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「「「「「クダン?」」」」」
不思議そうに言われた言葉に、俺達も首を傾げた。
「知らんのか!?」
「「異世界産だからな」」
「そっかーー。おまえさんら、異世界から来たから分からんねんなー」
……流石、次元の魔女とやらと関わりのある奴だ。
異世界から来たという事に柔軟だな。
「この世界のもにはな、必ず巧断が憑くんや。漢字はこう書く」
ホワイトボードに書かれた“巧断”の文字。
「あー、なるほど」
「あはははは。全然、わからないーー」
「モコナ読めるーー!」
「すごいねぇ、モコナ」
「えへへー」
「小狼たちは?」
「うん、なんとか」
「「経験上読める」」
俺達の故郷の文字じゃねぇが、今まで関わった奴の中にこの字を使ってたからな。
「ふむふむ。黒鋼と小狼、それに双子の世界は漢字圏やったんかな。んで、ファイは違うと。けど聞いたり、しゃべったり言葉は通じるから不思議やな」
「あははははは」
……確かにおかしいな。
俺達の場合はどの世界に行っても、問題ねぇ様に細工してるけど……何で言語が通じてんだ?
「で、巧断ってのはどういう代物なんだ?『憑く』っつったよな、さっき」
「例え異世界の者だとしても、この世界に来たのならば必ず巧断は憑きます」
初めて嵐が長く喋った。
「サクラさんとお呼びしてもよろしいですか?」
「……はい」
嵐はサクラの枕元に座る。
「サクラさんの記憶のかけらが何処にあるのか分かりませんが、もし、誰かの手に渡っているとしたら……争いになるかもしれません」
嵐の言葉に小狼が目を瞠った。
確かに、あの羽根から凄ぇ力を感じた……力が欲しい奴なら喉から手が出る品物だろうな。
「今、貴方たち……双子さん以外は戦う力を失っていますね」
その言葉に表情こそ変えねぇが、ファイと黒鋼が反応する。
「どうして、そうだと?」
「うちの
空ちゃんの言葉に嵐を見詰める小狼。
言われてみりゃ、嵐は不思議な雰囲気を持ってんな。
「ま。今はわいと結婚したから引退したけどな。巫女さん姿はそりゃ神々しかったでーーもえもえや~」
……誉め言葉は無視すんだな。
何時もこんな感じなのか。
「てへっ。実はーー次元の魔女さんに魔力の元を渡しちゃいましてー」
「「?」」
「俺の刀をあのアマーー💢」
……ファイは隠し事が好きみてぇだな。
黒鋼は刀を取られたのか。
ファイや黒鋼を見た後、嵐は小狼を見た。
「おれがあの人に渡したものは力じゃありません。魔力や武器は最初からおれにはないから」
「やっぱり貴方は幸運なのかもしれませんね」
「え?」
「この世界には巧断がいる。もし争いになっても巧断がその手立てになる」
「巧断って戦うためのものなんですか」
「何に使うか、どう使うかはそいつ次第や」
小狼の言葉に空汰は笑顔で言う。
「百聞は一見にしかず。巧断がどんなもんなんかは、自分の目で、身で確かめたらええ」
自分の目でなぁ。
俺達、ちょっと特殊なんだけど……そんでも憑いてんのかね。
「さて、この国のだいたいの説明は終わったな。で」
「ん?」
「どうや、この世界にサクラちゃんの羽根はありそうか」
