ツバサクロニクル
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其れから俺達は用意された部屋で休む。
俺はアキとユキ、そしてルアとソルと同じ部屋。
小狼は黒鋼とファイと。
サクラはモコナとだ。
アキは部屋に入って早々に寝た。
ユキもルアもソルを抱えて毛布を被って多分寝てる。
……ユキって、寒がりなのか?
「──金の髪の姫、か」
俺は窓辺に座り、目を閉じた。
実話とされている伝説。
サクラの記憶の羽根がもたらしただろう事件。
俺の生まれ故郷やリチアの時の茨の眠り姫伝説より余程分かりやすい伝説。
だからこそ……
「!」
ふと、気配を感じて目を開ける。
窓の外はいつの間にか雪が降り……金髪の姫がいた。
……生きてる気配じゃねぇな。
何を見てるんだ……?
翌朝。
「ハル様、昨夜は休まれていないのですか?」
「ああ……」
「子供がーーー!!」
泣き叫ぶ声に俺達は小狼達と合流して外に出る。
大勢の人達が居る中、昨日の少女が持っていた猫のぬいぐるみを手に泣き叫ぶ女性が居た。
「子供がどこにもいないんです!!」
昨日の青年にすがりつく女性。
「ちゃんと鍵も掛かってたのに!!」
「壊されたのか!?」
「中から開いてるんです!!絶対に鍵は開けちゃいけないと教えてあるから、あの子の筈ないわ!やっぱり金の髪の姫が子供達を……!」
「じゃあ、あれは夢じゃない?」
あれ?
「あれって何だ!?」
サクラの言葉に反応した青年が迫り、小狼が庇う。
「昨夜雪の中を、金色の髪をした白いドレスの女の人が、黒い鳥を連れて歩いて行くのを見たんです」
サクラも見たのか。
「やっぱり金の髪の姫が子供をさらって行くんだわ!」
「北の城の姫君だ!」
「姫の呪いだ!」
「違うな」
「「「!」」」
「あの姫に子供を拐う程の力はねぇ。寧ろ……」
目を閉じて姫の姿を思い出した。
「嘆いていた」
「いい加減にしないか!」
声に目を開ければ、グロサムが俺の方を睨んでいた。
「また子供がいなくなったんですか!?」
「昨夜、この余所者達は家から出なかっただろうな」
「いつ急患が来ても良いように、私の部屋は入り口のすぐ隣です。誰かが出て行けば分かります」
対峙する医師とグロサム。
「ここにいても仕方ない!さあ!子供達を探そう!!」
町長の言葉に動き出す大人達。
青年も俺達を睨んで探しに出る。
「わー、なんか睨まれたねぇ」
「怪しまれてだろ」
「さあ、戻りましょう。朝食の準備が出来てます」
「大丈夫ーー?黒んぶのナイフとフォークの使い方独創的だからぁー」
「うるせっ!おまえこそ箸、使えねぇだろ」
「…………」
医師の家に戻る小狼達とは反対方向に向かった。
「ハル兄?」
「俺は朝飯要らねぇし、ちょっと辺り見て来る」
「ハルが行くなら俺も行く」
「なら俺も」
「「我々も!」」
歩き始めた俺の後にアキとユキ、ルアとソルが付いて来る。
「なんだお前ら!」
「うるせぇ、一々怒鳴んじゃねぇ……確か此処だな」
昨日見た少女の家の前に立ち、目を閉じた。
「……此方か?」
何となく歩き出す。
「アレは……」
「例の城?勘で辿り着いたの?」
「ですが、川が……」
「荒れてますね」
辿り着いたのは荒れた大きな川に阻まれた城。
「…………」
