ツバサクロニクル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……で、其に乗ったアキが俺の所に白い鳥を、ユキの所に灰色の鳥を、自分の所に黒い鳥を描いたと」
「ほうだ」
「わぁ、よく伸びる」
話を聞き、俺はアキの頬を引っ張る。
変な所で面倒くさがりやがって……!
「おいしーー🖤」
「よかったー♪モコナのアドバイスで生クリーム添えてみたんだー」
「クリームがついてるとなお美味しいのー」
俺が説明を受けている間に客……志勇草薙と猫依護刃にチョコケーキの試作を出していた。
「こりゃ、他の鬼児狩りやってる奴等にも教えないとな」
「ありがとう!」
慣れない様子で茶を出すサクラに護刃が笑顔で応え、ほわ~~とした空気が流れる。
「桜都国には来たばかりなんですね」
「はい、昨日」
あ、この二人友達になれそうだな。
「着いた夜、いきなり鬼児とかいうのに家宅侵入されて大変だったよー。そういえば、市役所の子が鬼児の事、説明してくれた時に言ってたんだけど『段階』ってなにかなぁー?」
「鬼児の強さはイが一番上でロ・ハ・二・ホ・ヘ・トと下がっていくんです。それを更に五段階に分けていて、例えばホの一段階だとホのランクで一番強い鬼児。ホの五段階だとホのランクで一番弱い鬼児って事ですね」
「と、言う事は一番強いのは『イの一』」
「そう!鬼児狩りはみんな、そのイの一段階の鬼児を倒す為、日々頑張ってるんです!」
「…………」
話を聞きながら、アキが考える様に視線を落とした。
「ってことはーー。昨日、うちに来たハの五段階ってのは中間よりちょい上くらいーー?」
「そりゃ妙だな。家に侵入できる鬼児はロの段階以上だぜ」
ピク
何故か俺が変な気配を感じるのと同時に草薙達が連れて来た犬が反応する。
「鬼児が近くに出たみたい!」
立ち上がる草薙と護刃。
「この子は鬼児の匂いを感知出来るの」
……俺は気配で察したんだけど。
「ごちそうさん」
「すっごくおいしかったです!」
「幾らだ?」
「今日はサービスでーー。また来て、色々教えて欲しいなー」
「おう。是非、寄らせてもらうよ」
「またね」
「また」
笑顔で手を振る護刃とサクラ。
「もう常連さん候補出来ちゃったねぇ、『おっきいわんこ』」
「……………」
「「「∑」」」
黒鋼がスラリと刀を抜いた。
「モコナ、ハル兄、羽根の波動は?」
「感じるけど、やっぱりすごく弱い。場所までは分からない」
「あ、ああ。同じく」
「鬼児狩りは情報を得るのに有利だそうだ。きっと、色々聞けると思うよ」
「モコナも頑張って羽根の波動キャッチする!」
……黒鋼が刀を振り回してファイを追い掛けてんのは、放置してていいのか?