皆の視線がモコナに視線が集まった。
「……ある。まだ、ずっと遠いけどこの国にある」
目を閉じたモコナがそう告げる。
「探すか、羽根を」
「はい!」
真っ直ぐ瞳で小狼は答えた。
「兄ちゃんらも同じ意見か?」
「「一先ずは」」
「とりあえずーー」
「移動したいって言や、するのかよ。その白いのは」
「しない。モコナ、羽根がみつかるまでここにいる」
モコナの返答にムスッとして目を逸らす黒鋼。
「ありがとう、モコナ」
「よっしゃ。んじゃ、この世界におるうちはわいが面倒みたる!侑子さんには借りがあるさかいな」
「なー」と言いながら空ちゃんが手を握ると、嵐の頬が赤く染める。
「ここは下宿や。部屋はある。次の世界へ行くまで
「ありがとうございます」
「もう夜の十二時過ぎとる。そろそろ寝んとな。部屋案内するで。おっと、双子、ファイと黒鋼はそれぞれ同室な」
「「分かった」」
「はーい」
「なんだとー!?💢」
騒ぐ黒鋼に俺達は耳を塞いだ。
「なんでこんな得体がしれねぇやつと!」
「得体は知れてるよー。名乗ったでしょー」
「モコナも名乗ったー」
「てめぇはさらに得体がしれねぇっ」
「「どの部屋だ?」」
「双子はあの部屋な」
空ちゃんに部屋の場所を聞いて、さっさとその部屋に入る。
『『…………』』
幼い姿の俺が、見知らぬ少年と対面していた。
少年の目の下には薄っすらと隈が出来ている。
『……何かあったか?』
『……父様、が……』
ポロポロと流れる涙に触れた。
『父様……何故……謀反なんて』
『……父親が、か』
『何で、父様……』
『どうしたんだ?』
『!』
振り返ればアキが不思議そうに立っている。
そして、彼の目が泣いている少年に向けられた。
『……何があった?』
其れから二人で少年を抱き締めたりし、慰め……漸く泣き止んだ少年の頭を撫でる。
『……ありがとう。あの、名前……』
『俺は──』
「懐かしい夢だな」
「小さい頃の夢、だな」
……忘れていた。
俺が聖主になる前に夢で出会った少年。
永い年月の果てに忘れてしまったが……
「確か、名前は……」
その後、俺達は小狼達と合流して外に出る。
「つうわけで、部屋ん中でじっとしとってもしゃあない。サクラちゃんの記憶の羽根を早よ探すためにも。この辺、探索してみいや」
「はーい」
「はい」
「…………」
「「ああ」」
「「承知致しました」」
空ちゃんの言葉に俺達は各々、ルアとソルを撫でながら答えた。
「おっと!わいはそろそろ出かける時間や。先生が遅刻したら、しゃれにならんでー」
空ちゃんも仕事か。
「歩いてみたら昨日、言うとった巧断が何かも分かるはずやで」
「はい」
答えた後、小狼はサクラが居る部屋を見上げる。
「サクラさんは、私が側にいますから」
「……はい」
「その白いのも連れていくのかよ」
「白いのじゃないーーモコナーー!」
「来んな!」
黒鋼に飛び付くモコナ。
ルアとソルは俺達の腕の中で大人しくしていた。
「モコナ、連れてかな羽根が近くにあっても分からんからな。大丈夫、だーれもモコナも、それにルアとソルをとがめたりはせん。つうか、この世界ではありがちな光景やさかいな」
「え?」
「「?」」
ありがちな光景なのか?
