ツバサクロニクル
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「え、消え……」
「空丸」
「!」
ユキが曇の方を見る。
「友達になってくれたのに、裏切ってごめんね」
「!!碧凪…」
「少なくとも、君や楽鳥といる時は楽しかったよ」
「……そんなの…今更…」
「錦……君のお姉さんに世話になったのに、君を傷付けてごめん」
「!貴方、やっぱりあの時の…!」
「ハル、アキ」
ユキの声に俺達は両方から支えて彼を立ち上がらせた。
「山縣だっけ……最後の細胞を持つ俺も、もうすぐこの世界から消える。安心しなよ」
「……そうか」
「楽鳥……俺を親友って言ってくれて嬉しかった。碧凪にとっても、楽鳥は親友だったから」
「ッ!!」
「……義兄さん」
「!」
「本当は、貴方の事心から尊敬していた。一時でも家族にしてくれてありがとう」
「!!」
「俺の家族も、帰る場所も、今は渡り鳥だから……やっと言えた」
そう言うと、ユキは俺達を見て……俺達も頷く。
「「碧凪!」」
そして、俺達はユキを抱えて、その場を離れた。
少しして、コウと小狼達が追い掛けてくる。
「……さて、サクラの羽根を取りに行くか」
「!気付いていたんですね」
「まぁな」
サクラの記憶の羽根が、この世界にあるのは感じていた。
「あ、でも、そこに行くには橋渡しして貰わないと…」
「「橋渡し?」」
「その役目を負ってたのが曇兄弟なんだ」
ユキが疲れた様に話す。
「けど……その役目はもうない筈だよ」
「なら、お邪魔しちまうか」
「賛成」
「「「え」」」
俺達は記憶の羽根の気配が感じる方に向かった。
その間に互いの事を報告し合う。
小狼達は曇神社という所に降り立ったらしい。
其処で曇と出会い、モコナの感知で俺達の事を気にしながらもその場所に向かおうとしたが、曇の橋渡しが必要。
で、俺達を探すついでに曇の用事に協力していたとの事だ。
その話を聞き、逆に俺達の事を話している間に目的の場所に着いた。
「ここ、琵琶湖って言うらしいです」
琵琶湖、か。
その琵琶湖の畔……俺の視線は真っ二つになった大樹に向けられる。
「モコナ、あの樹か」
「うん」
「じゃあ、行くか」
「え、あ!」
俺とアキが琵琶湖の上に降り立った。
こういう時聖隷術便利だ。
「ユキ」「コウ」
「「…………」」
手を差し出せば、二人は一瞬躊躇って俺達の手を取る。
そして、掴んだ瞬間に引っ張り込む事で二人も琵琶湖の上に。
「うわー凄ーい」
「ファイはどうすんだ?」
「んー、俺もお願いーー。ほら、黒みーも行こーー!」
「あ、おい!」
ファイが黒鋼の肩を掴んで、俺に掴まっているコウの手を取った。
其れを見て、小狼もサクラの手を掴んでユキに掴まる。
そして、俺達が歩き出せば皆で琵琶湖の上を歩いて進んだ。
「凄いですね」
「本当はレアボードでかっ飛ばした方角が速いんだけどな」
「精々二人乗りが限界だ。全員で行くなら此れしかない」
話しながら進めば、無事に大樹に辿り着く。
大樹に降り立った所で手を放し、俺は大樹の中央かつ上を目指した。
そんな俺の後を真っ先に小狼が追い掛けて来る。
「……コウ、気になってるでしょ」
「∑えっ」
「いいよ。探しながら話してあげる」
最後尾でユキとコウが話しながら歩いていた。
ユキside
先頭を歩くハルについて行きながら、コウと話す。
双子やルアソルは全く気にしてなさそうだけど、小狼やサクラ、モコナは振り返り、黒鋼とファイが聞き耳を立ててるのが分かった。
「……俺はね、風魔の里で生まれたんだ」
当時の風魔は長が古い風習を復活させた所為で、誰も言わないけど不穏な空気が隠れていたんだっけ。
「風習?」
「成人の儀式として、身内を殺し、暗い箱に閉じ込めれて闇を己に宿す」
「!身内、を……」
「俺も母親を殺した。この髪と瞳は箱に閉じ込められた間に変わった」
