ツバサクロニクル
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「あははー。なんか注目されてるねー」
新しい世界の酒場に来ている。
そして、店中から視線を受けていた。
「うん、あまり注目されるのは好きじゃないね」
ユキが苦笑しながら帽子を深く被り直す。
アキも不愉快そうだな。
「やっぱりこの格好がいけないんでしょうか」
「んー全然違うもんねぇ。ここの国の人達と。特に黒たんがー」
「あーー?文句あっか」
「黒鋼、食い辛ぇなら切ってやるぞ?」
「モコナとルアソルはいい子で動かないでいるもんねー」
フォーク二つで肉を食べようとする黒鋼に思わず苦笑した。
「あの大丈夫なんでしょうか、この食事」
「んん?」
しゅばっ
「「「あ」」」
「この国のお金ないんですけど」
「大丈夫だよー」
「∑あっ!てめっ」
モコナが一瞬の隙をついて黒鋼の肉を食べる。
「ねっ、サクラちゃん」
「え!?」
「久々に稼いでく貰うか、ハル」
「ん?」
切り分けた肉を黒鋼にやってたら、いきなり名前呼ばれたんだが……
「お嬢ちゃんのカードは?」「兄ちゃんのは?」
「えっと、こうなりました」「おう」
其れから俺とサクラは違うテーブルでカードゲームをさせられた。
今一ルールは把握してねぇけど、違うテーブルなのに俺達のカードは全て冠の絵柄。
「何度やっても負けないなんて!どうなってるんだ一体!?」
「イカサマじゃないのか」
「またカードお揃いだなー」
「はい」
「つーか、アキと違って俺はイカサマしねぇし。ルールもまだ把握し切ってねぇわ」
「バレなきゃイカサマはイカサマじゃないだろ」
「わぁ、はっきり言っちゃうんだ」
「はいはいごめんねぇ~イカサマしてるヒマなんかなかったでしょー」
ファイが稼いだ金を回収する。
「文句あるなら、あの黒い人が聞くけどーー?」
「あぁ?」ギロッ
またモコナに取られたらしく不機嫌な黒鋼が声を掛けられ、相手側を睨んだ。
「い……いや!」
「う、疑って悪かった!」
結果、相手側は引き下がる。
「はい、サクラちゃん。それに、ハル君。お疲れさまー。これで軍資金ばっちりだよー。この国の服も買えるし、食い逃げしなくてオッケー」
まぁ、俺達は金があるからそもそも食い逃げしなくて済むけどな。
俺達は食事に戻る事にした。
「しかし凄いな、お嬢ちゃん達」
「ルールとか分かってなかったんですけど、あれで良かったんでしょうか」
「あははは、面白い冗談だな」
「冗談じゃないんだけど…」
酒場の主人らしい男が飲み物を出してくる。
「「…………」」
「?」
何となくこの男から嫌な感じがして、少し警戒した。
ユキも何か感じ取ったのか男を見て目を細め、そんな様子にアキが首を傾げる。
「変わった衣装だな。旅の人だろう?」
「はい、探しものがあって旅をしています」
「行く先は決まってるのかい?」
「いえ、まだ」
「……だったら、悪いことは言わん。北へ行くのはやめたほうがいい」
「なんでかなぁ?」
「北の町には恐ろしい伝説があるんだよ」
「どんな伝説なんですか?」
伝説は……俺も気になるな……。
─昔、北の町はずれにある城に
金の髪のそれは美しいお姫様がいたらしい。
ある日、姫の所に鳥が一羽飛んで来た。
輝く羽根を一枚渡して、こう言ったそうだ。
「この羽根は『力』です。貴方に不思議な『力』をあげましょう」
姫は羽根を受け取った。
そうしたら王様とお后様がいきなり死んで
姫がその城の主になった。
そして、その羽根にひかれるように、次々と城下町から子供達が消えていって
二度と帰って来なかったそうだ─
