ツバサクロニクル
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「あー……またはぐれたな」
「わぁキレイ!」
「そうだな」
新しい世界に降り立つと、俺とルアとコウ、小狼とサクラとモコナだけだった。
しかも俺とモコナ以外は気を失っている。
「あんた達、どうしたんだい」
「あー……」
俺は近くの建物から出てきた娘に軽く説明し、一先ず保護して貰う事になった。
それからコウとルア、サクラの順で目覚め……
「小狼君……」
「起きたか」
「大丈夫か?」
魘されていた小狼が最後に起きる。
「凄く苦しそうだった。大丈夫?」
「昔の夢を見たんです」
サクラに返しながら、右目を押さえる小狼。
「怖い夢?」
「いいえ」
「でも、良くない夢だったのね」
「…大丈夫ですよ」
心配そうに小狼の両頬に触れるサクラに、小狼は微笑んでその手に触れた。
「無理するなよ」
「ああ、ありがとう」
「……小狼」
「はい」
「確かに今は大丈夫そうだが……何かあったら言えよ?義理とはいえ、兄って呼ばれる以上お前は俺達の末弟なんだからな」
「……はい」
俺は小狼の頭を撫でる。
「あ、そういえば新しい国に来たんですね。黒鋼さんとファイさんは……!?」
小狼が外を見て驚きに固まった。
「……こ…ここは一体……」
外の景色は所謂和風で煌びやかなもの。
ばん
「きゃーっ🖤気がついたのね!」
その時、扉が勢い良く開き、若い娘達が入って来る。
「ずっと動かないから心配してたのよ!」
「こんな子供が遊花区へ来るなんてどうしたの!?」
わらわらと俺達を囲もうとする娘達。
俺が其処からルアを抱えて抜けると、コウも慌ててついて来た。
「それよりこの子可愛いーーー!」
「あらこのお嬢さんだって可愛いーー!」
「モコナもー!」しゅた!
「きゃーー!本当に可愛いー!」
「モコナいつもモテモテ~~」
いちゃちゃするモコナと娘達に苦笑する。
因みに俺達は窓まで避難していた。
「Σはっ、黒鋼さんとファイさん、アキ兄と碧凪さんは!?」
「いないんです!!」
「はぐれたっぽいな」
「同じ場所に落ちなかったみたいーー」
「え!?」
……抱き付かれながら話してんな。
桜都国で慣れたか?
「でも同じ世界にいるよ。そんなに離れてなはず」
「それなら探しに……」
「落ち着けや。向こうにゃ俺より強いアキが居んだ。心配いらねぇよ」
「(アキの方が強いのか)」
「ちょいとお待ち!」
声に視線を向けると、黒髪の若い娘が立っている。
「仕事中だってのにこんな所で、何油売ってんだい姐さん達!子供とはいえ、ここは男子禁制だよ!」
「「きゃーーーーー鈴蘭ちゃん!」」
「
「「「「きゃーーっ」」」」
「……俺やハルも子供なのか」
「言葉の綾だろ」
「子供では、ありませんね」
窓辺に座りながら、コウやルアとコントを見る気分で話した。
「大目に見ておやりなさいな主人」
次に入って来たのは、二人の少女を連れた妖艶な女性。
「火煉太夫」
「その子達、いつ現れたのかちょっと前からそこの格子前で寝転んでてね」
そういや、俺達を拾ったの彼女だったな。
「そっちの子は起きてて、先にお嬢さんや赤毛の坊やが起きたんだけど、男の子のほうはちっとも目を覚まさないし」
「坊や!?」
「コウ、ちょっと煩い」
「す、すまない」
「お嬢さんは泣きそうだだしで、みんな、ずっと心配してたのよ」
その言葉に鈴蘭と呼ばれた少女が小狼達に近付く。
「怪我でもしてるのかい?」
「いえ、そういうわけでは」
「じゃあ、なんでこんな所で行き倒れになってたんだい?」
「旅をしてるんです。それで……」
「お腹が空いたのね!」
ん?
