ツバサクロニクル
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ザン
「どうなってんだ、この鬼児達は」
「全くだな」
襲って来る鬼児を黒鋼と共に斬る。
「双子、白まんじゅう」
「俺の方か?」
「モコナだもん」
「変な感じとやらは?」
「もっと強くなってる。何かまわりいっぱいに広がってる」
「同じく。正直気持ち悪ぃくらいだ」
「ハル、代わる」
「過保護……あ、いや、コウ」
「?」
コウを呼び掛けると、アキが直ぐに察してルアとソル達を引き取った。
「コウ、俺と代わって戦えるか」
「!」
まだコウの相手をして数日。
其れでも、コウには戦闘に関する才能があるのが分かった。
俺達みてぇな聖隷術やユキみてぇな魔法は使えなくても、接近戦ならこの程度の鬼児に殺られる事は無いだろう。
コウは一瞬驚いた顔をした後、自分の左腕に触れる。
そして、其処から太刀を引き抜いた。
「俺の実力を見ていてくれ!」
「おう」
ハイタッチを交わし、俺はコウと交代する。
バリバリバリバリ
直後、デカイ鬼児が屋根を破って来た。
「この国の鬼児は気配がなくて面倒くせぇ」
長剣を構える黒鋼。
「天魔・昇竜閃」
黒鋼の技を見詰める。
「俺に殺されるんだ……名誉に思え!」
その横でコウが残った鬼児を斬った。
「ふん。確かに悪くねえ刀だな」
「……もっとだ」
黒鋼もコウも自分の刀を見詰める。
「大丈夫ですか!?」
その時、護刃達が駆け込んで来た。
「お店が……」
「酷えな」
「∑きゃーー!『ちっこいにゃんこ』さん、どうしたの!?」
「寝てるだけ」
慌てる護刃にアキがサクラを見せながら言う。
「『ちっこいわんこ』は!?」
「……小狼」
小狼は星史郎の所に行ったきり、戻っていない。
ズズン
その時、地震が起きた。
「本格的におかしくなり始めやがった」
「
「「妖精遊園地……」」
アキと視線を交わす。
「くっそー!このままじゃ
「『わんこ』さん『にゃんこ』さん『鳥』さん達は
「名前は!?この国用じゃなく、ちゃんと本当の名前!」
「何言ってんだ?おまえら。わけわかんねぇぞ」
慌てる護刃と龍王。
特に、龍王は腕をバタバタを動かしていた。
ガッ
「いでっ!」
その時、彼の右手が壊れた屋根の木材にぶつかる。
「え!?」
その手から血が流れるのを見て、回復の為にその手を取った。
「快癒瞬け……ファーストエイド」
「何で『
龍王が呟いた直後。
バラ
「「「「「!!」」」」」
俺達の体が解ける。
ジュルン
気付くと、俺達は人々が混乱し逃げ回っているアトラクションの様な所に居た。
「ここは……妖精遊園地!?」
「何で桜都国の容姿のまんまこっちに戻ってんだ!?」
ドオォン
「!!」
音と衝撃に視線を向ける。
「鬼児!?」
其処には巨大な鬼児が暴れていた。
「あれ!星史郎だ!!」
其処には、鬼児の上にいる星史郎。
彼は俺達に気付くと、にこと微笑む。
「なるほど。ありゃ『殺す者』の目だ」
不敵に笑う黒鋼。
そして、俺達をチラッと見て歩き出した。
「どこ行くの?」
「あいつがあそこにいて、小僧が戻ってこない。そろそろ日も変わる。後は、俺の勝手だ」
「……万が一、お前が殺られたら俺達が殺るぞ」
「殺られるまで手ェ出すなよ」
俺達は彼をそのまま見送る。
黒鋼と星史郎が激突した。
「龍王!!」
と、駆け寄って来る小狼と、彼の後に続いてやって来るユキ、ファイ、見知らぬ女性。
「『ちっこいわんこ』!!」
「小狼!!」
小狼に抱き付くモコナと龍王。
俺は歩み寄って来たユキの体に触れれば、コウも同じ様に触る。
「実体には影響無いから大丈夫だよ」
そんな俺達に苦笑するユキ。
「良かった!あのまま別れたら、もう会っても分かんねぇからな!」
「あの世界は現実じゃなかったんだか」
「知らなかったの?」
「オレ達、旅行者だからーー」
「?」