まぁ、其れならルア達が人形のフリしなくていいから助かるんだけど。
「うし!んじゃこれ!」
空ちゃんは小狼にカエルのがま口財布を渡す。
「お昼御飯代入ってるさかい、五人で仲良う食べや。ま、朝食べたわいのハニーのメシほどうまいもんはないけどなー」
「「惚気はもういい」」
「…………」
「なんで、そのガキに渡すんだよ」
「一番しっかりしてそうやから!」
「どういう意味だよ!!」
「あはははははは」
いい笑顔の空ちゃんに嵐が頷いていた。
そして、俺達は街へと繰り出す。
「にぎやかだねー」
「ひといっぱーい!」
「なんだあの妙ちくりんなモンは!?」
前を歩く彼等から少し離れてついて行った。
……違う世界で会った子の話に出てきた様な世界だな。
「小狼君はこういうの見たことあるー?」
「ないです」
「黒たんはーー?」
「ねぇよ!んでもって妙な呼び方するな!!」
「そっちの二人はー?」
「……話には聞いた事あるけど、見るのは初めてだな」
「同じく」
俺達は視線を交わす。
やっぱり、此奴……
と、擦れ違った若い女性がモコナやルア達を見て笑った。
「笑われてっぞ、おめぇら」
「てへ。モコナもてもてっ!」
「モテてねぇよっ!」
「「俺達は好きだぞ」」
「「私達もです!」」
俺達がルア達を顔の所まで抱き上げれば、彼等も抱き付いてくる。
可愛いな。
「らっしゃい!お、兄ちゃんたち。リンゴ、買っていかねぇかい!?」
「え?」
店のおっちゃんが持つ林檎を見て不思議そうな顔をする小狼。
「それ、リンゴですか?」
「これがリンゴ以外の何だっちゅうんだ!」
「小狼君の世界じゃこういうのじゃなかったーー?」
「形はこうなんですけど、色がもっと薄い黄色で……」
「ん?そりゃ、梨だろ」
「いえ。ナシはもっと赤くてヘタが上にあって……」
「それ、ラキの実でしょーー?」
成る程、同じ物でもちょっと違うんか。
「で!いるのか!いらんのか!」ずい
「うお!」
「わあっ」
「∑」
「すぱっとな!」
「いるーー!!」
「まいど!!」
「え!?」
モコナの言葉に財布を出そうとしたら、アキにその手を掴まれた。
「すまない、海外から来たもので。リンゴを六……いや、八くれ」
「まいど!」
「アキ、俺も……」
「いいからいいから」
金は空ちゃんに貰ったものではなく、昨晩の内に換金しておいた物で払う。
それからテキトーな所でリンゴを食べ始めた。
「おいしいねーリンゴ」
「はい。こんな味なんだ」
「けど。ほんとに、全然違う文化圏から来たんだねぇ。オレたち」
ルアとソルに半分にしたリンゴを渡し、自分も食べる。
うん、美味しい。
「そいえば、まだ聞いてなかったね。小狼君はどうやって、あの次元の魔女のところへ来たのかなー。魔力とかないって言ってたよねー」
「おれがいた国の神官様に送って頂いたんです」
「すごいねー、その神官さん。一人でもたいへんなのに、二人も異世界へ同時に送るなんて」
……まぁ、普通は異世界への移動は力を相当消耗するし。
俺だって力がそっち寄りとはいえ、連続は厳しいからな。
「黒りんはーー?」
「だからそれヤメろ!」
あ、モコナがリンゴ丸飲みした。
つーか、アキはリンゴ食べずに何してんだ?
「うちの国の姫に飛ばされたんだよ!無理矢理」
「悪いことして叱られたんだー?あははは」
「しかられんぼだー」
「うるせーっての!!指さすな!」
……さっきから、小狼戸惑ってんな。
「てめえこそ、どうなんだよ!あと双子の方も」
「オレ?オレは自分であそこへ行ったんだよーー」
「自力」
「同行」
「ああ?!」
またモコナが黒鋼に飛び付き、肩に乗る。
「だったら、あの魔女頼るこたねぇじゃねぇか。自分でなんとか出来るだろ。何やってんだ!」
「えへへー。無理だよー。オレの魔力総動員しても一回、他の世界に渡るだけで精一杯だもん。小狼君を送ったひとも、黒ちんを送ったひとも、物凄い魔力の持ち主だよ」
「だからその呼び方やめろ!」
あ、モコナが落ちた。
「でも、持てるすべての力を使っても。おそらく、異世界へ誰かを渡せるのは一度きり。だから、神官さんは小狼君を魔女さんのところに送ったんたよ。サクラちゃんの記憶の
……あの次元の魔女は……
「!」
考えていると、飾り切りされたリンゴが差し出される。
「……流石アキ」
「ありがとう」
「え、わぁ凄いですね」
「あ、本当だぁ」
「……」
飾り切りしてたのか……差し出されたのはいいが、食べるのが勿体無……
「きゃあああ!」
その時、悲鳴が響き渡った。