ツバサクロニクル
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「「ふわぁ」」
「わぁ、同時だねー」
「眠そうだね」
「疲れてるのか?」
「「別に」」
晴れた日の下。
俺達とファイは外で茶を飲んでいる。
プシュ
「おはようございます」
「ファイー🖤」
「おっはよーー」
「「「「おはよう」」」」
「「おはようございます」」
珍しく寝坊した小狼が出てきた。
「小狼、起こして来たよ」
「えらいね、モコナ」
「すみません、寝坊して」
「疲れが出たんでしょーー」
「いつも小狼いっぱい頑張ってるもんね」
「ねーー」
起きてきた小狼の為に飯を取りに行く。
其れに加えて珍しく自分からついて来たアキがお茶を淹れていた。
「姫と黒鋼さんは」
「お買い物ーー」
「パーツ、足りなくなっちゃったからね。これの」
俺達の目の前にあるのは、一人用の飛行機。
「何が何でも、あのレースに勝たなくちゃねぇ。何せ優勝賞品は、サクラちゃんの羽根だから」
レース、というのはドラゴンフライという乗り物で競い合うもの。
小狼達は其れに出る為にこうして自分用のマシン調整をしている。
因みに俺達渡り鳥メンバーは出ない。
俺とアキは前の世界の穢れがまだ少なからずあるし、自力もしくはレアボードに乗る方がいい。
ユキとコウは機械系が得意じゃねぇらしい上に、俺達が出ねぇなら見学するとの事だ。
「しかし、今度もまた変わった国だねぇ」
と、ファイが空を見ながら言った。
「箱が空を飛んだり、地面走ったりするしーー」
「車だよ」
小狼の肩からひょっこりと顔を出すモコナ。
「あははは、ごめん。車分かんないやーー」
「でも、なんかぽかぽかした国だね」
あー……確かに。
平和な世界だな。
「特に表立った争い事は起こってないみたいですし」
「修羅ノ国と夜魔ノ国は大変だったからねぇ」
大変処じゃなかったけどな。
「…………」
小狼が厳しい表情をする。
「!」
そんな小狼の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「小狼、ここんとこ、きゅーーーってなってる」
「そ…そかな」
俺が手を離した所にモコナが乗り、眉間を摩る。
其れに小狼は慌てた様にごしごしと撫でた。
「モコナ!あそこの箱持って来てくれるーー?」
「はーい!おてつだいー🖤おてつだいー🖤」
「ルア」「ソル」
「「畏まりました」」
跳び出すモコナの後にルアとソルが続く。
「沙羅ノ国で起こった事…ひっかかってるのかな」
ファイの言葉に小狼がハッとした。
考古学が好きだからこそ、歴史を変えた事を気に掛けてる、か。
「おれ達が『過去』である修羅ノ国に行った事によって、沙羅ノ国の『今』が変わった。たとえ、いい結果になっていたとしても、時間の流れに干渉してしまった事に違いはありません」
「……そこにあった未来を変える事が許されるのか……か」
「「…………」」
俺がアキを見れば、丁度アキも俺に視線を向けている。
其れだけでお互いの思考が分かった。
「今後また過去の世界に行くかは分かりません。でも、修羅ノ国であったような事を続けたら、他の世界の歴史はどうなってしまうんでしょう」
そう言った小狼……の頭にファイがポンと手を置く。
「それは小狼君が考えても今はどうしようもない事なんじゃないかなぁ。だったらさ、とりあえず今は考えないで。ちょっと横に置いとくのはどう?」
そのまま頭を撫でながら、優しく諭すファイ。
「頑張れば、出来る事なら、やってみるのも手だけど。歴史を変える規模だと手に負えないでしょう。出来ない事は出来ないってちゃんと認めるのも大事だよ。今、小狼君がまず考えなきゃいけない事は?」
「レースに勝つ事です」
ファイの問い掛けに笑顔で答えた小狼。
「!」
その頭を今度は俺達が撫でた。
「ハル兄?アキ兄?」
「俺達は目の前の現象に、俺達がその時したい事をする」
「だからこそ、俺達が関わった事で其奴の運命を変える事もあっただろう」
「其れにより」
「歴史が変わった事もあったかもしれない」
「!」
最近では虎と亞華羽と呼ばれた二人。
あの二人は、あの世界からは消えた。
そして、今は俺達の領域に居るだろう。
あの世界の事を考えれば、あの二人はあの世界で死ぬのが本来の歴史。
彼等だけでなく、俺達は生かしたいと思った相手は生かすし、見殺すと決めた者は見殺す。
其れに伴う歴史の変化は歪みという穢れになって、俺達を苦しめる。
まぁ、此れは俺達だけの秘密だけど。
「例え其れで本来の歴史が大きく歪められても」
「俺達は後悔しない。全部背負って、此れからも同じ事をする」
「もし其れが罪だとしてもな」
「その罪ごと背負っていく」
「「例えその物語を歪めても、俺達は俺達の意志で行く」」
「……俺も。俺も自分の意志で、レースを勝ちに行きます」
「「ああ」」
もう一度小狼の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「まぁ、俺もそうかな」
「碧凪さん?」
「俺はどっちかというと双子に従うって感じだけど……二人が望むなら、俺は歴史を変えたとしても突き進むよ」
「「…………」」
……何か、ユキ凄い笑顔なんだけど……何か圧を感じるのは気の所為か?
もしかして、歪みによる穢れに気付いてる、とか?
