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それから再び夜になるまで、小狼達は帰って来なかった。
「休んでいたらどうだ?倶摩羅」
「いいえ、お供致します」
「忠義なことだ」
阿修羅王の言葉に側近の男が顔を赤らめる。
「そ、それはそうと!あの子供達はどうしたんでしょう!」
あ、照れ隠しに話を逸らしたな。
思わず笑えば、キッと睨まれた。
ガカッガカッガカッガッ
その時、小狼とコウが合流する。
「どうした?小狼」
「いえ、何でも」
阿修羅王に応える小狼の顔色は悪く、コウも心配そうに彼を見ていた。
「そうやって飲みこむばかりでは、見ている誰かが悲しむだけだ」
「………」
……サクラと話したんだな。
「それに、秘めるだけばかりでは何も変わらん」
「……王?」
その言葉は俺にも引っ掛かるな。
昔、其れでアキに迷惑掛けたし。
「……そろそろ決着をつけよう」
そして、景色が変わる。
「……よう、ガキ」
「速攻、てね」
ガッ
早速小狼を黒鋼が襲撃。
ついでに俺の前に来たユキをコウが応じた。
「へぇ、昨日は見てるだけだったのに」
「っ俺だって渡り鳥だ!お前には負けん!」
さて、今のコウでユキに何処まで……
「……!」
今、小狼に何かが干渉した?
アキも何か察知したらしく、俺の方を見ている。
ザワザワ
「「!?」」
「…………」
騒めきに視線を向けた。
其処には……雰囲気を変えた阿修羅王が、前へと進んでいる。
ドン
襲おうとする相手側を無言で斬り捨て、地面に降り立った。
「王!!」
「来るな」
「しかし!」
「来るなと言っている」
「………」
その空気に、此方側は動かない。
「「「「………」」」」
相手側も、雑兵は阿修羅王に向かって行くが、アキ達は動かなかった。
「夜叉王、決着をつけよう」
そして、彼の王の前に降り立つ。
「私は、己の願いを叶える」
ド
抵抗なく、阿修羅王に貫かれる夜叉王。
彼は……
「阿修羅」
彼女を愛しそうに抱き締めた。
「阿修羅王……!!」
ああ、やっぱりか……。
阿修羅王が夜叉王の右目の辺りを撫でる。
と、其処に傷が出来た。
「……私が付けた傷だな」
そして、阿修羅王がその傷に口付けをする。
スゥ ファサ
夜叉王の体が、服を残して光となって消えた。
パアアァ
強い光が服から飛び出す。
其れは……
「サクラの羽根!!」
やはり、夜叉王がサクラの記憶の羽根だったか。
皆が記憶の羽根を見る中、阿修羅王は夜叉王の剣を哀しそうに抱き締めた。
「こちらへ、小狼」
その声に小狼が駆け出す。
「夜叉王は……」
「死んだ。もう随分前になる」
「じゃあ、さっきまでいたあの人は……」
「幻だ。その羽根が見せていた。まるで生きているかのような
静かに真実を語る阿修羅王。
「夜叉族との戦いは永い。長である夜叉王と刃を交えて、ある日気付いた。夜叉王は病に冒されていると。互角である筈の夜叉王に私が傷を付けられたのも、その病の為だ」
「…………」
「ある日、夜叉王が来た。修羅ノ国にある私の居城に。月の城でしか相まみえない筈なのに。だから、私は知ったのだ。夜叉王は死んだ。ただ、魂となって私の元を訪れたのだと」
……沙羅ノ国で、呼び合っていたのは恐らく二人の魂。
この世界は……過去の世界なんだろうな。
「けれど、その次の日。月の城にまた夜叉王は現れた。その羽根の力で現れた幻となって。私が付けた傷のない夜叉王でも私には消せなかった。もう、とうにいない只の幻でも」
もう二度と会えないと思っていた愛しい人を、幻と分かっていても簡単に消せる者など居ないだろう。
……只の別れでも辛いのだから。
「探していたものはこれか?」
「……はい」
「では、返そう」
記憶の羽根は小狼の手へと。
「望みは叶ったか?」
「……はい」
微笑む阿修羅……そして、表情を真剣なものにして剣を取った。
「月の城は阿修羅が制した。願おう。我が真の願いを」
月の城が強い光を放ち……崩れ始める。
同時にアキが俺の腕を掴んだ。
コウの方を見れば、襟をユキに掴まれている。
「……やはり我が願いは、月の城を手に入れても叶えるには重すぎるか」
「阿修羅王!!城が崩れます!早くこちらへ!」
「いやだ!」
「王!早く!!」
「いやだと言った」
側近の男が手を伸ばすが、阿修羅王は夜叉王の剣を抱き締めて動かなかった。
「阿修羅王!!」
