ツバサクロニクル
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※今回の話は、曇天に笑う外伝(中・下)の話になります。
新しい世界へと降り立つ。
「「……あれ?」」
「「おや?」」
「小狼達とは……はぐれた……感じ?」
「っぽいな」
その場に居たのは、俺とアキ、ルアとソル、そしてユキとコウの……所謂渡り鳥メンバーだった。
ふらぁ……
「!ユキ!」
その時、ユキの体が傾く。
咄嗟に一番近かったアキが彼の体を支えた。
「っ……今……かっ」
そう呟くユキの体に触れると、焼ける様に熱い。
「急に如何し…「どないしたん!?」…!」
声に視線を向けると、俺達に駆け寄る一人の女性。
彼女はユキの額に触れ、其処から更に触診をしていった。
「(この症状……同じや)近くにうちの家があるから、其処に運び!」
「……おう、頼む」
この時の縁が切欠で、俺達は彼女─四ノ宮亞華羽の世話になる事に。
其から数日……
「うちが医療の知識あったから良かったものの」
「知るか。俺の生き方に口出しするなら殺すぞ」
「────ふっ、そう云うとこ好きやで」
「何だ、帰ったのか。虎」
「おう」
俺達同様、亞華羽の世話になっている虎という男。
この男からは、ユキと同じ何かを感じる。
「あまり無理しない方がいいよ」
ユキ自身も何か察してるらしく、虎の事を気に掛けている様子が見られた。
「「無理しない方がいいのはお前もだろ」」
「そうだ。やって落ち着いたのだから」
「「無理しては駄目です」」
「ははは」
漸く熱が引いたユキに釘を刺せば、彼は笑って誤魔化す。
「おーーメシ」
「さっきハル達と作ったとこや。手ェ洗いや」
虎は聞いてないらしく、皆で握ったおにぎりに手を伸ばしていた。
「「「!」」」
と、離れた所から亞華羽が仕掛けた罠が発動する音がする。
「───…食べとき。ちょっと出て来るわ」
「?」
「アキ、コウ。此処は任せる」
「ああ」
「?分かった」
「…………」
俺は歩き出した亞華羽の後を追い掛けた。
「うちの縄張りで何してんねん。立ち入り禁止や。この山から出て行ってもらおか」
「…………」
其処には二人の少年に一人の娘、罠に掛かってる一人の子供……
「ハル兄!」
「こんな所にいやがったのか」
「無事そうで良かったーー」
「あ?あー……」
「なんや、知り合いか」
「話したろ?一緒に旅してる奴等が居るって」
小狼達の姿が。
「アキ兄達は?」
「ちょっとユキが体調を崩してな。休ませて貰ってんだ……で、其方は何してんだ?」
「人を捜してます」
「俺達以外にも?」
「はい」
代表してか、小狼が軽く説明してくれる。
「これはお前達が作った罠か」
「なぁこの辺で不審者を見なかったか?」
「そりゃ俺の事か?」
「あ、いや……あんたは小狼達の仲間なんだろ?そうじゃなくて……」
「……冗談だ。質問を質問で返して悪かったな」
曇の字が入った上着を着てる奴は真面目そうだな。
小狼と気が合いそうだ。
「この先にある研究施設から逃げた奴等がいるんだ。人を殺してる。この近くに住んでるなら危ないから、町におりた方がいいぞ」
「知らんなぁ、早よ帰り。そっちのはハル達もう少し貸してな」
「真面目に聞けよ!心配してやってるんだろ」
俺の腕を掴んで踵を返した亞華羽に白シャツの少年が言った。
