ツバサクロニクル
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ドオオン
物凄い量の水が小狼に向かった。
その衝撃は城を揺らし、プリメーラと正義を掴んでしゃがむ。
「小狼君ーー!!」
小狼の姿が消えた。
「大変だ!小狼君が流された!探さないと!」
「小狼いるよー」
「え?!」
どうやら炎で水を蒸発させて自分の身を護ったらしい。
「……すごい………」
「正義?」
へたり込む正義。
「外国から来たって言ってたのに……もう、あんなに巧断を使いこなしてる。僕も、強くなりたい。あんな風に、強く!」
バキバキ
「!」
「危ない!!」
「きゃあ!」
衝撃で屋根が壊れて落ちて来る。
其れに咄嗟に彼等を庇おうとした。
「だめだ!一人で逃げちゃ!守らなきゃ!!強くなるんだーー!!!」
その時、強い光が放たれ……
「…………」
ズォォォオ
正義の巧断が巨大化し、瓦礫から俺達を護る。
その姿に、誰よりも驚いているのは正義だ。
めきょ
「あった!羽根!!この巧断の中!!」
確かに彼の巧断の中には、羽根の気配を感じた。
「わーー」
「!正義!」
「その子を放しなさいよーっ!」
巨大化した巧断は瓦礫を捨てると正義だけを手の中に連れて行く。
直後、口に光が集まり……
キュアッ
光線が放たれた。
「っ」
「きゃあああ!!」
その衝撃で更に足場が崩れて、俺達の体は宙に放たれる。
がしっ
「っと、悪い」
「笙悟君!」
そんな俺をアキが、プリメーラを巧断に乗った笙悟が受け止めた。
直ぐに俺は体勢を直し、アキと同じ様に空中に立つ。
「えーーん、こわかったよーーぅ!」
「よしよし。さすがに俺もびびったよ。つか、でかいよ。あの巧断」
そんなやり取りを見た後、巨大化した巧断を見た。
彼は暴走しているのか、無差別に光線を放っている。
「…………」
俺は巨大化した巧断の元へと向かった。
「それくらいにしておけ」
少しだけ聖隷の力を込めて巧断に告げる。
が、一瞬俺の言葉に反応したが、暴走は止まらなかった。
……戦闘をして倒さないと駄目か。
ドン ドドン
「!」
「小狼君!!」
巧断の足元で爆発が起き、それに巧断がグラつき足を止める。
「おれには探してるものがあるって言いましたよね。今、君の巧断の中にそれがあるんです」
「こ……これですか!?」
正義が指した先には光るものがあった。
「それを取り戻したいんです」
「でも!今、僕の巧断は全然、言うこと聞いてくれないんです!近寄ったら小狼君に怪我を……!!」
バッ ズン
聞き終わる前に小狼は巧断へと突っ込んだ。
グワッ ゴオオオオオオオ
「僕の巧断から火が!!」
巧断から拒絶する様に放たれた炎が小狼を襲う。
「やめろー!!小狼君が!!!」
ジュゥゥゥゥゥ
「小狼君が……死んじゃうよ!!」
「ったく」
「ハルさん!?」
「!!」
小狼の元まで行き、彼を護るように覆った。
「ハル兄、危な…「問題ねぇ。地水火風は俺を傷付けねぇ」…!」
「火が……避けてる」
炎は俺達を避けていく。
「癒しの力よ……ヒール!」
「!」
「サポートする。取れ」
「はい!」
小狼の傷を癒せば、羽根へと向かう手に力が込められた。
「熱っ!!」
「!」
「正義君!!」
正義の声に彼を見れば、胸を押さえて蹲っている。
そうか、巧断のダメージは本人にいくんだった……!
