ツバサクロニクル
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「ここだよね」
「さっさと入ろうぜ」
黒鋼が城の門にある扉を押した。
「って、そのまま門、開けてもだめ……」
ギギィッ
「∑ああ!?」
「ふしぎふしぎー!お空が下にあるー♪」
門の先には逆さまになった空と町。
「だからこの城は秘術で守られてるんだって。黒みん、せっかちさんだねー」
「うるせー」
「……成程。門には空間が捻じ曲がる術が掛けられてんのか」
下手に入れば、空から真っ逆さまだな。
「この門だけじゃないよ。他の入り口も全部こんな感じでしょーー。そこで次元の魔女さんにもらったモノの出番だよーーー」
「シャララララ~」
「どうやって使うんだよ、それ。なんか、ドロだんごみたいだな」
「……ある意味泥団子か」
まぁ、そんな軽いモノじゃねぇけど。
「投げてーー!」
「∑」「∑え?」
「出来るだけ遠くへ投げて!あの城に届くくらい!!」
その言葉を聞いた小狼はモコナと何か相談をする。
「ああ!?」
「えへーなんの相談?」
と、小狼は其れを宙に放り……
ガッ ギュルルル
蹴り飛ばした。
ベシャ
「「おお」」
其れは結界となっていた術にぶつかって広がり、破壊する。
そして、俺達は城の中に入った。
「あー……成る程な」
「「「?」」」
「此処にも術が掛けられてるな」
「そ。多分無限回廊になってる」
入って直ぐの回廊。
俺達相手にそんな小細工効かねぇ。
「『ひゅーー』二人ともカッコいいー」
「今、口で『ひゅー』言っただろ。吹いてなかっただろ。前から思ってたけど」
「だって口笛吹けないんだもーん。えへへー」
「ひゅー♪」
「突破口見付けねぇと無駄になるぞ」
「……!ハル兄、具合でも……?」
「ん?」
「ハル、無理するなよ……此処は穢れがある」
俺達だけが認知出来ているだろう穢れ。
其の所為で、正直体が重い。
「……チッ」
思わず舌打ちした時、ファイが壁に触れた。
「……ここかなぁ」
「何かありましたか?」
「この手の魔法はね、一番魔力が強い場所に術の元があるもんなのーー」
「この向こうに領主がいるのか?」
「わからないけど。すごく強い力をこの向こうから感じる?かもーー。ささ、黒鋼っち、ストレス発散にぶっ壊して!」
たしたしと壁を叩くファイ。
「……魔力は使わねぇんじゃなかったのかよ」
「今のは魔力じゃなくてカンみたいなもんだから」
そう黒鋼にいつもの笑顔で返すファイを俺達は見詰める。
そして……
ドゴッ
黒鋼が壁を破壊した。
「あたりーー!」
破壊された先には広い空間が広がっている。
「誰かいます」
その奥には……
『よう来たな、虫けらどもめ』
妖しい雰囲気を持つ女性。
……人、では無いな。
「誰だ?てめぇ」
『たかだか百年程しか生きられぬ虫けら同然の人間達が口の利き方に気をつけよ。と、言いたいところだが、久しぶりの客だ。大目に見てやろう』
「何、言ってんだ?」
「……其れ、俺達にも言っているのか?」
アキが目を細めてそう言った。
その言葉を聞き、俺達を見た女性は一瞬その人とは異なる目が大きく瞠られる。
……やっぱ、そういう奴には気付かれちまうな。
「とりあえず、さっさと領主とかいううのの居所を吐け。面倒くせぇから」
「黒ぷん短気すぎだよぉ」
「短気で照れ屋さんなんだーかわいいーー」
「「短気で照れ屋さん」」
ついモコナの単語に女性から目を逸らして振り返った。
『面白い童達だ』
「ほめられちゃったー」
「ガキって言われたんだよ!」