其れから俺達は一旦部屋に戻る。
「で、何を考えていたんだ」
「ん?ああ、ゲームみたいだなと思ってな」
「「ゲーム?」」
「其で、まるでバグでも起きた感じだな、と」
アキの言葉に納得した。
確かにゲームって言われりゃ納得だな。
「「「…………」」」
外に視認出来る複数の鬼児。
直ぐに小狼と黒鋼が討伐していく。
今回は二人に全面的に任せるか。
翌朝。
パタパタパタパタ ゴツン パタ
「おはようございます!」
慌てた音共にサクラが起きてきた。
「「「おはよう」」」
「「おはようございます」
「おはよーーサクラちゃん」
「ごめんなさい、寝坊しちゃって!」
「いいんだよー。お店、開ける時間まだ決めてないし。それに、サクラちゃんはまだ本調子じゃないしね」
「明日はちゃんと起きられるように頑張ります!」
「応援してるよーー」
俺は苦笑しながらルアをサクラの髪の所まで抱き上げる。
そうすれば、ルアが跳ねた髪を直した。
「モコナと小狼君と黒鋼さんは?」
「昨夜、また鬼児が出て、それやっつけたから報償金貰いにーー」
「昨夜ですか?」
「うん。サクラちゃん良く寝てたからねぇ」
「また怪我したんでしょうか」
「んーーー、小狼君はちみっとね。ハル君が治してたけど」
ファイの話を聞くサクラの表情は心配そうなものだ。
「心配?」
「……はい。小狼君、わたしの記憶を探すために頑張ってくれてるのに。わたし、なにも出来ないから。それに小狼君。時々、凄く……独りに見えて……」
……サクラから小狼の記憶が無いのは見て知ってるし、思い出そうとしても消されるというのはファイから聞いてる。
其でも……
「……さすがだなぁ」
「え?」
「何も出来ないなんてことないよ。笑ってあげてよ。サクラちゃんの笑顔が小狼君のごちそうだから」
そうだな、小狼はサクラの為に無茶してんだし。
「で、サクラちゃんのごちそうはこっちーー。お腹すいたでしょーー召し上がれ。これつけて食べて」
「はい。有り難うございます。いただきます」
ファイが出した朝食を一口食べると、サクラの顔が輝いた。
「おいしいっ!」
「よかったー」
「ファイさんすごいです!絵も上手だし、お料理も上手なんですね!」
「絵は魔方陣の要領だしーー。料理は薬とか魔術具の調合と同じだしねーー。ハル君とアキ君の教え方も上手だしーー。でもーー、小狼君もモコナも喜んでくれたんだけどーーー。『おっきいワンコ』がねぇ」
あー、ファイが無理矢理口に突っ込んでたな。
それ以上はまた喧嘩になりそうだったから、俺がおにぎり作ってやったっけ。
ポロン
「「?」」
にゃんこ達のやり取りを見ていると、ピアノの音がする。
其に振り返れば、ファイが何処かから買い付けたピアノにユキが触れていた。
そして、演奏を始める。
「……!」
其を聞いていると、アキに腕を引かれた。
その間に一曲が終わり、アキが目で合図してくる。
「──果てなき夢求める……♪」
「──座標なき世界で……♪」
ユキが俺達に一度視線を向け、演奏を続けた。
「三人とも凄い良かったよーー」
「はい、とっても素敵でした」
「「ありがとう」」
「どうも」
其れから俺達は其々店に出すメニューを作る。
ファイはサクラに教えながら。
アキは飲み物を検討し……
「お前、作れねぇならキッチン入んな」
「作れない訳じゃないけど?」
「ア レ は 料理とは言わねぇ」
「「最早兵器……」」
暗黒物質を作り出したユキを俺とルアとソルで説教していた。
食べ物を粗末にすんな……。
ガラッ カランカラン
「ただいまー」
「おかえりーー」
小狼達が帰って来たらしい。
説教を止め、彼等の元に戻る。
「お帰りなさい!」
「ただいま」
笑顔で交わすサクラと小狼。
一方、黒鋼は機嫌が悪いのか足音を立てながら入ってきた。
「「黒鋼はどうした?」」
「黒ワンコまだ怒ってるのーー?朝ごはんのことぉ?」
「そのワンコってのヤメろ!」
「可愛いじゃないか」
名前に怒ってるのか?
