ツイステッドワンダーランド
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「おお、おはようさん」
「おー、はよ」
「ハル坊は早いなぁ」
「寝てねぇからな。つーか、もう坊って程若くねぇし」
「コラコラ、寝ないとダメだぞ?」
「そうじゃ。わしらみたいになってしまうぞい」
「俺は種族柄、1ヶ月に1日分の睡眠がありゃ十分なんだよ。そーいや、お前等は飯食えんの?」
「いや、食べられないぞ」
「そーかい」
昨晩、物語を途中まで聞かせて、最終的に子守唄を聞かせて優羽達を寝かし付けた。
その後に俺の領域化の再確認をしてたら朝になり、寮に戻って朝飯の準備をする。
「そろそろ時間か……おーい、誰かあの二人起こしてやれ」
「「「はーい」」」
ゴーストに優羽とグリムを任せ、朝飯を置いていった。
「おはようございます」
「ゴーストに起こされたんだゾ……」
「ああ、そりゃ俺が仕向けたんだわ。おはよーさん。冷めねぇ内に朝飯食えよ」
「「はーい/はーいなんだゾ」」
それから朝食を食べると……
「おはようございます、皆さん。よく眠れましたか?」
学園長が現れる。
「ハルが綺麗にしてくれたから、よく寝れたんだゾ。けど、朝はゴーストに起こされて最悪なんだゾ!」
「うん、寝れた」
「そりゃ良かった」
「ハルさんの物語と子守唄のお陰です」
「あと、マシュマロ入りのココアのお陰なんだゾ!」
「大袈裟だな」
過大評価する優羽とグリムの頭をグリグリと撫でた。
「コホンッ。それは素晴らしい。さて、本日のお仕事についてお話があります」
確か、主に掃除だっけか。
聖隷術使っていいかな?
「今日のお仕事は学園内の清掃です……といっても学園内は広い。魔法なしで全て掃除し終えることは無理でしょう。ですので、本日は正門から図書館までのメインストリートの清掃をお願いします。いいですか、ユウくん。ハルくん。昨日のような騒ぎを起こさないよう、グリムくんをしっかり見張っといてくださいね」
「自信ないけど……わかりました」
「テキトーにやるわ」
「頼みましたよ。昼食は学食で摂ることを許可します。でじゃ、しっかり業務に励むように」
そう告げて学園長は出て行く。
「ちぇ……掃除なんてやってられねぇんだゾ」
それを見送ると、グリムが不満そうに呟いた。
「オレ様も魔法の授業で、バーン!ドドドーン!って、カッケー魔法打ちまくりたいんだゾ~」
「それなら、掃除終わった後に付き合ってやるよ。魔法じゃなくて聖隷術ならな」
「聖隷術?昨日ここを変えたヤツか?」
「アレは俺特有の能力。それじゃねぇヤツ……今日の掃除の時にでも見せてやるよ」
「それは、俺もちょっと楽しみ」
「ほら、そろそろ準備しろや」
「「はーい/はーいなんだゾ」」
それから俺達は動きやすく汚れてもいい恰好(優羽には貸した)に着替え、学校へと向かう。
「ふわぁ……スゲーんだゾ。ここがメインストリートか」
メインストリート、七つの石像の前でグリムが感動した様な声を出した。
「昨日はよく見なかったけど、この石像は誰だ?7つあるけど、みんなコワイ顔」
「怖いかぁ?皆いい顔してると思うけど」
「そうかなぁ?」
「このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ」
「ハートの女王を知らねーの?」
石像を見るグリムに、赤毛で左目にハートのマークのペイントがある少年が話し掛けて来る。
「ハートの女王?偉い人なのか?」
「昔、バラの迷宮に住んでた女王だよ。規律を重んじる厳格な人柄で、トランプ兵の行進もバラの花の色も一切乱れを許さない。マッドな奴らばっかりの国なのに誰もが彼女には絶対服従。なんでかって?」
「どーせ処刑したんだろ。首とか刎ねて」
「先に言うなよ。その通り、規律違反は即打つ首だったから!」
「こ、こえーんだゾ!」
「そうか?」
よくある話だ。
世界次第では、規律違反じゃなくても気に入らないから処刑とか、自己満足で罪のない弱い立場の奴を虐げるとかあるし。
「クールじゃん!オレは好き。だって、優しいだけの女王なんてみんな従わないだろ?」
「確かに、リーダーは強いほうがいいんだゾ」
「やり過ぎなければ……な」
「……?」
例え、強くて正しくても……やり過ぎたら駄目なんだよ。
「っていうか、オマエは誰だ?」
「グリム。人に尋ねる時は、自分から名乗るのが礼儀……らしいぞ」
「ふな、わかったんだゾ。オレ様はグリム!大魔法士になる予定の天才だゾ」
「オレはエース。今日からピカピカの1年生どーぞヨロシク♪」
グリムと少年が名乗り合うと、俺達の方を見た。
「コッチの冴えないのはユウ。オレ様の子分なんだゾ」
「グリム。今謝れば夕飯にツナ缶出してやるぞ」
「ふな!ご、ごめんなんゾ。で、ハルなんだゾ」
「ハルはともかくユウ?珍しい響きの名前だな」
「この世界ではそうかもな」
「えっと、よろしく?」
「なあなあ、エース。それじゃあっちの目に傷のあるライオンも有名なヤツなのか?」
「もちろん!」
俺達は奥のライオンの石像を見る。
「これはサバンナを支配した、百獣の王。でも生まれながらの王じゃなく綿密に練った策で王座を手に入れた努力家だ」
野生生物に王とかあるのか?