「…………」
「それはーーおとぎ話とかいうヤツかな」
「いいや、実話だよ」
……実話だとされている伝説、か。
「実際に北の町にその城があるんですね」
「もう三百年以上前の話だから、ほとんど崩れちまってるがな」
「で、そんなこわい話があるから、北の町には行っちゃいけないのーー?夜寝られなくなっちゃうからー?」
「いや、伝説と同じようにまた、子供達が消えはじめたんだよ」
其れから俺達は服と馬を買い、北へと進んだ。
「……『力』をくれる輝く羽根。なんだか、サクラちゃんの羽根っぽいねぇ」
「モコナ、まだ強い力を感じない」
「同じく。だが、前のクソ領主が羽根を利用した時、気配が広範囲に分散してた」
「……もし、その羽根というのが封印処置されてたら?」
「気配も途切れてる可能性も否定出来ない」
「つまり、羽根がないとは言い切れないよねぇ」
そう、否定は出来ねぇ。
「ハル君の言う通り、何か特殊な状況下にあるのかもしれないし。昔の伝説って言ってたけど、春香ちゃんのとこでもそうだったしね」
「で、行くのか」
「はい。北の町へ」
俺達は枯れ木道を行く。
「わーー、いい感じにホラーってるねぇ。この木の曲がり具合がまた」
「そりゃどうでもいいが冷えて来たな」
「雪降りそうだもんね」
「ハル」
「過保護。俺達が普通より平気なの知ってんだろ。ユキは大丈夫か?」
「今の所はね。でも、ルアとソル借りても?」
「「どうぞ」」
ルアとソルをユキに渡せば、彼はギュッと抱き締めた。
「大丈夫ですか?」
「平気です。この服、暖かいから」
小狼は一緒に馬に乗っているサクラを気に掛ける。
「そっか。サクラちゃんの国は砂漠の真ん中にあるんだっけ」
「はい。でも、砂漠も夜になると冷えるから」
「あー……」
「「?」」
何かを思い出す素振りを見せるアキ。
其に俺とユキは首を傾げた。
「黒るんとこはー?」
「黒るん言うなっ!💢日本国には四季があるからな。冬になれば寒いし、夏になりゃ暑い」
「ファイの所はどうだったの?」
「寒いよーー来たの国だったから。ここよりもっと寒いかな」
「「ユキの所は?」」
「俺の所も四季がある感じだったかな。双子は?」
「俺達は小さい頃から色々行ってたし」
「特別この国出身とか無いな」
兄さんと一緒に先生に拾われて旅をして……義父さんの所に居た頃もアチコチ行ってたし。
「小狼君は?」
「おれも父さんと色んな国を旅してたので」
「寒い国も暑い国も知ってるのね」
笑顔で話すサクラ。
「あれ!」
と、モコナが前を指す。
其処には町の名前らしい看板があった。
「なんて書いてあるのかなぁ」
『SPIRIT』
此れは……確か……
「「『スピリット』」」
思わず声が重なった小狼と顔を見合わせる。
「って読むんだと思います。前に父さんに習った言葉と同じ読み方なら」
「俺もそう読むんだと思った。俺の場合は古代語の一つで読んだ事ある」
「読めるんだーー」
「すごいね」
別に読みたくて学んだ事で、凄くはねぇんだけど……
「おい。はしゃいでる場合じゃねぇみたいだぞ」
……おー、窓と言う窓からめっちゃ見られてんな。
ちょっとしたホラーじゃん。
俺達はそのまま町へと入った。
バタンバタンバタン
「なんか」
次々と閉められていく窓。
「歓迎されてないって感じがビシビシするねぇ」
「されてねぇだろ、実際」
「「監視されてるな」」
「だよね」
と、玄関扉の前に立っている幼い少女を見付ける。
「こんにちは。聞きたいことがあるんだ。この町の……」
ガチャ
「外に出ちゃダメって言ったでしょ!」
小狼が笑顔で話し掛けた直後、家の中から母親らしい女性が出てきて少女を中に入れた。
