ツバサクロニクル
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「で、どこにいるんだよ。その魔物は」
「黒鋼、やる気満々だー♪」
「この樹海の奥に祠のような所があって、そこにいるって言ってました」
小狼の台詞にコウも頷く。
祠……か。
「この国のものなのかな」
「分かりません。元々この国にいた何かが、突然力を得たのかもしれないし、別の世界から来たのかもしれない」
「わたし達みたいに?」
その時、気配を感じて俺達は警戒した。
ゴッ
「「「「「!!」」」」」
直後、目前に迫る大樹。
ザン
その大樹は黒鋼が斬り刻む。
「見えたか?」
「いえ、何も」
続いて強風が襲い掛かって来た。
俺達は其々木の影に隠れる。
「「?」」
この風……
「術でも使ってやがるのか。おい、双子」
「「何かおかしい」」
「あ?」
自然に近い……いや、その物の様な気配……
「「もう少し近付きたい」」
「よく分からねぇが、近寄るしかねぇか。行くぞ」
「「はい!」」
「「ああ」」
「「了解」」
コオオオオオ
風が弱まった隙を見て、中央へ近付いた。
ゴオオオオオ
再び強くなる風。
「すごい風ーー!!」
その勢いに黒鋼の外套に隠れているモコナが声を出す。
「きゃ!」
吹き飛ばされそうになったサクラの手を掴み、抱き寄せる小狼。
「小狼、やるー」ぱっフワ
「「あ」」
「きゃ~~~」ガシッ
「…………」
飛ばされそうになるモコナを黒鋼は見ずに掴まえた。
「わーんありがとー🖤」
「やめろっ白まんじゅう!💢」
「「…………」」
大丈夫そうなモコナ達を見て、俺達は視線を交わす。
この強風の中でも、俺とアキは普通に立てていた。
その上で飛ばされない様に俺はコウの、アキはユキの手を掴んでいる。
「やっぱり……」
「モコナ!ハル兄!羽根の気配は!?」
「感じる!」
「お、おう……同じくだ」
感じはするんだけどなぁ……何か、場所が掴めねぇ。
「また風が強くなった!」
「よっぽど、俺達は近寄らせたくねぇみたいだな」
「……いや」
「……違うな」
「「!」」
俺達が歩き出せば、手を掴んでるコウとユキも歩き出した。
風の壁を通り抜ける。
「!風が……」
「ない、ね」
中央は風が吹いていない空間だった。
その証拠に、中の木は一切揺れていない。
「まるで竜巻みたいだ」
「竜巻?」
「「それだ」」
「「え?」」
風に感じたのは竜巻という自然現象の気配。
俺はコウの手を放してこの空間を歩き出す。
……羽根の気配が……無い?
「で、何処なんだよ。魔物は」
黒鋼の声に振り返ると、小狼達も風の壁を突破して来た様だった。
説明をユキに任せ、俺は周りを注視する。
「ちょっと待て。もし魔物が竜巻なら、あいつらが言ってたありゃ、どうなるんだ。『生贄を捧げろ』っつったんだろ?魔物は」
「はい」こっくり
「そうらしいね」
「竜巻が喋るはずねぇだろ」
「……はい」
「その筈なんだが……」
「それに、魔物はもう何日もこの辺りにいるそうです。竜巻がずっと同じ場所にいるなんて……」
「其と、もう一つ」
竜巻の事を話す小狼達に近寄りながら話した。
「此処に羽根は無い」
「!」
「竜巻が強くなると妨害する様に羽根の気配が出て来るが、実際にはこの空間にねぇ」
だが、確かにこの世界にある筈。
何なんだ、この変な感じは……
「……聞こえる」
「姫?」
「泣いてる……」
と、サクラがふらっと歩き出す。
「なんだ?」
「分かりません。でも……玖楼国でああいう状態になったサクラ姫を見たことがあります。神官様は、姫は『声無きものの声を聞いているんです』とおっしゃっていました」
「愛し子か」
「え?」
「……俺はそういう特異な能力を持つ者をそう呼んでいる。ハルも然り、特異な力を持つ者は特異な者に愛されてる事が多い」
「自分を除外するなよ」
アキの言葉に苦笑しながら言った。
アキは俺の魂の性質……人以外に愛される性質と、其れによって齎される他の聖主の加護の事を言ってんだろ。
だから、強風を受けても、自然の風だから影響を受けずにいた。
「どうしたの?寂しいの?」
「姫!!」
風の壁に近付くと、サクラの体は優しく風に包まれて浮かぶ。
「……ここから動けなくなったの?怪我?違うの?何か大きな力のせいで動けないのね。貴方が別の場所へ行けるように、その大きな力を探すわ。だから安心して。少しだけ風弱められる?」
フッ
サクラの言葉に応える様に弱まる風。
「ありがとう」
微笑むサクラの雰囲気は何時も違う様に見えた。
「あの姫は、死者だけじゃなく竜巻とも話せるのかよ」
「だから、愛し子なんだ」
軈て、サクラが降りてくる。
その手を小狼が取った。
「双子さん達の言うとおり、あの人達が言ってた魔物はこの竜巻さんのことみたい。でも、困らせるつもりはなかったんだって」
何時もの雰囲気に戻ったサクラが竜巻から聞いた話を聞かせてくれる。