「かわいそうにこんな所で!」
「まだ小さいのと若いのに四人旅なんて!」
「「「「「主人!!!」」」」」
「たとえ行き倒れでも捨て置いたとあっちゃ、この遊花区の名折れだ。この遊花区の主人、鈴蘭が預かった!さあ、上がってお行き!旅の人!!」
「「「「…………;;」」」」
何か、勝手に決まったな。
ワ――ポポン ワ――ワ――ポン
華やかな空間。
彼方此方で若い娘達が芸を披露していた。
「すごいすごい!」
「本当に」
楽しそうなサクラと小狼、モコナの後に続いて俺達も進む。
コウも目を輝かせて俺の隣でキョロキョロしていた。
「サーカスみたいですね」
「さーかす?」
「色んな芸や技を見せてくれる旅の一座です」
「玖楼国にも来たことある!こういう感じじゃなかったけど、でも凄く楽しかった!!」
そういや、昔旅の一座のフリして潜入した事もあったな。
あの子が無茶振りで鳩の鳴き声の真似したんだっけ。
「!」
「どうした?」
「いや……小狼みたいに笑ってると思ったんだ」
その言葉に小狼を見ると、懐かしそうに優しく笑っている。
……あんな感じで笑ってたのか。
「つーか、フード被ったままでよく分かったな」
「口元は見えてる」
「この記憶があるのも羽根を取り戻してくれたから。有り難う」
わああああああ
その時、周りから歓声が上がった。
「火煉太夫だ!」
ステージの上に立っているのは、火煉太夫と二人の少女。
彼女は舞いながら、火の粉を撒く。
「火の粉が綺麗……」
「螢みたいだ……」
その火は会場全体に降り注がれる。
その内の一つをサクラが手に取った。
「あ、でも火に触ると……」
「うちの炎は触ってもヤケドなんかしないよ」
「鈴蘭さん!」
「この炎、加護を感じんな。守り神でもいんのか?」
「そうさ。守り神様が授けて下さる炎だもの。それを、あの陣社の連中が厄災を呼ぶみたいに!」
「「守り神?」」
「そうだよ。あたし達一座の守り神。「阿修羅像さ」
阿修羅……其れが、この一座の守り神の名前か。
「あたし達『鈴蘭一座』は沙羅ノ国中を旅しながら、こうやって芸を見せて廻ってるんだよ」
「じゃあ、おれ達が寝かせてもらっていたあの建物は……」
「あそこはあたし達の長屋みたいなもんだよ。遊花区っていってね。一族の連中はここに戻った時はみんなあそこに住んでる。でもって、一族には女しか入れないから勿論、男子禁制」
「「す……すみません」」
「悪かったな」
「なぁに!一度請け負った客人。最後まで、もてなすのがあたしらの流儀だ!」
「おっとこまえー🖤」
彼女の言葉に俺達は微笑む。
流石一座を率いる者、だな。
「一年に一度。月が綺麗な今頃の時期にここに帰って来るんだ。沙羅ノ国、どこで興行しても楽しいことに変わりはないけど、やっぱり自分達の家があるこの場所は特別なんだよ」
「…………」
「本当にみんな楽しそう」
確かに楽しそうだが……鈴蘭だけが暗い顔してるな。
「それなのに。うちの守り神である阿修羅像があたし達一座と一緒に帰ってくると必ず陣社の夜叉像に怪異が起こるって!!」
……この地に来た時だけ怪異を起こす?
「……鈴蘭。その阿修羅像ってのとは会えるか?」
「え、ああ。案内するよ」
という事で、俺達は阿修羅像に合わせて貰う事になった。
「わあ……これが阿修羅像」
「「…………」」
阿修羅は美しい女性の神らしい。
「綺麗……」
「よほどの名工が創った像なんでしょうね」
興味津々で阿修羅像に近付く小狼にアキを重ねていた時……
キィイン…
『会いたい……彼に』
「ハル?」
「!」
「どうした?」
「……いや、なんでもねぇ」
今のは……何だ?
