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「本気でお願いします」
曇と安倍が剣先を重ねた。
そして、二人の戦いが始まる。
師匠という事もあり、安倍が優勢らしい。
その動きを観察した。
「……相変わらず化け物染みてる」
「全くだな」
「拘束されてる碧凪と虎が起き上がっていいのか?ユキ、アキ」
「「誰も見てない」」
戦いを見詰めたまま、起き上がっている二人と話す。
「コウ、戦いに集中しろ。で、吸収出来るだけ吸収しろ」
「あ、ああ!」
二人をチラ見していたコウも視線を戦いに戻した。
拘束されていた虎は……アキの幻術。
自分を虎に見せ掛け、簡単に外せる拘束を受けており、ユキも拘束の件は同様。
本物の虎はルアとソルが護っているらしい。
「目を覚まして下さい!大蛇は誰も救えない!分かるんです」
その時、曇が打ち合いながら安倍にそう訴え掛ける。
「あれは細胞になろうとも人を喰い潰す。大蛇がどんなに危険が知ってますよね!?本気で国の希望になると思ってるんですか!!師匠は厳しいけど、国を…人を想ってる。他でもない貴方が…他を犠牲にするなんて事云わないで下さい……!」
曇が必死にそう訴えていた。
……そうか、安倍は結果的に親友と義弟が大蛇実験の被害者になっているのか。
ギィン
「!」
「甘過ぎて反吐が出る」
曇の言葉を刀を払いながら拒絶する安倍。
「その考えも、その刀も、誰も殺めないだと?」
安倍は曇を薙ぎ払う。
「殺す覚悟もないくせに剣を取るな」
ユキの方をチラッと見た。
「…………」
真顔で戦いを見詰めるユキ。
その表情からは読めないが、瞳が微かに揺れている。
吹っ飛ばされても、真っ直ぐな瞳で立ち上がる曇。
そんな彼を見詰める安倍。
「さぁお前は何処まで出来る?」
「何処までも!」
そして、曇は上から振り下ろそうとする安倍の懐に無防備の状態で突っ込んだ。
その表情は笑っている。
「!?」
曇の方に安倍の刀が刺さるが、無視して突っ込み……そのまま近くの崖から二人共落ちた。
「「……ユキ」」
「!」
「「どうする?」」
「…………」
俺達の位置からは見えねぇけど、どうやら下で決着は着いたらしい。
曇側が喜び、軍人達が驚愕していた。
「…………っ」
「「ユキ」」
「……そう、だな」
俺達はユキに苦無を差し出し……其れをユキは受け取る。
「よもや敗けるとはな。どうやら犲とやらもたいした事なかったらしい」
崖下の彼等に軍人達が銃口を向け、補佐とやらがその中央に立った。
「話が違う!俺が勝ったら、ぶっ」
「山縣様はこの事をご存じで?」
「無論だ。これも実験もすべて山縣様の指示によるもの。そうでなければ隊など動かせまい」
「よくもまぁ、虚言を並べてくれる」
「何だと!?」
「西野…と云いましたか。貴方のしている事は大体分かってきた」
「ひひょう?」
あー……曇の声が途中で止まったと思ったら、安倍に口塞がれてんのか。
「一つ、実験記録に山縣様のお名前があったが、実際あの方が施設を訪れた事はない。一つ、山縣様の元に入る情報に食い違いがある。それもすべて貴方が関わっているもののみ。隠蔽。偽造。お前には荷の重い言葉だったな」
「殺せ」
「……お前がな」
「「「!!」」」
ユキが銃を構える軍人達に苦無の雨を降らせる。
「ぎゃ」
「ぐっ」
主に肩や手を狙って落とされる苦無。
「!」
直後、駆け上がって来た安倍が参戦し、銃を斬った。
素早い動きで次々と銃が使用不能されていく。
「退くな!必ず殺せ!」
ゴ
「ようやく暴れられるな」
「やっとか」
あ、黒鋼も参戦するのか。
其処に更に鷹峯と黒鋼が参戦。
……オーバーキルじゃね?
「よぉ、曇」
「!」
風の聖隷術で崖を登って来る曇を助けた。
「な、何で?仲間割れか……!?」
「元々そう云う計画だったそうです」
「計画?」
少女と武田が全て曇に説明する。
「……!」
「西野様こちらへ!」
「応援が来ました!」
見知らぬ青年が更に乱入。
雰囲気的に曇達に似てるから、例の長男か。
半身動かねぇのか、車椅子に乗りながらも大暴れする長男。
……オーバーキルじゃね?
其処から更に長男と共にやって来た女性、術士らしい青年、更に大柄な男、呼ばれた武田が乱入。
「「……オーバーキルじゃね?」」
「あ、それ俺も思ってた!」
「ハル兄!」
「よ、小狼」
俺達がそんな事を話していたら、小狼、サクラ、モコナ、ファイが駆け寄って来た。
其れを見ながら、アキが幻術を解く。
「二人は参戦しないの?」
「「俺達まで混ざったら最早死体蹴りじゃね?」」
「あははー確かにーー」
結果、ものの数分で軍人達はほぼ全滅。
「援軍も尽きたようだな、西野」
「わ、分かった。交渉をしようじゃないか」
追い詰められた西野が安倍にそう訴えた。
「………」
「大蛇細胞を分けてやろう。実験成功体は海外で高値で売れるぞ」
「「あ?」」
俺達の家族であるユキを売ろうと?