「何か困ったことあった?黒鋼さんすごく怒ってるような…」
「あ…あの、帰る前にもう一回市役所へ行ったんです。情報屋へ行った後に」
サクラに聞かれ、小狼が説明し始めた。
「黒鋼さんが『すぐやる課』で登録名を変更しようとしたですけど……」
『出来ません。名前を変更したいなら、再度入国して下さい。その場合現在、お持ちの園は全て無効となります』
「あははははは!」
話を聞いて大笑いするファイを黒鋼が睨む。
「笑いごとじゃねぇ!情報屋の女まで知ってやがったんだぞ!!」
「なんでーーかわいいよー」
「ワンココンビだー」
ドタドタドタと追い駆けっこを始める黒鋼とファイ、ついでにモコナ。
「……さて、準備するぞ」
「「は、はい」」
「「はーい」」
「あ、そうだ!ハル達に侑子がお願いあるんだって!」
「「「?」」」
其れから俺達は店を開けた。
とは言え、黒鋼とファイは情報収集に出てるが。
「ヘンじゃないですか?」
着替えた小狼を見て、サクラは首を横に振る。
「曲がってる」
「ありがとうございます」
と、曲がっているタイをサクラが直した。
カラン
「いらっしゃ…………!」
「…………」
「?」
店に入って来た、赤毛に眼鏡の少年を見詰める。
もしかして…………
「……渡り鳥、というのは貴方達か」
「「そうだ」」
「次元の魔女に言われて来た」
やはり、例の侑子に頼まれた件の少年か。
「「「…………」」」
俺達は視線を交わした。
「「小狼、店番頼んだ」」
「あ、はい」
「奥へ来て」
「分かった」
「ルア」「ソル」
「「畏まりました」」
店を小狼とルアとソル達に任せ……少年を連れ、居住スペースに入る。
「……さて、と。俺達は次元の魔女からお前の保護を頼まれたんだが」
「詳しい事は聞いていない。何故態々俺達に保護させたのかも含めて」
「説明して貰える?」
「ああ、勿論だ。俺は此処とも君ひ……次元の魔女の世界とも違う世界の出身だ。幼い頃に色々あって……次元の魔女の世界に事故で転移した」
真っ直ぐな瞳に嘘は感じられない。
「時が来るまで、ある少年と居たが……時が来た、と言われた。俺の帰るべき世界へ、渡り鳥と共になら行けると」
俺達となら、か。
まだ全部理解した訳じゃねぇが……
「次元の魔女の考えは分からねぇが」
「多分俺達の加護下に入れたいんだろう」
「と言う事は?」
「「受け入れる」」
俺達は手を差し出し、少年はその手を取った。
「俺はハーヴェル。ハルと呼んでくれ」
「俺はアーキス。アキと呼んでくれ」
「俺は碧凪。雪弥……いや、ユキと呼んでくれ」
「俺は……綱平」
「「じゃあ、コウだ」」
「よろしく、コウ」
「……ああ……」
自己紹介をした後……店から大きな物音がし、俺達はマサを連れて戻る。
「いっでーー!!」
知らない声に揃って店を覗いた。
「「客か?」」
「うわぁ……」
「「あ」」
見知らぬ少年と娘、草薙と護刃……そして、無茶苦茶になった店内。
「…………説明」
「あ、あの、実は……」
「申し訳御座いません、龍王をお止め出来なくて……」
「いや、俺のせいでもある。うまい店見つけたって、龍王に教えた時に強い奴らに会ったって言っちまったからな」
草薙や護刃、そして蘇摩という娘にフォンダンショコラを出せば、アキが紅茶を出す。
「龍王、ほんっとうに強い人と手合わせするの好きだものねーー」
「「止められなくて申し訳ありません」」
「どうせ、いきなり戦い始めたんだろ」
「で、お前達はサクラを護ってたんだろ?」
「「はい……」」
落ち込むルアを俺が、ソルをアキが撫でた。
そんな俺達をカウンターの向こうのコウが見詰めて来る。
因みにユキは滅茶苦茶になったテーブル等を直す小狼と龍王という少年の見張りだ。
「冷めない内にどうぞ」
「いただきます」
サクラが促すと蘇摩がフォンダンショコラを口に含んだ。
と、彼女の顔がぱああと輝く。
「本当に美味しいです。貴方が作られたんですか?」
「ん?おう。そんなに喜んで貰えて光栄だな。紅茶も飲んでみな」
「はい!」
ふと視線を向けると、小狼と龍王が笑顔で話していた。
「よろしくな!『ちっこいわんこ』!」
握手しながら此方にも聞こえる大きめな声で言われた単語に、あうと小狼が固まっている。
そんな様子を見て、嬉しそうな顔をするサクラ。
「ほらほら、手を動かさないと……君の分、アキとコウ君が食べ尽くすよ?」
「∑え!?」
「あ」
ユキの言葉に視線を向けると、俺が作ったのを二人が食べていた。
思わず苦笑する。
.