ツバサクロニクル
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翌朝。
俺は二日酔いの女性達の介抱をしている。
コウも眠そうに俺の後を付いて来た。
「大丈夫か?ほら、二日酔いに効く薬湯だ」
「あ、ありがとう」
ガターン
「「!」」
音に視線を向ける。
どうやら例の陣社とやらの男達が来たらしい。
見ていると、小狼が蹴りで追い払った。
……鈴蘭の表情が気になるがな。
「ハル!綱平!あんたらも舞台に出てみないかい!?」
「「?」」
突然、鈴蘭がそう声を掛けて来る。
「何か得意の芸はあるかい?」
「ハル兄は歌が、綱平は楽器が上手ですよね」
後から続いて出て来た小狼がそう言ってきた。
「へぇ!そりゃいい。歌ってくれないか?」
「出来りゃ人前で歌うのは勘弁して貰いてぇな……其れに、声で男とバレんぞ」
「「「「あ」」」」
「一応今は女の格好だけど、俺は男だぞ」
いや、忘れてたみたいな顔すんな。
「まぁ、ある程度動けるから舞えるっちゃ舞えるが……」
「一時的でしたら、女性の声も出せますよね?」
「「「「え」」」」
「こーら、余計な事言うな」
ルアにの頬をグリグリと押す。
「そうなのですか?」
「……あー、まぁ、俺の半分の種族柄な。強くイメージする事で偽れる。髪と目の色も其れで変えてるし」
言いながら俺の髪と目の色を元に戻した。
其れに鈴蘭が驚いた様な顔をする。
「其れを応用すりゃ、声も短時間なら変えれるだろ。まぁ、直ぐに戻さねぇと面倒な事になるがな。幻術もある程度使えるから、客に女の声に聞こえる様に出来るとは思うけどな」
「じゃあ、決まりだね!」
「決まっちまったよ……」
という事で、俺達も舞台に出る事になった。
早速その日から練習が始まる。
「──ねぇ この街が夕闇に染まる時は……♪」
歌いながら軽く舞った。
楽器はコウが奏でている。
「いいじゃないか!小狼とサクラもいい感じだし、早速今夜の興行に出ておくれよ!」
そんな感じで早速夜の興行から出る事になった。
サクラの綱渡りが終わり、小狼が準備している間に俺達が出た……その時だった。
再び、地震が起きる。
「……!」
何だ、この感じ……
ゴゴゴゴ
「空が……!!」
外に出ると、空が異様な光景となっていた。
まるで、空が割れるみたいな光景。
アレは……
「時空の狭間、か?」
「え?」
「阿修羅様!」
その時、鈴蘭が駆け出し、其れに小狼とモコナを抱えたサクラがついて行く。
阿修羅像の所へ向かっているんだろう。
俺は一先ず、アレを如何にかしねぇとか。
アレはこの空間に影響を……
ドクン
「……!?」
「ハル様!」「ハル!?」
呼ばれてる……向こうに居る誰かに……
「モコちゃん!」
「どうしたんだモコナ!!」
声に視線を向けると、モコナが次元移動する時の様に飛んでいた。
「……この世界に羽根……ない。でも、あの世界に羽根……ある」
そして、次元移動が始まる。
突然の、乱暴な移動だった。
「!小狼!」
「!」
ドサッ
咄嗟にサクラを抱いて庇っている小狼を引き寄せる。
直後、俺を一番下に何処かに落ちる様に着地した。
「大丈夫?」
「はい、ハル兄が庇ってくれたから……ハル兄、大丈夫ですか?」
「…………」
「ハル?」
……気持ち悪い。
思わず頭を抱える俺の顔をコウとルアが覗き込んでくる。
そして、最後にモコナが降り立った。
「モコちゃんも大丈夫?」
「んにゅー」
気持ち悪い……頭グラグラする……此れは……酔った、のか?