まぁ、見た感じ普通の野生生物とは違うんだろな。
「王になったあと、嫌われ者のハイエナも差別せず一緒に暮らそうって提案した」
「おおっ、ミブン?っていうのにとらわれないヤツはロックなんだゾ!」
ああ、偶に居るな……どっかの姫さんとか。
「手前のタコ足のおばさんは誰だ?」
次にグリムが指したのは隣の何かの紙をもった女性の石像だった。
「深海の洞窟に住む、海の魔女。不幸せな人魚たちを助けることを生きがいにしてた。お代さえ払えば変身願望から恋の悩みまでなんでも階決意してくれたらしい。彼女の手にかかれば叶わない願いはなかったらしいよ。ま、お代はちょっと高かった話だけど。なんでも叶うってんなら、当然だよね」
「にゃっはー!つまりオレ様も大魔法士になればリッチになれるってことか!?」
願いに対価が発生するのは当然だな。
魔女っていうと、マギルゥが頭を過るな……。
「じゃあじゃあ、このでかい帽子のおじさんは?」
次に指したのは魔女の向かいの男性。
「砂漠の国の大賢者。間抜けな王に仕えてた大臣で王子と身分を偽って、王女を誑かそうとしてたペテン師の正体を見破った切れ者!その後魔法のランプをゲットして世界一の大賢者にまでのし上がった!さらにはその力で王の座まで手に入れたんだって」
「ほほぅ!やっぱ魔法士には人を見る目も必要ってことだな!」
所謂参謀タイプの策略家が下剋上した訳か。
俺が知ってるのは忠義尽くすのばっかりだから、珍しいと言えば珍しいか。
まぁ、虎視眈々と狙ってる奴等も居たけど。
「おおっ、コッチの人は美人だゾ!」
次は賢者さんの隣の隣の女性。
「これは世界一美しいといわれた女王。毎日魔法の鏡で世界の美人ランキングをチェック!んで、自分の順位が1位から落ちそうになったらどんな努力も惜しまずにやったって話。世界一の美を保つことへの意識の高さっつーの?ハンパないよね。あと毒薬作りの名手でもあったらしーぜ」
「キ、キレーだけどおっかねえんだゾ……」
「そお?譲れないこだわりがあるのはカッケーじゃん」
「た、確かに、一本芯が通ってんのはカッケーな」
一本芯が通ってる奴は男でも女でも確かに格好いいな。
まぁ、硬すぎると思わない衝撃に弱くて折れるけど。
「向こうの頭が燃えてる男は?見るからにコエーんだゾ」
次に指したのは賢者さんの隣の男。
「死者の国の王!魑魅魍魎が蠢く国を一人で治めてたっていうから超実力者なのじゃ間違いない。コワイ顔してるけど押し付けられた嫌な仕事も休まずこなす誠実な奴で、ケルベロスもヒドラもタイタン族も全部コイツの命令に従って戦ったんだってさ」
「ふむふむ。実力があるのに驕らないってのはだいじなんだゾ」
へぇ、グリムは魔物だけど、そういうのは知ってんのか。
確かに驕り……特に力に見合わなければ、あっという間に堕ちてくしな。
「最後に、この角が生えてるヤツは?」
最後に残った女性を指すグリム。
「魔の山に住む茨の魔女。好機で優雅、そして魔法と呪いの腕はこの7人の中でもピカイチ!雷雲を操って嵐を起こしたり、国中を茨で覆い尽くしたり、とにかく魔法のスケールが超デカイ。巨大なドラゴンにも変身できたんだってさー」
「おぉ~、ドラゴン!全モンスターの憧れだゾ!」
ドラゴン、か……俺からすると、あんまりいいものでもないんだよな。
「クールだよな~……どっかの狸と違って」
……成程?