「……俺はまだ分からない。小狼の気持ちも分かる。だから、今は前に進むだけだ」
「ああ」
……小狼とコウは本当にいい友人になりそうだ。
俺が初めに作った奴とは大違いだな。
プロロロロ…
と、エンジン音がする。
「帰って来たかなーー。サクラちゃんと黒りゅん」
「「黒りゅん」」
プロロロロ プロロロロ プロロロロ プロロロロ
「「えっ!!?いっぱい?!」」
「「「……あれま」」」
何故か一台で行った筈なのに、大軍となって帰って来た。
其れから客人としてその大軍を迎え、お茶会という感じになる。
流石に大勢過ぎる為、お茶役のアキを俺達も手伝った。
ユキだけは拒否したが。
「お待たせーー」
「アイスティなの。モコナも手伝ったの」
「まぁ、それは素晴らしいですわ」
メインの客はモコナからアイスティを受け取る黒髪の少女。
側にズラーッと並ぶ黒服の女性達はSPみてぇなもんらしい。
「それにしても、これ程精巧なロボットが作られるなんて。あなた方の国はとても科学水準が高いんですね」
「えへへーー」
ロボットと見られてるのは、モコナ……それとルアとソルもらしい。
全員ロボットじゃなくて、創られた生き物だけどな。
「うちの会社でも是非、作ってみたいですわ」
「会社?」
「改めてご挨拶を。わたくし『ピッフル・プリンセス社』の社長。知世=ダイドウジと申します」
「社長さんだーー。一番、偉い人なんだーー。すごいねーー」
「ちなみに後ろの皆様はボディカードの方々ですわ」
へぇ、見た感じサクラと変わらねぇ歳だが、社長をしてんのか。
種族柄寿命が長い……って訳じゃなさそうだし、余程優秀なんだな。
俺と違って……
「ハル?」
「……言ってねぇぞ」
「思うだけでも此方は否定する」
「ハル?」
「だから言ってねぇって」
アキが俺の心を読んだ上で、その反応で察したユキが俺をジッと見て来る。
「ひょっとして『ピッフル・プリンセス社』って、あのレースの?」
「ええ。わが社が主催しています」
主催者さん、ね。
「せっかくの『ドラゴンフライ』のレース!そして豪華賞品!!」
んー?
何か目を輝かせて立ち上がったぞ?
「スタートから最後にチェッカーフラッグが振られるその瞬間まで!そのすべてを記録に収めたいその為には!!レースに出場してくれるヒロインなんですわーーー🖤」
ぱちぱちぱちぱちぱち
サクラの手を取る知世嬢。
拍手するボディガード達。
そして、呆気に取られる俺達。
「…………つまり、サクラがモデルって事か?」
「はい🖤」
んー……やっぱ、よく分からねぇな。
其れからパーツが揃った事もあり、知世嬢の前でサクラの試行運転をする事に。
バッ
飛び上がった事に歓喜の声が上がるが……
へろっ
「きゃっ!?」
へろろろろ
「きゃ~~~」
「「…………」」
「わーっ」
力なく落ちて行く機体に俺達が風の聖隷術で支えてゆっくり落とした。
慌ててサクラに駆け寄る小狼とついて行くコウ。
「サクラちゃん大丈夫かなぁー」
「コケっぷりもかわいいですわ🖤」
それから知世嬢が帰った後、サクラは小狼に付き添って貰い練習し、俺達は先に戻らせて貰っている。
「レースに間に合うか?」
「まぁ、頑張ってるからいけるんじゃない?」
「…………」
「如何した?アキ」
「ん?」
「調子でも悪ぃか?」
何時もなら早々に寝るだろうアキはベッドの上でソルを撫でていた。
「そもそも、何時ものお前だったら俺をユキやコウに押し付けて、アレに乗り込んでただろ」
「「(押し付けられるのは分かってるんだ)」」
「お前はああいう、機械関係は好きな筈だ。なのに、今は興味を示さない」
「……完全に興味が無い訳じゃない」
「……アーキス。あんたが俺を心配する様に、俺だってあんたが心配なんだ」
「……すまない」
片割れは困った様に微笑んだ。
滅多に見せない表情にユキもコウも少し驚いた様な顔をする。
「何というか……無性にイライラする」
その言葉に今度は俺も正直驚いた。
アキは昔から俺やあの人関連以外其処まで感情の揺さぶりが無い。
特に怒りなんて……
「……本当に何があった」
「分からない。だが、其れによって気が散る」
「…………」
旅に出る前の夢と言い、気を散らす程のイラつき……
この旅、何か……
ガツン グラグラ
衝撃。
「「どうやらサクラさんがぶつかった様です」」
「「「「…………」」」」
……心配だな。
「……取り敢えず寝る」
「おやすみ」
「ハル、稽古をつけて欲しい」
「ああ、分かった。反対方向に行くぞ」
「ああ」
「俺は少し散歩して来ようかな」
そんな事をしている内に……レース当日となった。
俺達は朝の時点でサクラ達と別れ、観客席へとやって来る。
「人が沢山居るね………………気持ち悪い」
「ユキ、人酔いするタイプだったのか」
「人酔いって言うか、周りが信用出来ない人間ばっかりだからね」
「お、俺もこういう場所は初めてでドキドキする」
「…………」
パパ――♪パパー♪
《さあ!始まります!『ドラゴンフライレース』!!》
オオォォオ!!
遂に始まる、か。
《今回は豪華賞品の為か参加者も過去最高!しかし、この予選で20位以内に入らなければ本戦には進めません!》
ふぅん?
予選と本戦で別れてんのか。
さーて、サクラ達は本戦に食い込めるかね。
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