「小狼。「諦めれば、そこですべてが終わる。願い続けろ。強く、強く。たとえ、己が何者でも、他者が己に何を強いても。己の真の願いを願い続けろ」
そう笑顔で小狼に告げた阿修羅王の元へ岩が落ちる。
「阿修羅王ーー!!」
側近の男が叫ぶと同時に、小狼が飛び出した。
炎の剣で阿修羅に落ちる筈だった岩を斬った小狼に、彼女は驚いた様な顔をしている。
「……昨日よりは今日、今日よりは明日。戦う度に強くなる。そういう強さだな」
俺も落ちて来る岩を足場に小狼達の元に降り立つ。
「……!」
そうしている間にも城は崩れていった。
「……願いを叶えられぬ城は崩れゆく……か。私の真の願い……夜叉王を蘇らせる事はやはり出来なかったな」
その言葉に一瞬息が詰まる。
其れは……
「……『死者を蘇らせる事は誰にも出来ない。たとえ、神と呼ばれる
「…………」
「良い父上だな」
ガガ
その時、俺達の足場が崩れた。
「崩れる!!!」
手を伸ばす小狼に、阿修羅王は微笑んで炎を放つ。
其れにより、小狼は向こうへ。
「王ーーーーー!!」
小狼は飛ばされた先で黒鋼に拾われたらしい。
「……俺は時空の聖主。その気になれば、時間を巻き戻して蘇らせるかもしれない」
「!」
「其れに。俺はその場に居たからという理由で死ぬ運命にある奴を救った事もある」
「…………」
「だが、其れは俺自身と相手に大きな対価を支払わないと出来ない……そして、俺は今其れを選択しない。夜叉王の時は戻さないし、お前を此処で見捨てていく」
「ああ、それでいい」
俺は阿修羅に背を向けた。
「……あんたは未来で守り神になる。その生き様、しっかりと見させて貰った」
「そうだな……───」
思わず振り返る。
「俺の……真名、何故……」
「ハル、行くぞ」
「……ああ」
アキに言われ、俺は阿修羅王から離れた。
そして、アキと合流すると同時に景色が変わる。
「……王!!」
俺が戻った時には皆が王の死を察して泣いていた。
「黒鋼さん!!?ファイさん!?」
「はーい」
「ユキなのか!?」
「煩い」
声に視線を向ければ、彼も改めて再会をしている。
「……ハル」
「ん?」
「あまり気にするな。アレが二人の王の願いだ」
「急になんだよ」
「お前は目の前の人間を救おうとするからな」
アキが俺の頭を撫でて来た。
……俺はアキに取っちゃ俺は、何時までも弟だな。
「ハル!」
「……おう」
「そっちも無事そうで何より」
話していたら、コウとユキがやって来る。
よく見たらユキがソルを抱えていた。
「居たのか、ソル」
「ずっとユキ様の服の下に隠れていました!」
「そうか」
「小狼君!!」
と、モコナとルアを抱えたサクラが走って来るのが見える。
其れに俺達も視線を交わして小狼達の元へ。
「ファイさん!黒鋼さん!!」
「サクラちゃんひさしぶりー」
「アキ様、ユキ様、ソル、ご無事で何よりです」
「そちらも」
無事に全員合流出来たな。
ポゥ スゥ
その時、小狼が持っていた記憶の羽根がサクラの中に戻った。
そのまま眠るサクラを小狼が受け止め、放り出されたルアを俺が、モコナをファイが受け止める。
「羽根……取り戻せた」
フワ ファサ
モコナが目を閉じたまま、移動する様に羽根を広げた。
「やっと移動かよ」
グイ ふぎゅる
「「「「?」」」」
その時、ファイが黒鋼を引っ張り、サクラを抱き抱える小狼に抱き付く。
「てめ!何しやがる」
「また離れて落っこちないようにーー」
その言葉に俺はコウを掴んでファイの肩を掴み、アキもユキの手を掴んで黒鋼の肩に触れた。
がばぁ
「待て!やっぱりお前達は夜叉族と通じていたのだな!!」
「違います。もしそうだとしても、二人の王はもういません」
その言葉に側近の男が止まる。・
「もし、二人の王の亡骸か形見の一部でも見つかったら、どうか離さず一緒に葬ってさしあげて下さい」
そして、俺達は移動した。
ぼす
「ここは……」
「沙羅ノ国ーー?陣社だー」
俺達は植え込みっぽい所に落ちたらしい。
最後にモコナが黒鋼の頭の上に着地する。
「戻って来たの?」
「……いや、厳密にゃ違うな」
「?」
「あら、お客さんね」
植え込みから降りていると、お姉さん達に声を掛けられた。
「どこから来たの?」
「え?あの……(おれ達を知らない?)」
「……色んな所を旅してんだ」
「あら、そうなの」
「あ、あの、陣社の人と遊花区の人達って……」