んー……確かに俺達の場合は千年生きてやっと、て所だしな。
もし女性も俺達と同じタイプなら、黒鋼達は餓鬼だな。
「この城の中に捜し物があるかもしれないんです。領主が何処にいるか教えて頂けませんか」
『……良い目をしている』
小狼の真っ直ぐな瞳を女性は気に入ったらしい。
『しかし、その問いに答えることはできんな。それに、ここを通るわけにもいかぬ』
「えっと、それはーーオレ達を通さないためには、荒っぽいコトもしちゃおっかなーーって感じですかねぇ」
『その通り』
その直後、空間が変わる。
俺達は其々石柱の上に立っており、丸い……大きいシャボン玉の様な球が幾つも浮かんでいた。
「……幻か」
「……違うな」
『そう、秘術だ。幻は惑わせるだけだが、私の秘術は……ただ美しいだけだはないぞ』
「!」
球の一つが小狼の方に飛んでいく。
パン ジュウゥゥゥ
「……成程、此れが秘術か」
「アキ兄!」
「心配するな。溶けたのは服だけだ」
咄嗟にアキが小狼の前に出て代わりに左腕に球を受けた。
球は触れると同時に壊れ、液状となって左腕に掛かると……服を溶かす。
まぁ、この世界の服はゆったりとした物だから、腕に支障は無いみてぇで俺はそっと息を吐いた。
『私の秘術によって出来た傷はすべて現実のものだ』
「ってことは、大怪我するとーー」
『死ぬ』
一気に襲ってくる球。
一先ず其れを避けようと石柱間を跳ぶ。
「!!其処は駄目だ!!」
「チッ!!」
「え!?」
咄嗟に小狼が乗ろうとした石柱。
其れは本物で無い事に気付いて声を上げると同時に彼の腕を掴んで別の石柱の飛ばした。
ジュッ
「ハル!!」
代わりに俺が石柱に着地し、その石柱が消えて俺の足は下に広がっていた池の様な物に落ちる。
其れと同時に俺の足が溶け掛けた。
直ぐにアキが俺を引っ張った事で重度の火傷程度に済んだけどな。
そのまま俺達は風の聖霊術で空中に留まる。
『この池もこの珠と同じもので出来ている。そして、この中の目に見えるものすべてが本物とは限らない』
「……貴様」
再び飛んでくる珠。
「池に落ちたら溶けちまうってことかよ!」
「…………」
「「「!」」」
アキは俺達に迫って来る球を空気越しに珠に触れて、輝石化させた。
「ハル、足を見せろ」
「あ、ああ……」
空中で俺はアキに足の治癒を受ける。
「…………」
「……アキ、俺はそんなに気にしてねぇ。だから、やり過ぎんなよ」
「ああ、分かった」
本当に分かってんのかね……。
アキから感じるのは、明らかな怒り。
「……過保護」
「煩い」
「ハルくーん、アキくーん」
「「?」」
ファイの声に振り返ると、彼と黒鋼の手には長い黒い棒が握られていた。
ああ、電灯のヤツか。
直後、小狼が黒鋼の持っていた棒に乗り、天井まで飛ばして貰い……天井を蹴りで破壊して上に行く。
「二人ともカッコいいーー『ひゅーー』」
「だからやめろ💢💢」
「二人も小狼君と行きなよ」
「ハル、行け。俺は殴り返してから行く」
「……分かった」
俺は小狼の後に続く事にした。
「おっと」
「ハル兄!」
「ハル、足、痛い?」
「いや、痛くはねぇさ」
着地すると思わずよろけてしまう。
そんな俺を小狼が支えてくれた。
「だったら、二度と立ち上がれないようにしてやる」
そんな俺達の前に、あのバカ息子がやって来る。
「今度はこの手で葬ってくれる!!」
おお、急に腕がムキムキになりやがったな。
「あの人から不思議な感じがすごく強くする!」
小狼にくっ付いているモコナがそう言った。
「秘術、か」
「そうだ!この体には、ここ高麗国蓮姫の領主である親父の秘術が施されている!」
