ツバサクロニクル
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「この社長はヘタするとこの国の大統領より偉いんだよ」
「大統領?」
「その国の権力者です」
「一番えらいひと。王制だと王様とかになるの!」
「帝国なら皇帝ですね」
「すごいねー」
大統領、という言葉が分からなかったらしいファイにルア、モコナ、ソルが説明した。
「でも、どうしてそのままサクラちゃんに返さなかったのー?」
「知世嬢がその夢を見たのが、既にあの充電電池のことが発表された後だったんです」
「国中の人間が知っちまって近隣諸国からも注目の的だった。いくら『ピッフル・プリンセス社』でも『はいおしまい』って訳にはいかないくらいにな」
確かにな。
詳細を話さず、何処の生まれかも分からない相手に渡した、じゃ反感を買いかねねぇ。
「知世姫からサクラちゃんの羽根を狙っている誰かがいることもお聞きしました。それが色んな世界にいることも。発表したからには、きっとこの国の羽根も我が物にしようとするでしょう」
「そこで、僕が提案したんです。あの羽根を『ドラゴンフライレース』の賞品にしてみればどうかと」
此処までは俺達も事前に聞かされていた内容。
「そしたら、そいつもちょっかい出して来るだろうし、うまくいけばレース中に捕まえられる」
「貴方達もきっとレースに参加なされるでしょうしと、知世姫もおっしゃってました。特に黒鋼さん」
「黒様、日本国でも負けず嫌いだったんだねぇ」
「うるせぇ💢」
見抜かれてんなぁ、黒鋼。
……それくらい、側で見てたんだな。
「けれど、レース中に羽根を奪おうとしている者達がどんなことを仕掛けてくるか分かりません」
「だから、予選でちょっと細工をして、他にも羽根を狙っているヤツがいるって、そいつらをけん制するのと、同時にあんたらにも警戒してもらおうと思ってな」
「レースで何かしようと思ってるのがいるよーーって?」
「それで、おれ達に妨害工作をしている者がいると知らせて下さったんですか」
「おお。もー、演技するの無茶苦茶大変だったぜ。他の予選通過者に聞き取りなんかしてないっつーの。おまけに、その日プリメールと遊ぶ約束だったから、遅れちまって怒って怒って大変で…」
「デートだったんだーよしよし🖤」
どーーんとテーブルに突っ伏す笙悟。
そんな彼の頭をモコナが撫でる。
「女性に嘘をつくなんて。おまけに嘘発見器にかけるなんて。罪悪感で心臓が止まりそうでしたよ」
どーーんと壁に手を付く残。
其れにオロオロする小狼とコウ。
「あ。それで知世ちゃん予選の時ずっとサクラちゃんの側飛んでたんだー」
「あら…」
そんな空気の中、ファイがぽんっと手を置いて言った。
「撮影だったらあんなに近くにいる必要はないでしょー?」
「本選の時もいつもお二人が側を飛んでいましたね」
小狼の言葉に、笙悟と残がはにかむ様に笑う。
「私がお願いしたんです。本選でも羽根を奪取しようとする者を探し出す為の仕掛けを用意してありましたから。でも」
じっと黒鋼を見る知世嬢。
「結局、皆さんを危険な目にあわせてしまいましたわ。すべて私の責任です。本当に申し訳ありませんでした」
スッと知世嬢が頭を下げた。
「……じゃあ、最後の間欠泉」
「……カイル先生」
バキンッ
「…………ごめん」
偽医者の名前が出ると、ユキが持っていたカップを割る。
……握り潰したのか?
つーか、此奴も気にしてやがったのか。
「……本当、お前ら何者?」
「唯の渡り鳥だ」
「「その一翼」」
「あ、俺も一翼だ」
そう、あくまで経験が豊富なだけの渡り鳥。
其れが俺達だ。
「知世ちゃん……」
「サクラちゃん!」
声に視線を向ければ、毛布の中のサクラが目を開けていた。
「目が覚めました?ご気分は?」
其に駆け寄る知世嬢。
「平気。聞いていい?」
「……はい」
まだ眠そうなサクラの手を両手で知世嬢が包む。
「知世ちゃんは、わざとわたし達を勝たせようとしてくれたの?」
「いいえ。確かに仕掛けはしましたが、決してサクラちゃんや皆様を有利にしようとしたからではありませんわ。貴方達はきっと勝つと信じていましたから」
笑顔で言う知世嬢に、皆微笑んだ。
「……ありがと」
其にサクラも笑顔で返し、再び眠りに就く。
サクラの笑顔に、小狼も優しく微笑んでいた。
「さてーーサクラちゃんは優秀したし、ハル君達の活躍で羽根も守れたし、せっかくだからさーーここで、も一回パーティーしない?」
「モコナパーティー大好きー!」
「……よし、優勝祝いに俺の得意料理一通り作るぞ」
「!!よしっ」「「やったぁ!」」
「手伝おうか?」
「ユキは入んな。コウ、頼んでいいか?」
「勿論!」
マーボーカレーにキッシュにピーチパイに……後は何作るかな。
「いいな。自警団の奴ら呼んでいいか?」