俺達の視界に映るのは、仲良さげな男女達の姿。
「おう、見ての通りだ」
「あたし達、すぐ近くの遊花区って所を根城にあちこち興行して回ってるんだけどね」
「困った事があったら、いつも陣社の男衆に助けてもらってるの」
「おう!俺達で出来る事があったらいつでも呼びな!」
「「いよ!色男!!」」
「仲良しだーー」
……此れが本来のあるべき姿だったんだろうな。・
「ここは、前に居た沙羅ノ国とは違うんでしょうか?」
「同じだけどまた別の次元ってことーー?」
「いや、同じだぞ」
「「え?」」
わぁっ
賑やかな声に視線を向ける。
「なんだ?」
「旅の人達運がいいわ!」
「今日は結婚式だからな!」
多くの人々から祝福されていたのは……鈴蘭と眼鏡の青年だった。
「鈴蘭さん!」
「神主じゃなぇかよ」
……成程、鈴蘭が気にしてたのは陣社の神主だったのか。
そりゃ敵対してる時は複雑だわな。
「ちょうどいい!今日はめでたい日だから、うちの神様も御開帳だ!」
「見てってよ!うちの守り神だ!」
指された先に居たのは、隣に並べられている像となった二人の王。
「出来た時から一緒なんだよ!」
「おう、離しちゃいけないって言われてるからな!」
「沙羅ノ国が安泰なのも、この神様お二人のおかげさね!」
……やっと一緒になれたんだな。
「ん?ねぇねぇこれ」
モコナが俺達を手招く。
「「「あーーーー!!」」」
「コウ煩い」
「何で俺だけ!?」
像の前に置かれていたのは、小狼が女装させられていた時に付けていた着け毛、サクラが髪に着けていた桜の髪飾り、コウが髪を纏めるのに使わされていた髪留め、後は俺が着けていた帯留めだった。
「こ、これ……」
「俺達が付けてた……」
「間違いない……」
「神器だよ」
「昔からこの陣社に祭られてる」
「「「え!?」」」
「何か理由があるんだよね」
「おう、その辺りはうちの
結婚式の真っ最中だからな。
「新郎新婦の鏡割りだーー!」
「行こうぜ!」
「祝い酒よ!一緒に飲みましょ!!」
駆けて行く男女。
「んーーこれ、皆が着けてたの?」
ファイの言葉に小狼達がこくこくっと頷く。
「沙羅ノ国で遊花区の人達に着けてもらって」
「修羅ノ国で着替えた時に外されて、そのまま……」
「修羅ノ国に国に置いて来た……よな?」
「答え、もうハルっていうか双子知ってるんでしょ?」
「「そりゃな」」
俺達の言葉に視線が集まった。
「簡単だ。修羅ノ国は沙羅ノ国の昔の呼び名」
「つまり、俺達は現代から過去へ、過去から現代へ時間移動しただけ」
「その上で元の歴史に居なかった俺達の行動で、未来が変わったんだよ」
「それって……」
「別たれていた二人が共にある」
「なら、態々怪奇現象を起こして呼び合う必要もない」
「怪奇現象が起きねぇなら諍いを起こす事もない」
「「な?簡単だろ?」」
何か微妙な顔されたんだが。
と、小狼が複雑そうな顔をしているのを見て、頭をくしゃくしゃと撫でる。
「気にすんな。此れが本来あるべき姿って事だ」
「……はい」
「おい、白まんじゅう。最初から修羅ノ国に落ちりゃ良かったんじゃねぇかよ。じゃなけりゃ夜叉族がいた夜魔ノ国でも……」
がばぁ
「げっ!!」
モコナが吸い込むと、像の中から二人の王の剣が出て来た。
「阿修羅王と夜叉王の剣!」
ごっくん
「「「「「「「「………」」」」」」」」
そのままモコナが飲み込み、俺達は無言になる。
「モコナ108の秘密技のひとつ。超吸引なの🖤ダイソンにも負けないよ🖤」
「秘密技でもなんでもねぇだろ!しょっちゅうやってんじゃねぇかよ!!」
「守り神の中身を吸い込んで」
「い、いいのかな」
「まずいんじゃーないかなーー」
「「見なかった事にする」」
「「それでいいのか?」」
わっ フワ
賑やかな声に振り返れば、火煉太夫が火の粉を撒いている所だった。
火の粉は花弁の様に舞い落ちる。
「きれい。花びらが降ってるみたい」
「本当に」
「んな事より、祝い酒っつってたな」
「黒ろん飲む気満々ーー」
ばっ
「「「「「「「「え!?」」」」」」」」
直ぐに移動体勢に入るモコナ。
「もうかよ!一杯くらい飲ませろよ!」
ファイが黒鋼を掴むのを見て、俺も黒鋼を掴んだ。
そうすればアキが俺を掴み、アキをコウとユキが掴む。
「ほら、小狼君はサクラちゃんを。離れちゃわないように、ね」
最後にファイに掴まれた小狼がサクラと手を握った。
「お幸せに」
end.