カツカツ
「子供か。こんな所に何故いるんだ?」
ワァアアアア
馬代わりの生き物に乗った女性。
頭を抱えたまま小狼達の前に出る。
俺達は戦場の真ん中に居た。
……気持ち悪いのは其れかぁ……
「阿修羅王、お怪我は?」
「ない」
女性は阿修羅像に瓜二つな姿をして居る。
「また決着はつかないようだな。夜叉族と」
「!」
女性の視線の先には髪の長い男と……行方知れずの仲間達の姿があった。
「月がのぼりきった。今日の戦いはこれまでだな」
ユラ
再び景色が変わる。
場所が変わり、一部の人間が消えた。
「え?」
「あれ、あれ?何かさっきと違うとこ来てる?」
「あの場所にいられるのは月が中天に昇るまで。それを過ぎれば我々は追い払われる」
「……ハル様?」
「大丈夫なのか?」
正直、まだ気持ち悪いのと意識がグラグラしてるのとで俺は立ち上がれない。
「確かにあそこに在るのに、月が夜空に現れ天心に昇るまでの間のみ我々はあそこに招かれる」
「お城が……空を飛んでる……!わたし達、あそこにいたの?」
「でも、どうしてあそこで戦いを!?」
「何をとぼけている!月の城での戦いを分からぬふりとは何が目的だ!まさか夜叉族の手の者か!?」
殺気……。
「……ハル……」
片膝をつき、頭を抱えた状態で小狼達を庇う。
「夜叉族なら目は漆黒の筈。彼等は違う。琥珀と翡翠の碧と銀色、そして天色とまた異なる翡翠の瞳だ」
……あ、色が素のままだ。
「しかし!」
「俱摩羅。彼等を我が城へ」
にこと笑う彼女に小狼達は警戒するが、敵意は感じなかった。
「分かりました!捕まえて尋問を!」
「違う。客人として招け」
「阿修羅王!!」
「同じことを二度言わせるな」
ザワ
……成る程、確かに王だな。
威圧で部下を黙らせたな。
「……仰せのままに」
「歓迎するぞ、子供達」
フラ…
「!ハル!!」
ポロン♪
「…………」
琴の音に目を開ける。
見ると、サクラが琴の様な楽器を奏で、阿修羅王が舞っていた。
ポロン…
「良い音だった。美しい琴を聴かせてくれた礼だ。酒の用意を。今宵は小さな客人達と飲み明かそう」
「え!?」
「それに、彼も目覚めた様だしな」
「「「「!」」」」
起き上がるのと同時に視線が集まる。
「「ハル兄!」」「ハル!」
「お加減は如何ですか?」
「……おう、悪ぃな心配掛けて」
真っ先に駆け付けて、俺を見上げるルアを抱き上げた。
「つーか、サクラも俺の事を兄って呼んでたか?」
「あ、つ、つい。ごめんなさい」
「いや、気にすんな……お前等も悪かったな」
駆け付けて来た彼等の頭を撫でる。
ホッと息を吐く小狼達の一方、コウはまだ複雑そうな顔をしていた。
「っと……迎え入れた事、感謝する」
「!」
姿勢を正し、阿修羅王へと向き直る。
「良い。楽にしてくれ」
「では遠慮なく……気を失った俺を態々運んでくれたんだな。すまなかった」
「大した事ではない。だが、特に怪我は無かったそうだが」
「……あー……原因は分かってる」
俺はアキより穢れの影響を受けやすい。
その分アキより許容量は俺の方が上だ。
で、穢れってのは負と呼ばれる事もあり……戦場ではその穢れが多く排出され、溜まりやすい。
突然の次元移動で歪みの影響を受けた上で穢れを受けたから、倒れたんだろうな。
「何か召し上がりますか?」
「ん?あー……飲み物だけでいい」
「畏まりました」
ルアがトコトコと飲み物を取りに行った。
「酒でなくて良いのか?」
「俺、飲むと直ぐに丸まって寝るらしいから」
「それは見てみたいな」