「取…って、下さ…い!僕の巧断の中にあるものが小狼君の探していたものだったら、ちゃんと渡したい……!だから熱くても平気です!!」
「全く、何奴も此奴も世話の焼けるものだ」
「!」
正義の側にアキが降り立った。
暴走状態でも俺達の事は警戒してねぇらしいな。
アキが右手で正義に触れ、左手で赤い輝石を創る。
「あれ、熱いのが……」
「お前越しにお前が感じてる熱に
「「!」」
「やっぱりチート」
「まぁ、完全に消し去る事は出来ない。其でも負担は減る筈だ」
俺達は小狼を見た。
「「取れ、小狼」」
「取って下さいーーー!!!」
そして、遂に小狼の手が光に届く。
光を掴んで引き抜くと、巧断の大きさが元に戻っていった。
そんな巧断と正義をアキが、小狼を俺が掴んで地上に降り立つ。
ポッポッ ザアアァ
「笙悟さんの巧断……」
あのエイ型のが水を降らせ、火を消した。
「さくらの羽根……さくらの記憶……ひとつ、取り戻した……」
羽根を大事そうに抱える小狼の頭を撫でる。
「俺はもう一仕事するか」
「え?」
一度目を閉じ、聖隷化した。
「雰囲気が……」
「変わった……」
「ああ、巧断の関係でこの状態でも認知出来んのか」
聖隷の状態でも俺の事は感知出来るらしい。
もう一度小狼の頭を撫で、飛び立つ。
「俺はもう一つやる事あるから。お前は早く其れを届けてやれ」
「……はい!」
俺の言葉に小狼は駆け出した。
離れた所に居る黒鋼とファイに視線を向ければ、彼等は小狼の後を追う。
「俺は時の聖隷なんでな」
「時……?」
「タイム・エセンティア」
さて、被害を無かった事にしようか。
「「小狼?」」
少し遅れて下宿に戻ると、雨の中……濡れるのも構わず小狼が立っていた。
小狼の足元には炎の狼が擦り寄り、彼を雨から護るように黒鋼とファイの巧断が羽を広げている。
小狼は俯いていて、表情は伺えない状態だ。
「…………」
小狼を抱き寄せ、背中を撫でた。
アキも頭を撫でる。
「「──流した涙はいつの日か……♪」」
翌日。
俺達は正義とお好み焼き屋へとやって来た。
因みにサクラは昨日目覚めたが、まだ眠そうという事で下宿に残っている。
「正義君、ほんとうに有り難うございました」
「僕も……巧断も、ずっと弱いままだったから」
流石に同じ席に全員は座れねぇから、俺とアキは小狼と正義の後ろの席に座った。
「だから……だから……!ちゃんと渡せて良かったです!!」
泣きそうになりながら言う正義。
「弱くなんかないです。戦うことだけが強さじゃない。誰かのために一生懸命になれることも、立派な強さです」
「有り難う、ございます!」
小狼に優しく言われ、遂に正義の目から涙が零れる。
「よう」
「笙悟さん!」
「ん?」
「えっ?!」
声に視線を向ければ、笙悟が立っていた。
「うちのチームの情報網も捨てたもんじゃねぇな。あ、ここちょっと詰めてくれな」
笙悟が話している間にも笙悟のチームがわらわらと集まってくる。
俺達の席もあっという間に埋まった。
「あ、俺も豚モダン。んで、虎コーラ」
「はーい。豚モダン一枚よろしく王様!!」
「「王様?」」
「だからヤメロって」
眼鏡の青年が黒髪の青年にそう声を掛ける。
小狼が焦ってるから、彼が原因か?
「ケガとか大丈夫か?」
「はい。ハル兄に治してもらいましたから」
「凄ぇな、ハル兄」
「俺よりアキの方がチートだぞ」
「いやいや、十分チートだから。被害もなかった事にしたし」
「え?」
「笙悟」
口元に指を当てて、秘密のジェスチャーをした。
「お前……それ、顔自覚してやった方がいいぞ」
「あ?」
「俺が勘違いさせない」
「「僕達もいますから」」
「なるほど」
……ルアは俺を護るように創られたから仕方ねぇとして、アキは過保護なんだよな。
「戦いの途中ですみませんでした」
「いや、あの状態じゃ仕方ねぇだろ。それに、あのバトルは完全に俺の負けだ」
笙悟の言葉に彼のチームからブーイングが出る。
どうやら、どっちが勝つか賭けてたらしい。
其れから、食事を終えて一緒に店を出た。
「いつまで阪神共和国にいるんだ?」
「もう次の世界……いえ、国に行かなければならないんです」
「そっか」
……モコナの奴、何かやらかしたのか?
何か、黒鋼に虐められてんだけど。
「バトルだけじゃなく、あちこち案内してやったりしたかったんだけどな。プリメーラも残念がるな」
小狼と笙悟が握手を交わす。
その後、小狼は正義とも握手を交わした。
「また、この国に来たら会いに来ます。必ず」
「元気でーーー!!」
そして、彼等と別れる。
少し歩くと、後ろからわっと賑やかな声がして振り返った。
其処ではゴーグルを着けて泣く正義の頭を笙悟がわしゃわしゃと撫でられている。
……彼奴はもう大丈夫そうだな。
「………………買うか?」
「…………」
黒鋼が漫画雑誌を見詰めていた為、購入した。
其れから下宿に戻り、サクラと合流する。
「もう行くんか」
「はい」
「まだまだ、わいとハニーの愛のコラボ料理を堪能させてへんのにーー」
空汰の惚気を無視し、嵐に財布を返した。
サクラを見れば、起きているがボーッとしている。
「大丈夫ーー?」
「まだ、ちょっと眠いだけだから」
そんなサクラの様子を見ていた小狼の視線が下に向きかけた。
「下を向くな」
その前に黒鋼が彼を見ないまま言葉を掛ける。
「やらなきゃならねぇことがあるんなら、前だけ見てろ」
「……はい」
ファサ
モコナが翼を出した。
「ほんとうに有り難うございました」
「なんの!気にするこたぁない」
「次の世界でもサクラさんの羽根が見つかりますように」
そう言葉を交わし、モコナへと吸い込まれる。
そして……俺達は阪神共和国を後にした。
end,