「いいですね。うちの店からもケータリングを…」
「お、ありがとな。流石に人数増えんなら助かるわ」
「いえ」
「……黒鋼」
「あ?」
「俺達の故郷で熟成した飛びっきりの心……酒がある。どうだ?」
「飲むに決まってんだろ」
「小狼君も今日くらいはどうーーー?飲酒解禁って感じで」
「飲もうよーーサクラ初勝利だよー🖤」
「で……でも姫は眠ってて」
「のもーよーのもーよー」
「起きたらサクラも飲むよ!てか、モコナが混入する!」
途端に賑やかになる空気。
其れに笑いつつ、コウを連れてキッチンに入る。
「貴方と一緒に旅をしている方達は本当に素敵ですね。サクラちゃん」
その日の夜は大いに盛り上がった。
つっても、俺は食事を出した後、早々に寝ちまったんだけどな。
翌朝。
「きゃーーーー!!」
サクラの声で目が覚める。
戻った記憶はねぇが、布団の中でアキと寝てる事を考えると、どうやら運んでくれたらしい。
「おー、どうした……って、凄ぇ光景」
「あ、あの…」
「おはよう、サクラ」
「おはようございます……みんな、二日酔いだって」
「みてぇだな」
様子を見に行けば、彼方此方に二日酔い共が転がってる状態だった。
「無事なのはサクラと黒鋼、あと渡り鳥か」
「おう」
「ファイも一応平気か?」
「一応ね~」
「じゃあ、軽く朝飯作ってくるわ」
「お手伝いしましょうか?」
「ソル」
トコトコと歩いて来るソルを抱き上げる。
「お前はアキを叩き起こして、二日酔いに効く飲み物作らせてくれるか?」
「あ、あの!それ、私が作ります!」
その言葉にサクラを見ると、やる気満々な様子だった。
「ありがとな。作り方は分かるか?」
「はい!前にアキさんに教わりました」
「じゃあ、頼むわ」
結局、二日酔い連中が回復したのはお昼頃。
まだ具合が悪そうなのも居るが、殆どは何とか復活する。
「あーー。やっと、意識がはっかりしてきた」
「もう、お昼だもんね」
「ふぁ……」
「お前は二日酔いじゃねぇのに、寝過ぎだ」
横で欠伸をしてるアキの頭を軽く叩いた。
「知世嬢とサクラさんはどうなさったんでしょうか」
そういや、さっき大きな荷物が運ばれて、二人が奥の部屋に入っていったなぁ。
「できたーー!!」
と、中からサクラの声がする。
ぱたぱた
「出来たの!モコちゃん!魔女さんとお話、出来る!?」
その後、直ぐに満面の笑顔のサクラと微笑んでいる知世嬢が出てきた。
「うん!」
「「「「「「おおーーーーーーっ??」」」」」」「え?え?」
サクラの言葉に反応し、小狼の頭の上に居たモコナが繋げると歓声が上がる。
『あら、モコナ』
映し出されたのは、仕度途中の様子の次元の魔女の姿。
「おでかけなの?」
『これからちょっとね。どうかした?』
「サクラがね、ご用があるんだって」
「お礼出来ました!」
『貴方が?』
「知世ちゃんに手伝ってもらって作ったんです」
サクラが知世と一緒に広げたのは、黒いロングドレス。
おお、器用だな。
「知世ちゃんの会社の人に布を縫う機械を運んでもらって」
「
「アキさんも途中で、様子を見に来てくれて」
その言葉に渡り鳥はアキを見た。
アキは何処かを見ている。
……まぁ、彼奴も器用で服も時々作ってるしな。
ゴオッ
『……有り難う。確かに頂いたわ』
モコナに吸い込まれ、彼女の元に服が転送された。
『サクラ姫のお礼
……はは、強調されてるなぁ。
「やっぱそうだよねー」
「あわあわ」
「Σ」
『まぁ、素敵な服に免じて各自の服の預かり代も差し引いてあげる。必要になったら言いなさい。でも、フォンダンショコラのお礼。残り3人忘れないように』
あ、食べてない俺達は入ってないんだな。
フッと通信が消える。
「はすが侑子♡シメるとこシメるー♪」
「ふん。ぜってー礼なんかしねぇぞ」
「うーん。オレ何にしよーー」
「おれも」
「侑子さんの好みは知ってる。相談に乗るぞ」
「ありがとう」
「食べ物系なら俺も協力出来るぞ」
「……装飾品なら」
「美容品関連なら任せて」
真剣に悩む小狼を囲んで声を掛けた。
「じゃ」
と、モコナが翼を出して飛ぶ。
「次の世界行くのー?」
「うん!」
「え?え?
パアッ
「有り難う!」
戸惑う者達がいる中、事情を知る笙悟達は微笑んで見送ってくれた。
「知世ちゃん、また会えるよね」
「ええ。この国には次元を渡る設備はありませんが、我が社が必ず作ってみせますわ」
お互いの手を両手で握るサクラと知世嬢。
「だからきっと、またお会い出来ます」
笑顔で話し、二人の手が離れる。
「楽しかったよー」
「有り難うございました」
モコナの元に消える中、黒鋼を見詰める知世嬢。
「……夢で知世姫に会ったら伝えてくれ。必ず帰る、と」
「はい」
そして、俺達はピッフル国を出た。
end.
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