ツバサクロニクル
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ビルの上。
其処に立つゴーグルにスカーフを着けた青年達と、橋の上に立つ帽子とツナギの男達。
「今度こそお前ら、ぶっ飛ばしてこの界隈は俺達がもらう!」
騒ぐツナギに対して、ゴーグルの方は立てた親指を下に向けただけだった。
「かぁっこいー」
「またナワバリ争いだー!」
「このヤロー!特級の巧断憑けてるからって、いい気になってんじゃねえぞ!」
巧断、ね。
そりゃ……色んな奴から感じる聖隷に近い気配の奴なんだろうな。
ゴーグルの青年が手を上げると、ゴーグルとツナギの奴等の体から様々な生き物が出てくる。
「え!?」
その生き物が衝撃波の様な物を出し、ぶつけ合った。
「あれが巧断か」
「モコナが歩いてても驚かれないわけだーー」
「……堅守なる守護を……バリアー!」
「「!」」
一部の衝撃波が周りにぶつかり、其れに逃げ惑う人を見て、バリアーで護る。
チッ……面倒な場面に出会した。
そして、互いのリーダーが巧断を出し会い、ゴーグルのリーダーが出したエイの姿をした巧断が水を放ち……
「うわあああ!」
ツナギの男達を押し流す。
それと同時に、一人の少年が転び……
「危ない!!」
「っ待て!」
その少年ともう一人の子供に水が迫るのを見て、小狼が飛び出した。
そして、少年達を庇うと……小狼の背から放たれた炎を纏った狼が水を蒸発させる。
「おまえの巧断も特級らしいな」
ゴーグルの青年が小狼を見ながら言った。
「炎を操る巧断か。俺は水でそっちは炎。おもしれぇ」
ドオ
再び水が放たれ、其れを小狼から出た狼の炎が防ぐ。
「俺は浅黄笙悟だ。おまえは?」
「……小狼」
「おまえ、気に入った」
「……いい加減にしろ」
「!」
俺は小狼の前に立った。
すると……
「「「!」」」
炎の狼が俺に擦り寄って来る。
そんな狼を撫でていると……
「え」
「あ」
「お前もか?」
エイの方まで俺に寄って来てから、その体を撫でた。
狼の方は暖かくて、エイの方は冷たいな。
「おまえ……」
その時、サイレンの音がする。
「笙悟!警察だ!!」
「ふーーっ。今からいいトコだったのによ。フードのおまえも、次に会った時名前教えろよ!」
「……おう?」
「ヤローども!散れ!!」
「「「「FOWOOO!」」」」
「次、会った時が楽しみだぜ!」
「まてー!」
ゴーグルの奴等が散っていった。
ボッ
「!?」
狼は炎となり、小狼の体に入っていく。
「……おれの中に………入った?」
「すごかったねーー。さっきのは小狼君が出したのかなーー?」
「今のも巧断か?」
「良く分からないんです。でも、急に熱くなって……」
「ハルのは何時もの体質か」
「「「体質?」」」
「ハルは人以外のに好かれるという、魂の体質なんでな」
「?何故撫でる」
アキが俺の頭を撫でて来た。
その際にフードが落ちる。
「で、さっきの少年は?」
「あ!怪我ないですか!?」
例の小狼が庇った少年はこくこくと頷いた。
「よかった。君もだいじょう……」
フッ
子供の方は頭を下げた後、少年の体に消える。
「ええ?!消えた!?」
「「巧断だからだろう」」
「あーー、あの子も巧断なんだー」
「なんでもアリだな」
聖隷も似た様なもんだけどな。
「そういえば、うちの巧断みたいのはどこ行ったのかなぁ」
「∑ハッ、モコナ!」
黒鋼から落ちたモコナの姿が無くなっていた。
ルアはソルと一緒にアキが預かっていて、今俺に渡されている。