あ、黒鋼の空気が変わったね。
母親殺しは彼の中では地雷なのかな。
「その、父親は……」
「殺されたよ。当時の長達にね」
「!」
俺の父親はそんな風習に疑問を持っていて……優しい人だった。
もう、顔も声も思い出せない。
だけど、俺の頭をよく撫でてくれる人だったと思う。
「父親は、俺にそんな風習を受けさせまいと……一人、里に反旗を翻した」
「一人で?」
「ああ。そして、捕まり、拷問の果てに殺されたそうだ」
「……!!」
父親を捕らえ、殺したのは今の長の父親だったな。
「父親が死んで直ぐに、俺に母親を殺す様に指示が来たよ」
「そんな、父親が死んで直ぐに!」
「ふふ、新しい長達も怒ってくれたな……そうしないと、俺も母親も両方殺されてた。父親と同じで忠誠は無いと判断されて。母様は俺だけでも生かす為に俺に命を差し出してくれた……ああ、その時にある男に言われたよ。『息子に殺されてやれなくてすまなかった』。父様がそう告げて死んだと」
その頃、夢で双子に会ったんだったよね。
夢の中で泣いていた俺に、二人は寄り添ってくれた。
「其れから直ぐだったかな。長の世代交代が起きたの」
「変わったのか!」
「うん。新しい長も双子だった。だから、二人で一人の長になったんだ……正直、あの頃は荒れててね。生きる為に長の信頼を取りたかったし、とは言えど死にたかった。だから、安倍の家の潜入を申し出たんだ」
「潜入?」
「ああ、大蛇の事を話してなかったね。遠い昔から大蛇という破壊の蛇神が居て、風魔は代々大蛇様に仕えていたんだ。で、安倍の家は代々大蛇を討伐か封印をする一族だったんだ」
そして、安倍の家は拾った子供を大蛇の餌として育てる。
「餌?」
「確実に大蛇に勝つ為の手段さ。拾った子供に生きる事を諦めさせる様に教育し、大蛇が復活した暁には時間稼ぎの囮として使うのさ」
「!?」
安倍に拾われた俺も表向きは安倍蒼世の義弟になった。
けど……
「其れに加えて、俺は大蛇の実験体にされた」
「……ぇ」
「俺の中にも居るんだよ。大蛇の細胞が」
自分の胸に手を置く。
この細胞が俺を半不老不死にさせてる。
「昼は訓練。夜は細胞を馴染ませる実験……地獄ってこの事何だと思ってた」
「……ユキ」
正直、気絶した後に見る夢で会う双子が心の支えだったな。
「そんな矢先、曇大湖っていう師範が、俺を其処から引っ張り出した。そして、俺は犲になり、義弟になった」
曇大湖が長に殺されるまでは……束の間の安らぎだったな。
其れから復活が近付き、俺は犲の情報を長に流し始めた。
曇に潜入した長の片割れに。
犲の動き、大蛇の器になった曇空丸の事と居場所の報告。
「そして、風魔が器の回収の為に犲本部を襲った時に、俺と風魔に戻った」
風魔に戻った俺を見た蒼世と楽鳥、凄い顔してたな。
「楽鳥?」
「ああ、白シャツに緑髪の子。武田楽鳥……犲だった碧凪の友人だった」
『何で裏切った!!』
『お前は犲だろ!!』
そう叫ばれたっけ。
「其れから大蛇討伐側と風魔がぶつかり……負けた。大蛇は死んだ……其れを見て、俺は彼等の前から姿を消した。最終的に湖に飛び込んだ……で、気付いたら異世界に居た」
「は!?異世界!?」
「その話はまた今度」
そう告げて前を見れば、ハルが手を突っ込んだ先から羽根を取り出し、小狼に渡していた。
ハルside
羽根を回収した俺達は一旦琵琶湖の畔に戻り、次の世界に行く事に。
何時も通り、モコナが飛んだ時……
「碧凪!!」
「!」
話にも出ていた白シャツ……武田楽鳥が現れる。
「俺、は……俺はお前の事、親友だと思ってる!昔も、今も!」
「……楽鳥……」
「もっと強くなってみせる!首洗って待ってろ!」
ユキは目を瞠り……そして、微笑んだ。
武田の向こうには安倍が居る。
彼は彼で、優しい表情をしていた。
そして、新しい世界へ。
end.