そう話している間に、桜都国……基、仮想空間に来た時の事を思い出した。
「姫は……」
「寝てるだけだから大丈夫だ」
「あっちは大丈夫じゃなさそうだけどな」
草薙の言葉に黒鋼達の戦いに視線を戻す。
「星史郎さん……」
「どうしたの?」
「……本気だ」
彼等の戦いは激しくなり、互いの一撃が放たれそうな時……
カッ
モコナから吐き出された……立て札か?が二人の間に突き刺さった。
「わーーモコナの口からなんか出たーー」
「「「「…………」」」」
のんびり言うのはファイだけで、俺達は皆呆気に取られてる。
「おまえら……!!」
「黒様ーやほー」
黒鋼は戦いを止めて俺達を見た。
「ちゃんとこっちに戻っていたようですね。三人とも」
「……どういうことだ」
ポウ
星史郎の胸から光が出るのと同時に、俺とモコナが羽根の気配を感知する。
パアァ
「サクラ姫の羽根!?」
出て来たのは、予想通り記憶の羽根だった。
「どうして星史郎さんが!?」
「この羽根は僕も制御出来ないんです。勝負の決着はまた、いずれ」
「ちっ」
星史郎の足場が浮かび上がり、逆に黒鋼の足場が崩れる。
「あれです。干渉者が手にしている、あの物体。物凄い
……この女性は、此処の責任者っつー所か?
「あれが、ゲーム世界桜都国を実体化させている元凶です」
と、小狼が動いた。
「小狼!!」
壁を登り、倒れる柱を跳び移る。
俺は聖隷術で飛んで小狼を追えば、アキもついて来た。
「星史郎さん!!」
風圧の中でも手を伸ばす小狼。
俺達は彼の隣に降り立ち、その風を相殺する。
「その羽根を……」
ドン
その時、星史郎の前に大きな黒い影と誰かが現れた。
「『イの一』の鬼児が現れた」
大きな手の中に居るのは……
「「「「「!」」」」」
「見つかっちゃった」
一人の女性。
「『
「なんであの女が鬼児と一緒にいるんだ?」
どうやら黒鋼とファイが情報を聞きに行った者らしい。
「こんな方法で引っ張り出されるとは思ってなかったわ」
「すみません」
悪戯っ子の様に笑う女性─織葉に笑顔で返す星史郎。
「でも仕方ないかな。なかなか有望そうな鬼児狩りさん達が情報収集にやって来た時、貴方のことを言ってちょっと、目を逸らさせて貰ったし」
「ってコトはーお店で教えて貰った情報はーー」
「嘘ってことかよ」
「全部が、じゃないわ」
ファイ達の言葉に、にこと笑いながら織葉は返す。
「『鬼児を従えていた美しい男の子』とあったのじゃ本当。ただ、その男の子は鬼児ではなかったけれどね」
「「まぁ、確かに間違いじゃないな」」
俺達が言うと、黒鋼はどっちの味方だよという目を向けられた。
「
「そういったイレギュラーな対応が出来るのも、貴方が『
「プレイヤー?」
「この妖精遊園地で体験できる仮想現実には『生きている者』が別の姿となって演じているプレイヤーキャラクターと。遊戯上、最初から設定されている演じ手がいないノンプレイヤーキャラクターがいるの」
よくあるゲームの設定。
プレイヤーが動かすキャラと設定され決められた動きしか出来ないノンプレイヤーのキャラ。
俺達がプレイヤーキャラで、市役所の案内係がノンプレキャラっつー事なんだろ。
「鬼児に生きている者の気配がなかったのは……」
「ノンプレイヤーキャラクターは
「でも、貴方には気配があります」
「私は鬼児の役割を演じているけれど、
……その予定を崩す者が現れた。
「そして、
やっぱり、あの女は管理者みてぇなもので、織葉は彼女の友人か何かって所だな。
「干渉者は私に何の用かしら?」
「仮想世界である桜都国と現実世界では、姿形を変えることも可能なんですよね」
「そうよ」
「貴方の本当の姿は今と同じですか?」
「いいえ」
「貴方は『永遠の命を与えられる』と聞きました」
「ええ」
星史郎が質問をし、其れに織葉が端的に答える。
「回りくどい質問の仕方はやめましょう。……貴方の本当の名前は『昴流』ですか?」
昴流……?