「あーーー。大方、その辺で踏みつぶされてんじゃねぇのか?まんじゅうみたいによ」
「いやーー違うみたいだよーー」
ファイが指差した方を見ると……
「モコナモテモテ🖤」
「かわいーー」
「ふかふかーー」
「いやされるー」
女子高生にモテていた。
其れから何とか女子高生と別れる。
「モコナはどこにいたのーーー?」
「黒鋼の上にいた。そしたら落とされた」
見てたから知ってる。
「聞ーて!聞ーて!そう!モコナさっきこんな風になってたのにーーーー!だれも気づいてくれなかったーーっ」
「さくらの羽根が近くにあるのか!?」
モコナは目をめきょと大きくした。
「さっきはあった。でも、今は感じない」
「誰が持ってたか分かったか!?」
「分からなかった」
「……そう……か」
沈んだ様子を見せる小狼に、モコナもしょんぼりとする。
「うーん。さっき、ここにいた誰かって条件だと、ちょっと難しいなぁ。多すぎるし」
「でも近くの誰かが持ってるって分かっただけでも、良かったです。また何か分かったら教えてくれ」
「おう!モコナがんばる!」
「持ってる……?」
「ハル。感じた事は言え」
「大した事じゃねぇよ。何となく違うって感じただけだ」
言いながら振り返ると、少年がまだ居た。
「どうした?まだ用あんのか?」
「あ、はい!あの、さっきは本当にありがとうございました!僕、斉藤正義といいます。お、お礼を何かさせて下さい!」
「いや、おれは何もしてないし」
「でもでも!」
「お昼ゴハン食べたい!おいしいとこで!!」
と、小狼の頭に乗ったモコナが少年に言う。
「え?」
「教えて!」
「はいっ」
俺達は昼飯を食べに行った小狼達と一旦別行動した。
「どうやら、同じ世界に居れば同行と見なされるみたいだな」
「おう……つーか、別に付き合わなくても良かったんだけど?」
「付き合うに決まってるだろう」
テキトーに街の中を歩く。
「多分俺達に巧断が憑かなかったのは……」
「半分は巧断寄りだからだろうな」
「「まぁ、ルアとソルが巧断だと思われてるだろうけど」」
「「でしょうね」」
流れる景色は平穏そのもの。
「……元気にしてんのかね、彼奴も」
「そうだといいな」
夢の中で出会った、最初の友人。
色んな世界を巡れば……現実で再会出来るかもしれないな。
其れから暫く歩き回り、小狼達と合流する。
「「!」」
どうやら小狼……つーより、黒鋼がモヒカン連中に絡まれて戦闘中らしい。
直後、黒鋼の体から龍が出て、更に剣の姿となって黒鋼の手に握られた。
「「おお、剣になった」」
「!ハルさん、アキさん」
「「呼び捨てでいい。なんなら兄でも構わない」」
「…………」
「あ、先ほどの……」
小狼達の後ろに並びながら黒鋼の戦いを見る。
「そ……それがおまえの巧断か!どうせ、見かけ倒しだろ!こっちは、次の必殺技だぞ!
相手の巧断らしいのが幾つもの刺の刃を出して、黒鋼へと向かっていった。
……兜蟹みてぇな巧断になんつー技名付けてんだよ。
「どんだけ体が硬かろうが、刃物突き出してようがな。エビやカニには継ぎ目があんだよ」
跳躍した黒鋼がその継ぎ目へと剣を突き立てる。
「破魔・竜王刃」
「ぐああああああ!!」
技を喰らった兜蟹が消えると同時に、モヒカンが倒れ込んだ。
成る程、巧断のダメージは本体にも影響すんのか。
「だいじょうぶっすか!?」
「しっかり!」
「も……もう、チームつくってんじゃねぇか。おまえ『シャオラン』のチームなんだろ!」
モヒカンは息を切らし、黒鋼を指しながら言う。
チーム?