「してやってる、ねぇ」
「心配なぁ…そんな危ない山奥に子供が六人も何でえろついてんねん。帯刀もしとるし、怖そうな男や胡散臭い男もおる。うちからしたら、あんたらの方が怖いわ」
「………」
白と黒の髪をした娘が亞華羽を見詰める。
「俺達はその人殺しを追ってんだよ!」
「うちには関係ない。心配なんざ、いらん世話や。何度も云わせんな。今すぐ出て行き」
亞華羽がそう冷たく言った時……
「また会ったな」
虎が俺達に肩を置きながら告げた。
「……お前の客かよ」
「お前…!」
「ぶはっ」
「ちょっと!」
少年達の前に降り立った虎。
「ついて来い、もっと広い処で相手してやる」
「待てっ!」
「俺が行く」
「任せた」
走り出す虎を追い掛ける少年と子供、その後を虎を追い掛けて来たらしいコウが追い掛けて行く。
「あかんって!」
ガキン
亞華羽の首に向けられそうだった娘の大きな苦無を俺も苦無を出して止めた。
「おい」
「行って下さい。くれぐれも二人に怪我させぬよう」
「俺は使いっぱしりじゃねぇんだよ」
「行け」
「でも……!」
「ここはオレ達に任せて……ね?」
「っ、分かりました。行きましょう!」
「は、はい!」
彼等の後を、モコナを抱えたサクラと手を掴んだ小狼が追い掛ける。
「…何のつもり?うちらは善良な一般人なんやけど」
「罪人の間違いでは?獄門処で見た事のある顔だ」
「!」
獄門処?
「四ノ宮亞華羽。幼い頃から医学を学んでいたが、師である男を殺し放火で逮捕。無期懲役で獄門処女子房に入監していたはずだ」
「───よく知ってんな」
「看守の経験があるので」
視界の端にルアが映った。
彼に視線で小狼達を追う様に指示を出しておく。
「一年前の爆発事件の時にどさくさに紛れ、逃げたか」
「知ってんならええわ。一人殺そうが二人殺そうが同じや。其処を退かへんなら力ずくで通る」
「容赦はしない。これ以上危険人物を曇に近付ける訳にはいかない」
「……止めとけ、亞華羽。多分此方の娘の方が強いぞ」
「けど!」
「お前はあくまで一人殺った程度の医者……お前、昔から殺しの方法を習ってんな?」
「……ええ」
だろうな。
苦無を払い、娘を飛ばした。
「だから、やるなら俺がやる……お前等も」
「………」
「亞華羽には借りがあるんでな。敵対するっつーなら、この世界ではお前等とも戦うが?」
「はっ、面白れぇ。お前等双子とは一回やり合いたかったんだ」
「……なら、お前の相手は俺がしよう」
「!」
「やっぱ来たか」
俺の横に並ぶアキ。
アキはアキで短剣を出している。
「で?やんのか」
「……空丸様はお優しい。きっと人を殺す事は出来ない。それがあの方の強さで、弱さだ。私は殺せる」
「……はは、悪いけどな……俺も敵には容赦しねぇ」
娘の殺気に、俺は威圧で返した。
「っ、曇兄弟に手を出すなら死んでもらう」
「分からねぇでもねぇよ、俺だって身内に手を出すなら相手を始末する……例え、女でもな」
苦無を愛刀に変えた時……
「止めとけ」
白シャツの少年が娘の前に出て来る。
「貴方っ…空丸様は!?」
「お前は
「────」
「俺も同感だ。あいつは甘過ぎる。死ぬ覚悟はあっても殺す覚悟はない」
「「質悪……」」
娘が過保護になんのも無理はねぇのか?
「殺す覚悟。貴方にはあると?では、
「───…」
犲……?