彼処に移動しようと思えば、目視の範囲だから出来るが……リスクを負ってまで今、移動する必要はねぇか。
「そこで何をしている!」
「「「?」」」
振り返るとグロサムが居た。
「何って……」
「「城見てる」」
「……城をだと?やはり、あそこにいるのか」
グロサムは城を睨み付ける。
……心配してんだな。
「この川を渡ろうなんて思うなよ」
「!」
「ロープを使った所で渡れないだろうな」
「流されて犬死、なんて意味がないだろうしね」
そう話しながら、俺達は川を覗き込んだ。
「どうやって渡ったと思う?子供を抱えては難しいよね?」
「「抱えてが難しいなら、自分で行かせた」」
「!?」
「自分から?催眠状態だったとか?」
「「多分」」
「それなら内側から開けられてた理由も分かる。だけど、この川をどうする?」
「「彼処」」
俺達が指したのは橋があっただろう場所。
「?」
「今は分かりにくいが」
「下に岩がある。もしかしたら、川の流れを抑えるものがあるのかもな」
「なぁ、居なくなるつー日は雪でも降ってたか?」
「あ、ああ……そうだ」
となると、子供だけじゃなくて大人の足跡も消えるな。
「金の髪の姫の伝説。ちゃんとしたの知ってるか」
「……ああ」
そして、例の伝説について聞かされる。
「『同じ姿で戻らなかった』……その頃、流行り病の類いは?」
「……詳しく調べないと分からない」
「どうして流行り病だと?」
「同じ姿で、という時点なら死んだと普通は解釈する。が、この前に王と后が死んだと明記されてんのに、態々そんな遠回しにする必要性が分からねぇ」
「成る程」
「同じ姿で、つー事は何らかしらの形で親はその姿を確認してる筈。もし、流行り病に罹った子供を羽根の力で治療してたなら、同じ姿じゃねぇ。勿論惨殺した可能性も無くはねぇが、それにしちゃあの姫から穢れは感じなかった」
もし、本当に子供達に手を出してたんなら、多少なりとも穢れる筈。
だが、あの姫は聖隷が好む程綺麗だった。
「もっと詳しく伝承を調べてみねぇと……」
「……それならば、私の家の本を調べてみるといい」
「「「!」」」
思わず三人揃ってグロサムを見る。
「お前達を信じた訳ではない。だが、今は少しでも子供達の手掛かりが必要だ」
「……あんたも不器用だな」
「なっ」
「お言葉に甘えよう」
「俺も大蛇の伝説とか見聞きしてたから、手伝えるかな?」
「おう。こーいうのは、先入観に囚われず色んな視点から読み解いた方が真実に近くなるからな」
「……来い」
俺達はグロサムの後に続いた。
其れから色々考察し、グロサムの家を後にする。
「あ、おかえり~」
「「「ただいま」」」
「ハル兄達、今日グロサムさんと一緒にいましたよね?」
「「ああ」」
「城の前で会ってね」
「で?何か分かったのか?」
「まだ考察段階だ。ちょっと部屋で考えさせてくれ」
そう告げ、俺は一足先に部屋に戻らせて貰った。
昨日と同じ様に外を見ながら考えを纏める。
コンコンコン
「失礼します」
「…………」
「何か食べないといけませんよ?」
「どうも」
医師がテーブルに置き、微笑みながら俺を見た。
食べるまで出ていかねぇつもりか。
仕方なく出されたスープを飲む。
其れから暫くし、アキ達が戻って休んだ頃。
「!また現れたか」
彼女が姿を現した。
「金の髪の姫!!」
「ん?」
サクラの声?