「何かの力のせいで動けなくなってしまって、竜巻さんも困ってるって」
「なるほどー。ハルが言ってたように、その力がサクラの羽根かもしれないね」
「一度戻りましょう。あの人達に良く事情を聞いて、出来る限り情報を集めて、それから探しに出たほうがいい」
「はい」
「だな」
俺達は小狼の言葉に同意した。
「魔物じゃねぇのかよ」
「また戦えなくて黒鋼すねてるー」
不満そうな黒鋼をモコナが揶揄う。
「きゃー魔物に襲われるぅ」
「うるぁ!誰が魔物だ!!」
刀を抜いてモコナを追い掛ける黒鋼を小狼とサクラとコウは戸惑いながら、俺達は笑いながら見た。
「そんなに不完全燃焼なら、アキと一回戦ってみりゃいい」
「げ」
「あ?主に剣を使ってんのはお前だろ」
「普段はな。基本的にアキは何でも扱えるし、強いぞ。其れに銃も扱えるのに輝石なんてチート技持ってるし」
「そういうハルは相手の技を見るだけで再現出来るだろ。何でも扱えるのは同じだし」
「俺の場合観察する必要があるし、お前の方が扱える範囲広いだろ。俺は暫く手に馴染ませねぇと出来ねぇけど、お前は手に持った時点で扱えるじゃん」
「だが……」
「はいはい、二人共チートチート」
「「っと」」
ユキが俺達の頭をグシャグシャと撫でる。
「そうだ、コウ」
「?」
ひょい
「え!?」
「投げんなよ」
アキがコウに向けて何か放った。
其を受け取ったコウはぎょっとする。
投げ渡されたのは銃だった。
「は!?え!?」
「俺達の中で、お前だけが遠距離の対抗手段が無い」
「!」
「俺達の中に入るなら……ハルを護るなら、其も身に付けておけ。使い方はハルから教われ」
「俺かよ。ったく、変な所で面倒臭がりやがって……」
……銃なら集中が必要だな。
どう稽古に組み込むか……
「「…………」」
「と、悪ぃ。俺達の所為で遅くなっちまったな。戻るか」
「いえ……あの、コウさん」
「ん?」
「おれも同じです。頑張りましょう」
「……そうだな。というか、俺も龍王みたいな感じで構わん」
「え」
「あまり友人が居なくてな。良ければ、俺とも龍王の様に友にして欲しい」
「……ああ」
笑顔で握手するコウと小狼。
その光景は微笑ましいものだった。
俺達は穏やかになった帰り道を進む。
「帰りは風びゅんびゅんじゃなくて良かったね」
「竜巻さんが弱めてくれたから」
ドンドコ
「ハッ 煙が!!」
その時、ルアとソル、ファイが残っている筈の所から煙が上がり、太鼓の音が聞こえてきた。
「待ちきれなくてファイ、生贄にされちゃったのかも!こんがり焼かれちゃって」
「ファイさん!」
俺達が駆け付けると……
「あ」
ファイがあの生き物達と炎を囲み、太鼓を叩きながら踊っている。
その光景に俺とアキ、ユキと黒鋼は脱力、コウと小狼とサクラは思わず転けていた。
「お帰りーー」
「「お帰りなさいませ」」
「何やってんだ、てめぇ;;」
「「全くだ」」
ルアとソルは俺達に歩みより、そのまま登ってくる。
「あはははは、教えてもらってたのー。お祝いの躍りなんだってー」
「いいないいな、モコナも踊るー。どうして、お祝い?」
「ほらーー」
「羽根!?」
「………………え」
ファイが差し出したのは、間違いなく記憶の羽根だった。
「ここにあったのかよ」
黒鋼が溜め息を吐く横で、モコナは目をめきょとさせる。
何故……此処に……何時から?
「この子達が持ってたんだーー。落ちてたの拾ったんだって」
「それって魔物が現れた頃じゃないですか?」
「そう?」
「そうかも」
思わず動揺している間に話は進んだ。
「魔物は竜巻だったんです」
「あー、やっぱり。この子達の話聞いてたらそうかなぁって」
「生贄、寄こせなんて、竜巻が言ったのかよ」
「それがねぇ。はい、もう一回」
「あの恐ろしいもの強い」
「すごく強い」
「住んでる所飛んでった。いっぱい倒れた」
「戦っても勝てない」
ファイの言葉に次々と話し始める生き物達。
「勝てないなら、イケニエを出すのはどうか」
「いいかも」
「いいかも」
「おいしそうなイケニエ渡したら、もう大丈夫かも」
「きっと大丈夫」
「大丈夫だ」
「大丈夫って言った」
「だれが?」
「だれ?」
「あの恐ろしいものかも」
「あの恐ろしいものだよ」
此れは……
「「「「「「「「「魔物がおいしそうなイケニエ渡したら、もう荒らさないっていった!」」」」」」」」」
「言ってねぇだろ!💢」
「伝言ゲームにありがちな展開だー」
なんつーか……この生き物達の勘違いって事か?
「はい、小狼君」
「ありがとうございます」
小狼の手を経由し、羽根はサクラの中へと戻される。
そして、眠るサクラを小狼が受け止めた。
ザワザワ ゴゴゴゴゴゴ
「!!」
「竜巻だーー!!」
突風。
「……💢」
ファイや生き物数体に掴まれ、黒鋼は不機嫌そうだ。
と、フッと風が止む。
直後、沢山の花が降り注いだ。
「この花は」
その花を取り、サクラの髪に差す小狼。
「竜巻のお礼かもしれませんね」
end.