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「大蛇を消滅させる事が犲の使命じゃなかったんですか!?細胞だって十分危険です!!何で師匠達が…」
「犲は解散した」
そう告げた青年が虎を見る。
直ぐに俺達が前に立ち、虎の姿を隠した。
「で?虎を捕まえてどーする気だ?」
「返答次第で、俺達もやる事が変わるからな」
「生きているうちは使える。実験に戻す」
そりゃ駄目だ。
虎に情が湧いてんのもあるが……実験体が対象なら、ユキも入っちまうからな。
「お前「師匠!!!聞きたくなかったです。師匠の口からそんな事…俺は反対です」」
曇が鞘に入れたままの刀を構える。
「私に剣を向けるか。稽古で一本も取れた事がないのに」
「貴方は知ってるてしょう!!大蛇細胞で兄貴や碧凪がどれだけ苦しんだか!そんな人間をまた生み出す気ですか!?あの絶望を繰り返すんですか!!?」
「…………」
俺達は怒鳴る曇を見詰めた。
「──そうだね、俺は御免蒙るよ」
「「「!!」」」
その時、俺達と曇、元犲のメンバーの間に苦無の雨が降った。
それにより、其々距離を取る。
「「大丈夫なのか、ユキ」」
「俺だけ休んでられないだろ?こんな状況じゃね」
振り返った先には、ソルを抱えたユキが困った様に笑っていた。
「碧…凪……」
「…………」
白シャツが呆然と呟き、向こうの青年も目を瞠って硬直している。
俺はユキに近付き、彼の額に触れた。
「少し熱くなってる。あんま無理すんな」
「ありがとう、ハル」
「コウ、虎とユキを連れて一旦離れろ。ルア」
「ソル。亞華羽と共に行け」
「「畏まりました」」
「了解!」
コウが虎を担ぎ上げ駆け出す。
そんな彼の後をルアを抱え上げた亞華羽とユキが続いた。
「「…………」」
俺達はほぼ同時に威圧を出す。
「ッ!」
「もし、俺達の身内に」
「手を出すなら容赦しない」
「…貴様等は」
「お前等が碧凪って呼んでるユキの」
「友達で仲間で……家族だ」
「「「っ」」」
俺達の言葉に青年、曇、白シャツが顔を歪ませた。
まぁ、青年は一瞬だったが。
「っ碧凪が何したのか知ってんのかよ」
「知ってるに決まってるだろう」
「だから俺達はユキって呼んでんだよ。本名の雪弥の名前も知ってんだから」
「苦しみに気付けなかった義兄、苦しみを打ち解けられなかった友達」
「裏切りを止められなかった仲間程度の奴に渡す気はねぇ」
そう告げ、俺達は背を向ける。
「ハル兄!アキ兄!」
「悪ぃな、小狼」
「今回は譲れない」
家族の事だけは駄目だ。
「狂乱せし」「地霊の宴よ」
「「ロックブレイク!」」
地の聖隷術で目眩ましをし、俺達もこの場から離れた。
「「…………ん?」」
気配でコウと亞華羽とユキと虎が別れたのを感知する。
「アキ、ユキ達を頼んでいいか?」
「勿論」
俺はコウと亞華羽の方へと向かった。
「曇の刀は誰も殺めない。護る為の刀だ。俺の正義は『曇』と書く」
俺が辿り着いた時、曇が銃弾を両足に受けて尚立っている所だった。
曇の後ろには目を瞠っているコウと亞華羽、小狼とサクラとモコナが。
曇の前には銃を構えている沢山の軍人が。
視線を向ければ、離れた高台の方に青年が居る。
トンッ
青年が加勢する様子もないし、ユキ達の方はアキが向かった。
俺はその場から跳び……
「……曇空丸、か」
「!」
曇の前に降り立つ。
「な、何だ貴様!?邪魔をするなら……」