「誰の傘下にも入らねぇよ。俺ぁ生涯、ただ一人にしか仕えねぇ。知世姫にしかな」
……唯一の人に仕える、か。
其れから俺達は少年と別れ、空汰の下宿屋へと戻った。
「ただいま戻りました」
「ただいまー」
「ただいまー」
「お帰りなさい」
サクラの側に居た嵐が俺達を迎える。
「何か手がかりはありましたか?」
「はい」
と、その時だだだという音を立てて空ちゃんも戻ってきた。
「おう、みんな揃ってんな!どうやった?と、その前に。ハニー!おかえりのチューを♡」
嵐に駆け寄り、頬を差し出す空ちゃん。
そんな彼に拳を握る嵐。
「そうか。気配はしたけど消えてしもたか。で、ピンチの時に小狼の中から炎の獣みたいなんが現れたと」
「タンコブすごーい嵐強いーー」
言ってやるな、モコナ。
確かに嵐に殴られて頭にデカイたん瘤出来てっけど。
「はい」
「やっぱりアレって小狼君の巧断なのかなーー」
「おう。それもかなりの大物やぞ。黒鋼に憑いとるんもな」
「何故分かる?」
「あのな。わいが歴史に興味を持ったんは、巧断がきっかけなんや。わいは、巧断は、この国の神みたいなもんやないかと思とる。この阪神共和国に昔から伝わる神話みたいなもんでな。この国には八百万の神がおるっちゅうんや」
「やおよろず」
「八百万って書くんや」
八百万か……確かに一人一人に憑いてるなら、そんだけ沢山いそうだな。
「800万も神様がいるんだーー」
「神様いっぱーい」
「いや、もっとや。色んな物の数、様々な現象と同じくらい神様がおる言うんやから。八百万っちゅうんはいっぱいちゅう意味やからな」
「その神話の神が今、巧断と呼ばれるものだと」
「神様と共存してるんだーー。すごいねぇ」
「この国の神は、この国の人達を一人ずつ守ってるんですね」
「小狼もそう思うか!」
小狼の言葉に空汰がバッと立ち上がりかける。
「わいも、ずっとそう考えとった。巧断、つまり神はこの国に住んでるわいらを、ごっつう好きでいてくれるんやなぁってな」
……人が好きな神様か。
気持ちは分かる……人というのは、愚かで脆くて……強くて優しくて、残酷な生き物だからな。
「一人の例外もなく巧断は憑く。この国のヤツ全員一人残らず神様が守ってくれとる。まあ、阪神共和国の国民は血沸き肉踊るモードになるヤツが多いけど。負けず嫌いやし、よう口はまわるし。ボケたらツっこむの基本やし。我が国の野球チームが勝ったら大騒ぎやし。河飛び込んだりな」
「「河飛び込むんだ」」
何で河飛び込むんだ?
「けどな。なかなか、ええ国やと思とる。そやから、この国でサクラちゃんの羽根を探すんは。他の戦争しとる国や悪いヤツしかおらんような国よりはちょっとはマシなんちゃうかなってな」
「………はい」
サクラの髪を撫でる小狼。
……本当にサクラが大切なんだな。
「羽根の波動を感知してたのに、わからなくなったと言っていましたね」
「うん」しょぼん…
「その場にあったり、誰かが只、持っているだけなら。一度、感じたものを辿れないということはないでしょう」
嵐の言葉にハッとなった。
あー、その可能性もあんのか……。
「現れたり消えたりするものに、取り込まれているのでは?」
「巧断、ですか!?」
「なるほどーー。確かに巧断なら出たり、消えたりするから」
「巧断が消えりゃ波動も消えるな」
「巧断の中に、さくらの羽根が……」
あんな力のある物が取り込まれたっつーなら、厄介だぞ。
「でも、誰の巧断の中にあるのかわからないよねぇ」
「あの時、巧断いっぱいいたー」
「ナワバリ争いしてたもんねぇ」
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