「折角だが断る。そもそも片割れがいねぇ所で飲むと後が面倒くせぇ」
「そうか。改めて名前を聞こう」
「ハルと呼んでくれ。フルネームはお前等に馴染みねぇだろうし、長ぇからな」
「そうか」
ニコと微笑む阿修羅王。
……あの光景で視たのは彼女だな。
つー事は呼び合ってたのは……
「ハル、本当に大丈夫なのか?」
「おう。今は大丈夫だ」
「…………」
「んな顔すんなよ……悪かったな、心配掛けて」
「!そんな事……」
「俺の事はいいから、お前も折角だし飲めよ」
「……分かった」
まぁ、後はお察しという奴である。
コウは直ぐに寝て、サクラは猫みてぇになった。
俺が呼んだら側でゴロゴロしたのが幸いだったけどな。
其からお開きになり、俺達は与えられた部屋に移動する。
「サクラまたすごかったね。にゃー🖤にゃー🖤」
「…………」
「お疲れさん」
必死にサクラを追い掛けていた小狼の頭を撫でて労った。
「モコナ、ハル兄、この世界に羽の気配は?」
「……強い力感じる」
「ある、と思うな」
「どこか分かるか?」
「一番強いのは、あの空に浮かんだ城」
「多分な。ちょっと相性が悪くて、詳しくは感知出来ねぇ」
「分かった。それに、あれが本当に黒鋼さんとファイさん、アキ兄と碧凪さんなのか確かめなきゃ」
「…………」
俺が片割れを見間違える訳がねぇ。
そして、片割れだからこそ彼奴の考えも察せられる。
例え、あんな状況でも。
「……取り敢えず、今日はもう休むか」
「……はい」
という事で、この日はもう休む事に。
翌日、昼頃。
その頃にはサクラ以外が目覚めていた。
「もう昼だけど、まだ起きないねサクラ」
「……うん」
「疲れちゃったのかな?サクラは羽根が飛び散る前は早起きさんだったの?」
「いや、割りと寝坊だったかな」
「そりゃアキと一緒だな」
アキは寝るのと食べるのが好きだから、寝れる時はとことん寝るし、食べ物は出されれば出される程食う。
俺は最低限の眠りだけにして、起きて鍛練や読書、後は飯の用意をする方が多い。
ユキはショートスリーパーってヤツで、1日に数時間摂れりゃ十分って奴で、最低でも三時間は寝る様に俺がベッドに叩き込んで寝かせる様にしてる。
コウは……早起きな方って感じだな。
つーか、太陽でも感じるのか、大体夜明けで目覚める印象だ。
「でも、これは羽根がまだ足りないからかもしれない。この世界に羽根があるなら、必ず探し出す」
……ったく、また抱え込みやがって。
「サクラはまだ夢の中か」
「おう、阿修羅王」
阿修羅王が部屋に入って来た為、振り返った。
「そろそろ陽も真上だ。腹がすいてないか?客人」
「はーい!お腹ぺこぺこでーーす!!」
「∑」
モコナが元気よく返事をし、ぎょっとなる小狼。
「では、こちらへ」
招く阿修羅王に対し、小狼は心配そうにサクラをちらっと見る。
「サクラが起きたら案内しろ」
「仰せのままに」
「あの……」
「不安か。昨日の酒宴でもそうやって、サクラをずっと気にかけていたな」
そんな小狼に優しく微笑んだ。
「皆は私が招き入れた客人だ。この国のものには指一本、触れさせん」
……本当にいい王だな。
「さあ共に昼食を」
「……はい」
「モコナも客人?」
「勿論だ」
「よろしくあくしゅ!」
阿修羅王と握手をしたモコナはそのまま彼女の肩の上に。
「ほら、コウも行くぞ」
「……ああ」
……何を気にしてんだが。
俺はコウの頭をくしゃくしゃと撫でて、彼女に続いた。
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