俺は今、誰を視たんだ?
まさか、この像には……
「小狼とサクラ、それにハルと綱平だったね」
「はい」
名前を呼ばれて視線を鈴蘭の方に向ける。
「遊花区は一度迎え入れた仲間は最後まで面倒みる。また旅に出るまで、ここがおまえさん達の家だ。そのよく喋る白いのや青いのと一緒にゆっくりしておゆき」
「「有り難う御座います!」」
「わーい🖤」
「……おう、世話になる」
「よろしく頼む」
「感謝致します」
さて、これからどうすっかな。
拠点は此処でいいとして……
俺は阿修羅像を見る小狼の隣に移動した。
「モコナ、ハル兄、羽根の気配は?」
「気配自体はねぇな」
「うん、やっぱり感じない。でも『ない』ってはっきりわからない」
「だな。なんつーか……無いの筈なのに、僅かに気配がある様な気がする」
「あるかも知れないし、ないかも知れない、か。黒鋼さんとファイさん、アキ兄と碧凪さんとも会えてないし、探すしかないな」
確かにな。
まぁ、最悪アキ達は迎えに行けるけど……
「さ!そうと決まったら、歓迎の宴でもしようじゃないか!!」
「ひゃっほーい!!宴会だーー!!!」
鈴蘭の言葉にモコナがはしゃぐ。
「と。その前にちょっと準備をしなくちゃね!」
「「え?」」「「「?」」」「♪」
「姐さん達、お疲れだったね!!」
鈴蘭が宴会場らしい襖を開けて中に入った。
「さあさあ!せっかくの月夜だ!今日の興行が無事終わった岩井と!もうひとつ!この遊花区に客人として迎えた小狼とサクラ、ハルと綱平の歓迎会といこうじゃないか!さあ!みんな入っとくれ!!」
笑顔で俺達に振り返るが……俺の前で小狼とコウが恥ずかしがって止まってる為、中に入れない。
俺とルアは苦笑し、サクラも戸惑っていた。
「何、そっぽ向いてんだいこの、すっとこどっこい!!」
「お前もさっさと行け」
鈴蘭が小狼を引っ張り、俺がコウを押す。
「「「「「きゃーーーっ🖤」」」」」
「遊花区は男子禁制。客以外に男が出入りしてるとわかっちゃ一大事」
「「………;;」」
「恥ずかしがってもしょうがねぇだろ」
小狼とコウが躊躇う理由。
其れは俺達男性陣が女装している事だ。
「興行打ってる舞台や外はいいけど、遊花区にいる間は女の格好でいてもらおうと思ってね!」
「きゃーー!可愛いー!」
「っ何でハルは平気なんだよ!」
「昔から着せ替え人形にされてきたから」
よく女性陣に色んな服を押し付けられて来たからな。
慣れだ、慣れ。
「何これ何これ!!」
「あたしも触るーー!!」
「「Σ」」
どーーん
「小狼と綱平モテモテー🖤」
「おー」
女性達がコウと小狼に群がった。
俺は逃げて、サクラの隣に居る。
ゴ…ゴゴ カタカタカタ
「!」
ズン
「きゃあああ!」
激しい揺れに、サクラを引き寄せた。
ズゥウン
「地震!?」
確かに地震だが……普通の地震じゃねぇ。
「主人……!」
「この地震……また陣社の奴らが阿修羅像のせいにして、像を壊しに来るかもしれない……!」
「…………」
「……ハル?」
抜け出して来たらしいコウが俺の顔を覗き込んで来る。
「…………ちょっと抜ける。サクラ達を頼んだ」
「ハル!?」
俺はこの場をコウに任せ、宴会場を抜けた。
向かうは阿修羅像の元。
「…………」
「まさか、この像が?」
「……彼女だけじゃねぇ……お前等。呼び合ってるのか」
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