「煩せぇ」
「ひっ」
殺気を込めて、指示を出していた男を睨み黙らせた。
「コウ、怪我をしたのか」
「あ、ああ……」
どうやら先に亞華羽を庇い、銃弾を受けたらしく血を流している。
「……で、てめぇ等が俺の身内を傷付けやがったのか」
「ひ、ひぃ!」
「渡り鳥に手を出した以上……てめぇ等は俺が潰す」
「しゃ、小狼……ハル、激怒してる、よな?」
「そ、そう見える」
「ハル、激おこー!」
そうだな……小狼達の前じゃなきゃ、此奴等殺してたわ。
「……はぁ」
「「「?」」」
「此れが俺の聖主たる所以だ!タイムストップ!」
時空間は俺の聖主であり、聖隷として自在に操れる能力。
だから、オーバーリミッツする必要も無い。
そして、軍人達に背を向けた。
「あ、危な……」
「万物に宿りし生命の伊吹を此処に……リザレクション!」
「傷が……てか」
「動かない、のか?」
「動けなくしてんだよ」
言いながらコウの頭を撫でる。
「俺は時空の聖主……別名翼の大神」
「大神……え、神?」
「まぁ、そう呼ばれてんな……さて、改めて俺はハル。お前、曇空丸か?」
「え、あ、ああ…そうだけど…何で名乗ったんだ」
「知ってはいるだろうけどな。相手に尋ねる時は自分が名乗るのが礼儀らしいからな……はっ、お前嫌いだな」
「!?」
俺の言葉に曇は勿論、全員がビシッと固まった。
「「珍しい……」」
「俺だって好き嫌いはあんぞー」
「よっぽど悪人しか……」
「基本的に優しいから……」
「んー……なんつーか、俺が唯の俺だった頃に似てんだわ」
「唯の……」
「ハル?」
「そ……大切な人が笑顔でいられる世界を護りたいっていう青臭い夢を持って、その為に強くなろうとしてた頃のな」
俺の言葉に空丸が目を瞠る。
「……けど、俺は駄目だった。目の前でその笑顔の一人を見殺しにした」
遠い過去。
だが、俺の基盤となる過去。
だから、決して忘れない。
「俺は大切な人を護る為に、身内に手を出す者は潰す方向に変えた……お前はどうする?」
俺の言葉に真っ直ぐ曇は俺を見てきた。
「やっぱ嫌いだわ……精々俺とは違う道を選ぶんだな」
パチン
「はぁ…はぁ…!」
俺が解除すれば、軍人達が動き出す。
「どんな気分だ?意識はあんのに、体が動かせねぇ気分は?」
「何故解除したんだ?」
「これ以上止めると後遺症残んだよ」
「問題あるのか?」
「俺にとっちゃな……俺を兄と呼ぶ奴の前で其は出来ねぇさ」
小狼に感謝するんだな。
弟妹の前じゃ、トラウマになりそうな事は出来ねぇんだ。
まぁ……
「はは、俺が怖ぇか」
戦意は根刮ぎ奪えたみてぇだけど。
「こ…の…化け物!」
「ああ、そうだ。俺は化け物…「違う!ハルは化け物等ではない!」…!」
何時もの様に肯定しようとしたら、コウが彼等に噛み付いた。
「…………」
本当に、俺の家族は……
「……コウ、亞華羽達を連れて奥へ」
「あ、ああ」
「ハル兄は……」
「心配すんな」
小狼の頭を撫で、曇の背中を押す。
彼等は俺に振り返りながらも、更に奥へと入って行った。
「く……そ!」
銃口が曇達に向けられるのを見て、俺がその間に割り込む。
「どうする?一発で撃てば……斬る」
「っ、この…!」
指示を出していた男が俺を撃とうとした時……
「何をしている」
その銃をあの青年が掴んだ。
「お前は犲の…」
「被験者四十号と初号を捕捉した。上に連絡を!」
「はっ」
「実験の続きを始める」
……は?