「あー。これはやっぱりあの酒場で聞いた話のせいかなぁ。伝説を確かめようにも、これじゃ話も出来ないねぇ」
バタンと拒絶する様に閉められた扉。
「せめて金髪の姫がいたという城の場所だけでも教えてもらえるといいんですが……」
その時、駆け寄って来る複数の気配に俺達は警戒する。
バタバタ ガチャ
一斉に向けられる銃口。
サクラを小狼が庇い、そんな彼を俺達が庇い、更に黒鋼とファイが前に出た。
「おまえ達何者だ!?」
一人の青年が怒鳴る様に聞いてくる。
「旅をしながら各地の古い伝説や建物を調べてるんです」
「そんなもの調べてどうする!」
「本を書いてるんです」
真顔で言う小狼を思わず俺達は見た。
「本?」
「はい」しれっ
「おまえみたいな子供が!?」
「いえ、あの人が」
「そうなんですー」
小狼の言葉にファイが乗る。
「で、その子がオレの妹でー、その子が助手でーー、二人が助手の兄でーー、その向こうが護衛でーー、でこっちが使用人」
「なんだと!?誰が使用人……がっ!!」
……黒鋼の上着の中でモコナが頭突きでもしたか?
取り合えず、ファイが作家でサクラがその妹、小狼が助手で俺達が兄、ユキが護衛で黒鋼が使用人っつー設定か。
「やめなさい!」
「先生…!」
今度は眼鏡の男が、割り込んで来た。
「旅の人にいきなり銃を向けるなんて!」
「しかし、今の大変な時期に余所者は……!!」
「余所から来た方だからこそ無礼は許されません!失礼しました、旅の方達」
眼鏡の男が俺達へと振り返る。
「ようこそ『スピリット』へ」
その笑顔に酷く嫌悪した。
其れから俺達は眼鏡の男の家へと案内される。
「この町の医師カイル=ロンダートと申します」
「ありがとうございます、泊めて頂いて」
「気にしないで下さい。ここは、元は宿屋だったので部屋は余ってますから」
「…………」
「?」
「ハル?」
医師とやらから隠れる様にアキやユキの後ろに回った。
バン!
「どういうことだ先生!こんな時に素性の知れない奴らを引き入れるなんて正気か!」
また男が割り込んで来たな。
「落ち着いて、グロサムさん」
「これが落ち着いていられるか!町長!!まだ誰も見つかっておらんと言うのに!」
町長らしい初老の男の宥めに対し、怒り心頭そうなグロサムと呼ばれた男。
「だからこそです。この方達は各地で伝説や伝承を調べてらっしゃるとか。今回の件、何か手掛かりになることをご存知かもしれません」
「どこの馬の骨とも分からん奴らが、何を知ってると言うんだ!」
「この地で暮らす者では分からないことを」
「これ以上、何かあった後では遅いんだぞ!」
そう告げたグロサムという男は背を向ける。
「グ……グロサムさん!と……とにかくその人達を、夜外に出さんようにな先生!」
去っていく男を慌てて追い掛ける町長。
「すみません、紹介も出来ないで。今のが、町長とグロサムさん。グロサムさんはこの町の殆どの土地の所有者です」
この町の権力者、ね。
「大変な時にお邪魔してしまったみたいですねぇ。隣町で聞きましたーー。この『スピリット』の伝説の事とか」
「私も、あれは良くある只の御伽話だと思うんですが。まさか、本当に子供達がいなくなってしまうとは……手を尽くしているんですが、一人も見つからなくて。もう二十人になります」
「そんなに……」
「俺達を見て警戒するワケだ」
二十人もの子供が行方不明に……
「さっき、グロサムさん達に言ったように。些細なことでもいいんです。子供達を探す糸口があれば教えた下さい」
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