、ハル」
そして、二人はそれぞれの寮へと戻って行く。
「なんだかんだでいいコンビかもね」
「オレ様たちも寮に戻るんだゾ!明日からは雑用係じゃない。ついに…ついに!ナイトレイブンカレッジの生徒として、オレ様たちの輝かしい学園生活が始まるんだゾ~!」
「輝かしいかは分かんねぇけどな……」
こうして、慌ただしい一日が終わった。
end.