「違うわ」
真剣な表情になった織葉が否定した。
「…吸血鬼の双児について何か知っていますか?」
「知らないわ」
「私も、この妖精遊園地のシステムを作ったひとりなの。『永遠の命を与える』というのは、最強の鬼児である私を倒した者には桜都国内での無敵状態。つまり、何があっても死亡しない特権を制作サイドから与えるという意味。吸血鬼の伝説とは無関係よ」
「今回も違いましたか」
と、星史郎が俺達に振り返る。
「貴方達は双児ですよね」
「「俺達は吸血鬼ではなく聖主だ」」
「聖主?」
「加護を与えた者には試練を与えるが、その試練を乗り越えられる力を与えられる」
「特例の契約を結んだ者には、俺達が持つ能力と同じものを与えられる」
「時間はゆっくりになりはする」
「だが、不老不死にさせる事はない」
「そうですか」
俺達が答えれば、星史郎はまた前を向いた。
「ご期待に添えなくてごめんなさい。でも、この状況はちょっと困ったわね」
「遊戯の世界が現実化しているのは、これのせいです。制御は出来ませんが、この世界から消えれば影響も消えますよ。それに、あの二人がいないなら長居は無用だ」
「待って下さい!」
小狼が星史郎へ制止の声を掛ける。
「その羽根……!おれはその羽根を探して旅をしていたいるんです」
「小狼のものじゃないよね」
「大切な人の、とても大切なものです」
「でも、返してあげられないな。ごめんね」
その言葉に小狼か目を細めた。
「僕と戦うのかな」
変わらず微笑む星史郎。
「おれに戦い方を教えてくれたのは貴方です。今のおれでは貴方には勝てません。一度、桜都国で戦って良く分かりました。けれど、必ずその羽根を取り戻すと決めたんです」
そう言うと、小狼は鞘と鍔を結んだ紐を解く。
「まだ未熟なおれには、この剣はきっと扱いきれない。けれど、抜かないままでは万に一つも勝ち目はない。だから、僅かな可能性でもあるなら、それに賭けます」
抜かれた刀身から炎が出た。
バッ
跳び出す小狼。
そして、振り下ろされた剣。
「倒した!?」
「いや……避けられたねぇ」
ファイの言う通り、小狼の剣は避けられている。
星史郎の周りを激しい炎が包んでいた。
「炎の剣か。小狼にぴったりだね。きっと君はもっと強くなる。これから様々な出来事を経て。もっと、もっと。その先にある事実がたとえ、望むものではなくても。その強さが君を支え導く」
「星史郎さん…!」
その時、星史郎の右目に魔方陣が浮かぶ。
「!!」
「小狼が、これを探しているなら。きっと、また会うことになるだろう。だから」
星史郎の足下に同じ魔方陣が出た。
此は……空間移動、其れに次元の魔女の力を感じるな。
「じゃあ、また。小狼」
「星史郎さん!」
小狼が再び跳び出すが、その前に彼は消える。
俺は悔しそうに炎を握り締める小狼の側に降り立った。
「……悔しいな、小狼」
「っはい」
小狼の頭に手を置く。
その悔しさは俺も味わった事がある。
きっと、其れが小狼の強さになるだろう。
「黒りんー!小狼くーん!ハルくーん、アキくーん!」
ファイの声に視線を彼等に向けた。
「もう、この国ともお別れかもーー」
「あぁ!?」
「え!?」
モコナを見ると、既に次元移動の段階に入っている。
「お別れってどういうこと!?」
「ちょっと待てよ!!」
同時に服やらなんやらが元の姿に戻った。
「ちっこいわんこ!!」
「小狼って言うんだ!本当の名前!!」
「シャオラン!!また会えるよな!」
「分からない。でも、諦めない。強くなる、もっと」
微笑んで龍王に拳を突き出す小狼。
其れに龍王もにかっと笑い……
「おう」
同じ様に拳を突き出す。
そして、俺達はこの世界を後にした。
end.