確か、ユキがかつて居たっつーのも……
「貴方は何時向こうにつくか分からない。中途半端な気持ちで私達に近付かないで下さい」
……其方は其方で大変そうだなぁ。
「つーか、何時の間にかアキと黒鋼がバトってんだけど」
「あー、黒様鬱憤溜まってたからねぇ」
「ファイはどうすんだ?」
「オレはー見学かなーー。ハル君と戦いたくないしーー」
「っ、ハル!早よ行かんと…」
「コウとルアが行ったから、最悪の事態は免れるさ」
俺は威圧を消して、ファイとのんびり話した。
チラッと見た白シャツの少年は迷わないと言ったが、顔からは迷ってますと言わんばかり想いが滲み出ている。
「ハル!!アキ!!」「うわぁあぁぁ」
「!」「!?」
コウの声と子供の叫び声に駆け出す。
「しっかりしろ!!」
「急にあの人が!!血、吐いて…」
「虎っ!!!」
「何だ……?」
コウに抱き抱えられている虎の口から血と泡が出ていた。
「虎っ!!!しっかりせぇ!」
直ぐに亞華羽が駆け寄り、応急処置を始める。
俺達は少年達と虎達の間に立った。
「おい「黙って!」」
「何だ?」
「いきなり血吐いて倒れたっス…」
「大丈夫かよ」
「彼女は元医者です。任せましょう」
「医者?」
「罪人として獄門処にいましたが、一年前のどさくさに紛れ逃げ出したようです」
「医者って言えばー、碧凪君は?」
姿が見えないユキを捜してか、ファイがキョロキョロと周りを見る。
「「碧凪!?」」
「「…………」」
そして、過剰に反応した少年二人。
「……亞華羽、どうだ?」
「こいつ……虎はもうすぐ死ぬ。度重なる実験手術で臓器はボロボロ。もう投薬も無駄。一日三時間動けたらいい方や。もって、あと一ヵ月」
そう、あと一ヵ月。
だから、亞華羽は虎のやりたい様にさせる事にした。
俺も其は構わねぇが……アキが何か考え込んでたのが気になんだよな。
「人体実験に関わったあげく、こんな終わりあんまりやろ?虎の好きにさせたって。うちらの事、ほっといて欲しい」
「それは出来ない。そいつは人を殺してる。あんたも罪人なら警察に連れて行かないといけない」
「───なら、しゃあないな…」
「「だから、お前じゃ敵わないって」」
短刀を構える亞華羽に俺達は言う。
まぁ、やるなら……俺達か。
「退け。お前たちは生かしておいてやる」
向こうの白シャツもやる気らしい。
柄に手を掛けるのを視認し、俺も愛刀を出した。
「二人とも捕縛でいいだろ」
「甘いんだよ。あいつは此処で殺しておかないと、危険過ぎる」
そんな白シャツを止めたのは曇の上着の少年。
「駄目だ」
「てめぇ……」
言い争う少年二人。
「虎!?」
そんな彼等に虎が襲い掛かろうとした時……
「!」
クンッ
「あ」
虎に向けられた縄鏢を確認すると同時に彼を蹴り飛ばす。
その際、縄鏢は俺の右腕に巻き付き、虎は俺が失敗して首を蹴られて気絶したっぽい。
直後、縄鏢はアキが斬り、虎はコウが受け止めた。
「ちょ、ハル」
「悪ぃ、手が滑った」
「足じゃないか?」
「間違えた。足が滑った」
話しながら、縄鏢が放たれた方を見る。
「ったく、余所見してんじゃねぇよ」
「あ……」
「成程。それが大蛇実験の成功体か」
「!」
大蛇実験……確か、ユキが受けてたっつー……
「興味深い」
「逃げたと聞いていたが…こんな近くにいたとは」
「隊長!鷹峯さん!」
隊長……犲……成る程?
顔に火傷みてぇな傷があんのが……ユキの元義兄か。
合流して直ぐの頃に聞かされたユキの過去。
その登場人物が居るっつー事は……此処はユキの生まれた世界か。
「師匠!!!」
あ?
あー……そういや、元義兄には弟子が居るっつってたな。
「実験施設にあった記録に貴方と高峯さんの名前がありました。大蛇実験に協力すると。どう云う事ですか!?」
そう叫ぶ様に問い掛ける曇。
そして、向こうの二人組の後ろから、更に体格のいい男と小柄の者が姿を見せた。
「犬飼さん…
「「…………」」
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