「何を勝手に……!」
「さっさと上に確認を取れ」
「…ご自分でされてはどうかな?ああ、そうか。君は誰が実験を仕切っているのか、知らないのだったな」
「ほう、お前は知っていると云うのか」
「だったら何だ、そんなに知りたい理由でもあるのか!?」
「楽しそうだな。俺も混ぜてくれ」
「!」
ガキンッ
俺が放った一撃は、青年に受け止められる。
「…私が相手をする。さっさと報告しろ」
「───っ」
「一緒に混ざるか?」
殺気を込めて睨めば、指示役が走り出した。
「……で、アキは何て?」
「!」
周りの軍人に聞かれない様に小声で、剣を交えながら青年に聞く。
「俺の知る最強の男が、易々とお前等に身内を奪われる様な事はさせねぇ」
「……アキ、という男は───」
……成る程な。
「……どっち道お前は殴りたい」
「何?」
「お前、ユキの事どう思ってんだ」
「…………碧凪は…碧凪の事は、血の繋がり関係無く、本当に弟の様に想っている」
……ふぅん?
想っていた、じゃなくて想っている、ね。
「……ユキは、もうお前が考えている以上の時を過ごしてる」
「ああ、聞いた。本当に長い時を生きてる……だから、渡り鳥だけで十分だと」
「……フラれたか」
「喧しい」
俺を睨んでくる青年に思わず微笑み返した。
「俺はハル。お前は?」
「安倍蒼世」
ふと、青年基安倍の視線が動く。
「蒼世さん…」
其処に居たのは、白シャツ達と黒鋼達。
俺達は互いに一撃を放ち合い、距離を取った。
そうすれば、安倍の所に鷹峯と呼ばれていた男が駆け寄る。
「話したのか」
「ああ」
「なら分かったな」
「おい、双子」
「話なら聞いてる」
歩み寄って来た黒鋼が俺の腕を掴んだ。
其れに俺は抵抗しない。
「運び込め!」
「慎重にな!」
運び出される虎の姿を視認する。
……分かってても、結構キツいぞ……アキ。
「邪魔はするな」
「異議あり!!その実験に異議を申し立てる!!」
声に振り返れば……其処に居たのは、曇だった。
「またお前か、いい加減にしろ!誰を相手にしているか分かってるのか!?」
「はい。軍……犲……それに師匠…貴方です。勝負して下さい」
「!」
「俺が勝ったら、大蛇実験を終わりにして欲しい」
「傲るな。お前如きとの勝負事で止められるものではない」
俺はそっと黒鋼から離れ、ユキ達の側に移動する。
其れに曇と共にやって来たコウも駆け寄って来た。
「俺を賭けますッ!!俺の中には大蛇がいたんですよ、兄貴より実験に向いてると思いませんか!?」
曇の言葉に、軍人達がざわつく。
「敗けた時は細胞でも肉でも好きに使って下さい。対価としては悪い話ではないでしょう」
「………」
……負ければ絶望だろうに、それでも笑うか。
「その勝負受けよう!」
返事をしたのは、安倍ではなく急に現れた男だった。
「!?だ、誰だ!?」
「陸軍中将山縣有朋の補佐だ。私の言葉は有朋氏の言葉と思え」
……中将の補佐、ね。
きな臭いな。
安倍も応えず、補佐という男を見るだけ。
「何か困る事でもあるのか?貴重な実験材料がわざわざ志願してくれていると云うのに。この場で取り押さえてもいいのだよ」
男の背後には、此方に銃口を向ける軍人達。
「コウ。ルアとソルは?」
「彼方を護らせてる」
「そうか」
小声でコウと話し、軍人達の動向を見る。
「相手は一般人ですが…「元大蛇に一般人もあるか!殺しはするな!これは国の未来に必要な材料だ!!」」
あくまで人では無い、か。
命を軽々しく扱う奴は斬りたくなるな。
「──だそうだ。手足の一本くらい失う覚悟はしておけ」
そして、安倍は剣を構えた。
「おいっ」
止めようとする武田と少女を……
「!」
「黙って見てろ」
鷹峯という男が制する。
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