「……モコナ、離れててくれるか?ハル兄、モコナと一緒に離れててくれ」
「小狼……」
「……おう、分かった」
モコナを抱えて小狼から少し離れる。
「生意気な小僧め!!」
小狼が向かってくる拳を避けた。
と、その余波で壁が凹む。
「……凹むだけかぁ」
「小狼大丈夫かな?」
「まぁ、いざという時は助けてやりゃいい」
……にしても、領主に近付いてる所為か、穢れが強くなってやがるな。
此処からは小狼のサポートに入るべきか。
小狼は軽い身のこなしでバカ息子の攻撃を避け、一撃を入れた。
が、その際に足を掴まれてぶん投げられる。
「小狼ーー!!」
「…………」
「なんだ!!お前の力はこの程度か!?やっぱり親父の秘術は無敵だ!!」
随分と喚くじゃねぇか。
「……獅子戦吼」
「ぎゃっ!?」
バカ息子を吹っ飛ばし、壁に体を打ち付けた小狼の前に立った。
「小狼!小狼!」
「……酷い怪我だな。痛いだろう。だが……止まらねぇんだろ?」
「……ああ」
「この……小僧を始末したら二度と俺様に逆らえん様にしてやる!」
俺の背後に迫るバカ息子。
「痛くても、どんな怪我をしていようが関係ない」
小狼が立ち上がる。
「やると決めたことはやる。それだけだ」
そして、バカ息子を蹴り飛ばして倒した。
「やると決めた事はやる。其が小狼の流儀か」
「ハル兄」
「ちょっと待ってろ。命を育む女神の包容……キュア」
「ありがとう」
小狼の傷を癒し、俺達は奥へと進む。
「ここか、モコナ」
「うん。ここ、不思議な力が一番強い。でも、なんかくらくらするの」
「…………」
この扉の先が一番穢れが強いな。
ああ、面倒くせぇ。
ギギィィイッ
小狼が扉を開けた。
「さくら!春香!!」
「……随分悪趣味じゃねぇか」
天井近く、球体に閉じ込められているサクラと春香の姿が。
視線を正面に向けると、ひび割れた珠を持つ領主の姿もある。
そのひび割れた珠の中に、サクラの羽根があった。
「サクラの羽根だ!!」
「ビンゴ」
「わしよ秘術を破るとは、やはりおまえたち暗行御吏か!」
「………降ろせ」
……?
小狼、珍しく怒ってんのか?
「政府にわしのことが伝わったのか。いや、そうだとしてもこれがあれば暗行御吏を倒すことも可能……」
「二人を降ろせ」
領主の目の前で蹴りを寸止めする小狼。
チカッ カッ
直後、珠が光り……小狼が吹き飛ばされる。
「小狼!!」
其れを俺が受け止めた。
「落ち着け、小狼」
「わ、わしに指一本でも触れてみろ!あの二人の命はないぞ!!」
「はっ、よく俺の前でそんなデマカセ言えんなぁ」
「な……何を言っている!あれは確かに……!」
「俺はアレより上等な幻術を見て来た。其こそ現実だとしか思えねぇ程のな」
「「!」」
俺は先程の女性が出していた珠を真似して出す。
「こうして写せるくらいに見て来たんだ。そんな俺の目を誤魔化せると思ってんのか?」
特に、俺は目がいいんだからな。
小狼と共に愚かな領主を見た。
ザザザザザ
「あ?」
領主の前に長い棒を持った男達が出てきた。
「この町の者達だ!わしの秘術で思うままに動く!この者達を倒せるか!小僧共!!」
「本当にお前は悪趣味だな」
小狼の前に出る。
そして……
「俺はお前みたいなのが大嫌いなんだよ」
「……っ……!!」
威圧をした。
「人質に取ったつもりか?」
「き、貴様一体……」
「……
「!?」
床から聖隷術で生み出された鎖が出現し、町の人々に絡み付く。
「さぁ、次はどうするんだ?」
「ッ……!!」
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