殺気を込めて睨めば、西野はビクリとする。
すると、安倍に視線で制された。
「やはり目的は金か」
「まだ国の未来を案じてうんぬんの方がマシだってぜ」
「そ、そうだ!日本の未来の為にも金はいる。勿論だ。被害者も海外から買った奴隷が殆どだ。日本にリスクはないっ。山縣様に黙っていてもらえればお前にも…ぐっ!」
「おい」
「ああ、悪ぃな。あんまりにも耳障りでな」
西野の胸倉を掴んで木に押し付ける。
多少息苦しくなっただろうが……ま、問題ねぇだろ。
「俺は必要なら手を汚す。だからこそ、命を道具扱いする奴が嫌ぇなんだ」
「……仕方ないな。それと、まだ知らないとでも思っているようですよ。山縣様」
安倍が振り返った先にいたのは、また見知らぬ男。
「なめられたものだ」
「何故、此処に───っ」
山縣?らしい男の足元には、犲らしい小柄なのが居た。
「まさか金の為とはな…大蛇細胞の存在は国家危機に値する。破棄は国の決定だ。それを…信じていた君に裏切られるとは…この筝はすでに軍法会議に報告済みだ。罪は重いぞ」
「────っ」
俺が手を放せば、西野は崩れ落ちる。
「…………!馬鹿!大人しくしてろ!!」
「「「「!?」」」」」
俺が止める間もなく……近くの茂みから飛び込んで来た虎が西野の首を掴んだ。
「てめぇが黒幕か」
「あ…ぐっ」
首を折りそうな勢いで掴む虎。
「近くにいたのか」
「曇天火ァ」
「「!」」
虎に向け、銃が撃たれる。
其れを虎にしがみ付いていたルアとソルの防御壁が防いだ。
「そいつを離せ。まだ聞きたい事がある」
「!」「「わぁ!」」
虎が俺にルアとソルを押し付けてくる。
同時に、虎の中から穢れの様なものを感知し、思わず退いてしまった。
「完全に細胞が馴染んだのが分かるぜ。力が湧いてくる。不死の体だ…!!」
「では、試してみよう」
ドン
撃たれる銃弾。
「狙うんならここだろ。その前にてめえの首落としてやるがなァ」
山縣へと向かっていく虎。
「実験体風情が、何もかも終わらせてやる…!!」
「!虎!!」
西野が背後から虎を撃とうとした時……
「…………ぁ」
「なっ」
虎を庇って……ユキと亞華羽が撃たれる。
ダン
西野が二発目を撃とうとし……コウがその銃を撃ち抜いた。
「あほトラ…はよ逃げぇ…」
「折角時間稼ぎしてあげたのに……」
「ア゛ァ゛!?」
「ユキ!」
亞華羽を虎が抱き抱え、ユキをアキが抱き起す。
「あんたは…こんなことで死んだらアカン…」
「残念だが。せめて纏めて逝かせてやろう」
「おい」
その時、亞華羽が虎を護る様に覆い被さった。
「お願いします…この子だけはころさんといてください」
「はなせコラ」
「昔から医者になりたかった。あんたを最後に看取るって我儘は叶わへんなかったけど。救わせてくれてありがとう、トラ。お先に」
『ハル!私の事はいいから……!』
其れを見て……体が動く。
ドン
「っ……!」
「ぁ……ハーヴェル!!!」
痛みと同時にアーキスの悲痛な声が聞こえた。
咄嗟に庇った際、銃弾が俺に当たる。
そのまま俺は倒れた。
「「ハル!!」」
「「ハル様!!」」
「ハーヴェル!!!ハーヴェル!!!」
アーキスが俺の頭を自分の胸に当ててるらしい。
「トラ!!」
直後、虎と曇の気配が遠ざかる。
「ハーヴェル!!!」
「落ち、着け……アーキス」
「「「「「!!」」」」」
俺の声にアーキスが俺の顔を胸から放す。
「大丈夫か!?」
「はっ、そう簡単に死ぬかよ」
銃弾は俺の左目の上を掠っていった。
俺が倒れたのは、あくまで体勢が悪かったののと勢いなだけ。
クソ、血が流れて視界が悪いな。
「虎は?」
「あの、曇と」
亞華羽の言葉に傷を手で押さえながら見れば、崖下で曇と虎が戦っている。
「ハル、傷を……」
「亞華羽達優先……っつっても聞かねぇか」
アキが俺の傷を、俺が亞華羽達の傷を治癒術で治した。
「……亞華羽」
「?」
「お前、さっき命を捨てたな」
「……おん」
その言葉に、アキが俺に一瞬視線を向ける。
その意味を理解し、俺は頷き返した。
「その命、捨てるなら俺に寄越せ」
「───え?」
亞華羽の返答を聞き、俺達は駆け出す。
同時に……曇の勝利で虎との戦いは終わった。
曇が死にそうな所で、少女が助けに入ったらしい。
「……俺が言うのもなんだけど。お前、待ってる奴が居るなら自分の命も大切にしろよ」
「「!」」
曇の怪我を治す。
振り返れば、アキが虎を治していた。
「お前も命を捨てるなら、俺に寄越して貰おう」
「はァ?」
「君の大蛇は俺が貰うよ」
「!?」
ユキが虎の腕に噛み付く。
すると、虎の中のものがユキに移ったのが分かった。
「っ!」
移り終えると、ユキが倒れ……其れをコウが受け止める。
「ハル」
「おう」
二人の手を握った。
「……虎、うちと生きてくれる?」
「……仕方ねぇな」
そして、力を使う。
直後……二人の姿が消えた。
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