態々教えたのは揶揄う為か。
「ふな゛っ!?」
「プッ……あははっ!もう堪えるの無理だ!あはははは!」
笑い出すハートのガキ。
「なあ、お前ら昨日入学式で暴れてた奴らだろ?闇の鏡に呼ばれたのに魔法が使えない奴らとお呼びじゃないのに乱入してきたモンスター。やー、入学式では笑い堪えるの必死だったわ」
「なぬ!?しっ、失礼なヤツなんだゾ!」
「で、結局入学できずにみんなして雑用係になったわけ?はは、だっせー」
「にゃにおぉおう……!?」
「しかも『グレート・セブン』も知らないなんてどんだけ世間知らずなんだよ」
「…………」
「ナイトレイヴンカレッジに来る前に幼稚園からやり直すのをおススメするわ。ぷくく……」
「ぐぬぬぬぬぬ……」
「グリム」
グリムを抱き上げて、落ち着かせる為に頭を撫でる。
「ちょっとからかってやろうと思って声かけたけど色々予想超えてたね。んじゃ、オレたちは君たちとは違って授業あるんで!せいぜい掃除頑張って……「……はっ、異世界から来た存在と今まで人間の常識とは無縁だった魔物に、お前達の常識を説いてマウントを取るとか、随分とお高いプライドだな」はぁ?」
煽りを入れて反論すれば、簡単に乗ってきたハートのガキ。
「幼稚園からやり直せ?お前こそ、幼稚園の前に親から礼儀を教えて貰ったらどうだ?」
「へっ、常識ないのは本当だろ?」
「……『茨の森の眠り姫 千年夢見て眠る姫』」
俺が語ったのある世界で絵本にもなってる……小さな子供でも知ってる『常識』。
「何だ、知らないのか?誰でも知ってる常識だぞ……異世界のな」
「なっ、異世界のなんて知る訳ねーだろ!」
「貴様がやったのはそういう事だ。クソガキ」
「んな……」
「ふん、エリートが聞いて呆れる」
「ハルさん、どうしたの?」
「べーつに。ガキが意気がってうるせぇから言っただけ」
「っ!どうせ魔法もろくに使えない出来損ないな事には変わらないだろ!」
『俺は彼奴や兄さんや義父さんに比べたら、何にも出来ない出来損ないだ』
「いい加減に……するんだゾ!ふな゛~~~~っ!」
「「あ」」
グリムが俺の腕から飛び出して青い炎を吹き出した。
「うわっ!っと危ねえ!なにすんだよ!」
「オレ様の夢を馬鹿にせずに聞いてくれたハルを馬鹿にするからだ!その爆発頭をもっと爆発させてやるんだゾ!」
「…………」
「爆発頭ぁ~?へ~ぇ。オレとやろうなんて良い度胸じゃん。そっちこそ、全身チリチリのトイプードルにしてやる!」
「ふな゛~~~~!!!」
「おっと危ない。それっ!」
それからグリムの炎をクソガキが風の魔法で逸らすというのを繰り返して……
ボォオオ…
「「「あ」」」
炎がハートの女王に当たり、黒焦げになる。
「あ゛ーっ!やべっ!ハートの女王の石像が黒焦げに!」
「オマエが風で炎の向きを変えるからだゾ!大人しく燃やされろっ!」
「そう言われて燃やされる奴がいるかっての!」
「こらー!!!なんの騒ぎです!」
「げっ、学園長……」
学園長の姿に逃げ出そうとするグリムと少年を彼が説教している間、俺は石像を黒焦げ前に戻した。
あ、俺達と優羽の無罪は証明済みである。
優羽に対して監督云々言った際には……「つーか、魔法使えないのにどうやって魔獣を止めさせるつもりなんだよ。炎に体当たりして死ねってか?」って言ったら、無罪を認めた。
「君、学年と名前は?」
「エース・トラッポラ……1年デス」
「ではトラッポラくん。グリムくん。2人には罰として窓拭き掃除100枚の刑を命じます!」
「にゃっ!?もとはといえば、ソイツがハルをバカにしたからいけなんだゾ!」
「ええっ!?オレもぉ!?」
「当たり前です!放課後、大食堂に集合。いいですね」
「へぇ~い……」
「昨日から散々なんだゾ~!!」
「「まぁまぁ」」
……自業自得だが、グリムには同情するし態度次第なら手伝うか。
一応、俺の為に怒ってくれたみたいだし。