声に反応しつつも下を見れば、何人もの子供が外に出て何処かに向かっていく。
「見失っちゃう!」
「……はぁ!?」
またサクラの声がしたかと思ったら、彼女が窓から木を伝って下に降りてしまった。
「チッ!」
「ハル様!」
俺も窓から飛び降りる。
直後、ルアが追い掛けて来た。
彼を受け止め、フードの中に入れてサクラを追い掛ける。
「サクラ!」
サクラは城の前の川の所で寝ていた。
そんな彼女に駆け寄ろうとした時……
「ルア、絶対に動くな」
「っ畏まりました」
頭に衝撃が走り、俺も倒れ込む。
……任せたからな、アキ……
「ハル様!」「ハルさん!」
「……おう」
目覚めたのは石造りの部屋。
俺とサクラの片足には枷があり、鎖でベッドに繋がられていた。
「この程度で抑えられるかよ」
「!」
直ぐに愛刀を出して枷を破壊する。
「ハルさん、子供達が!」
「ちょい待ち……獅子戦吼!!」
扉を破壊すると、サクラはそのまま飛び出した。
「あ、おい!ったく、お転婆だな……ルア、追い付いたらサクラに着いててやれ」
「はい」
サクラを追い掛けた先……其処には広い空間が広がっている。
幾つか飾ってある姫の絵に、ボロボロな遊具。
此処は……
「待って!」
サクラの声に前を見ると、彼女へと子供達が迫っていた。
「きゃあああ!」
咄嗟にサクラの前に出る。
が、子供達は集まって来ただけだった。
『待っていました』
「エメロード姫!!」
俺達の前に、金の髪の姫ことエメロードが現れる。
敵意は感じねぇ。
エメロードは横にずらされた絵……其処にある穴を指さした。
「あの中…?」
「……見てみろ」
サクラを促せば、そっと彼女は覗き込む。
「わたしの羽!?」
その言葉に俺もサクラの後ろから覗いた。
中では子供達が結晶の中にある羽根を取り出そうと削っている所だった。
カツーーン ビシビシ
「「!!」」
その時、強い光と共に結晶の塔が破壊される。
そして、羽根が入った結晶を持った子供が出て来た。
『これは貴方のものですね』
サクラへと差し出された羽根入りの結晶。
『三百年前。私はこの羽根の力で子供達を救うことが出来ました』
「!」
『けれど、もう私は死んでいて誰にも見えなくて。この子達が、この城に羽根を掘り出すために連れてこられても何も出来なかった』
……俺の考察もある程度いい所いってたみたいだな。
『でも、貴方達は私を視てここまで来てくれました』
どっちか言うと、俺とルアはサクラに付いて来たんだけど。
『子供達をどうか家に帰してあげて下さい』
「…エメロード姫」
「!」
「え?」
俺はサクラを背中に庇う。
「サクラさん!ハルさん!」
「カイル先生!」
「「…………」」
駆け寄ってきた医師を睨んだ。
「みんな、探していましたよ。さ、こちらへ」
俺達は動かない。
「どうしました。裸足のままでは怪我をしてしまう。頭の手当てもしないと。早くこちらへ……」
「どうして、わたしが裸足だとご存知なんですか」「何で頭怪我してんの知ってんだよ」
「……」
俺達の言葉に医師の仮面が取れた。
「助手とかいう子供といい、知恵がまわるのも困りものだね。靴を脱がせて鎖までつけてのに、こうやって抜け出してるな。羽根をよこせ!」
『渡さないで』
俺達の前に出たエメロードだが、医師はその体を擦り抜ける。
「エメロード姫!」
「おまえに暗示はかけていない。幻でも見てるのか?」
「あ?」
暗示……そうやって子供集めたのか。
「サクラ、俺の後ろに居ろ」
「は、はい!」
「それを掘り出すために子供達を集めたんだ。あの絵に隠されていた穴は三百年前、城に居た子供達の避難用だったらしい。掘り崩せない程、固い上に大人じゃ通れないくらい狭い。おまけに羽根がある氷は春になっても溶けやしないバカみたいに硬いしな。仕方ないから子供達に暗示をかけて城で掘らせてたんだ。思ったより時間がかかったがな。けれど、やっと手に入る」
「ベラベラとどーも。魔神剣!」
「ぐっ!」
短剣を吹き飛ばした。
「それ以上近付いたら、怪我じゃすまねぇぞ」
「チッ!」
……此奴、本性を表したら穢れが出てきやがった。
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