ツイステッドワンダーランド
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「おい、テメェ。人の制服に鼻水つけておいて詫びもナシかよ!」
……言ってる側から喧嘩か?
「「!」」
喧噪の現場を見た途端、その側に居る存在に俺達は駆け出す。
「「魔神拳!」」
「「「ぎゃっ!」」」
取りあえず絡んでいる奴等を吹っ飛ばした。
「「大丈夫か、ルーク」」
「ハル!アキ!」
「「ハル様!アキ様!」」
「「「「え、ルーク?」」」」
俺は七歳くらいの……ルーク・フォン・ファブレを抱き上げる。
「貴様等……俺達の加護子に手を出すとはいい度胸だな」
「「「ひっ」」」
アキが不良共を懲らしめている間に俺は改めてルークを見た。
「久し振りだな、ルーク……いや、ルス」
「久し振り、ハル」
彼は嘗て居た世界で自らの命を差し出した末に、その世界のある存在と相談し……俺達が引き取った義弟だ。
「ハル、その子は……」
「俺が領域で保護してるんだ。前に生きる意味を探した物語をしただろ?その主人公」
「「えぇ!?」」
因みに幼い姿の理由は、俺の領域で再構築した際に本来の年齢にしたからで、俺達がルスと呼ぶのは俺達が彼だけの名前と贈ったものだからだ。
「アキ、程々にしておけ」
「あ、そうだった。アーキス兄様!あとはボクがやります」
「……分かった」
アキにボコられた彼等にリドルの首枷を着けられる。
俺達は少し彼等から離れ、ルスの前にしゃがんだ。
「随分早く来たんだな」
「二人に早く会いたかったから」
「「俺達もだ」」
二人でルスの頭を撫でる。
「……ハル様、アキ様」
「招待状余っていませんか?」
「ん、ああ」
「俺はそもそも誰も招待してないし」
「実は他にもご招待したい方が……」
「別に構わねぇけど」
「「ありがとうございます」」
「あ、あの!」
「「「?」」」
声に振り返ると、ルスと一緒に居た小さい者が三人居た。
「あ、大丈夫だったか?ハル、アキ、コイツ等迷子なんだ」
「あ、それは解決しました。貴方も解決したようで良かったです」
どうやら俺達を探すルスと仲間と逸れた彼等が一緒に会場を回っていた所、あの不良共に絡まれたらしい。
「では、僕たちも行きますね!」
「ああ!気を付けるんだぞ」
彼等を見送り、俺はリドル達に振り返る。
「悪ぃ、俺達ちょっと離れるわ」
「あ、うん。わかった。双子の演技も楽しみにしているよ」
「「ああ」」
其れから違う誰かを迎えに行ったルアとソルの代わりに彼とブースを回った。
「リハーサル終わっちまったな」
「ああ、遅くなってしまった」
ルスを先に戻って来たソルに預け、俺達はパープルステージへと急ぎ目で向かう。
「「!ジャミル?」」
「!良かった、双子。ついて来てくれ!」
誰かを送り出し、魔法の絨毯に乗り込んでいるジャミルに首を傾げながらも、緊急事態を察してレアボードを取り出した。
そして、絨毯で先を急ぐジャミルの後に続いて控室の方へと向かう。
「何だ、此れ……!」
「毒か……!?聖なる加護よ 憂いを払え……アンチマジック!」
廊下に充満する紫の……毒の霧。
その先に……蹲っている優羽達を見付けた。
ヒュウッ!!
「「先鋭なる風よ……ウィンドカッター!」」
「なにっ!?」
絨毯と共に彼等の周りの毒の霧を払う。
「くっ!?おのれ……邪魔をするな……!」
「あ、あれは……魔法の絨毯!?どうしてここに!?」
「──まったく、こんなことだろうと思ったよ」
クソ、また遅かった……!
俺達が辿り着くと同時に目に入ったのは……オーバーブロットしたヴィルの姿だった。
「「止めろヴィル!!」」
「みんな、乗れ!」
「ジャミル!!」「双子!!」
彼等が絨毯に乗り込むのを視認し、俺達も彼等の後に続いて外へ出る。
「優羽!何が起きた……!?」
「えっとね!」
外に向かいながら、何故ヴィルがオーバーブロットしたかを聞いた。
……そこまで追い詰められていたとは……
ビュウッ!
雨が降るコロシアムへと俺達は降り立つ。
「さきほどまで晴天だったのに、激しく荒れ狂う空……まるでヴィルの心を映したかのようだ」
「ジャミル、スタッフや生徒のみんなを避難させないと!……って、アレッ?あれだけたくさんいたスタッフが、誰もいない!?」
「お前の突拍子もない行動のフォローを続けて何年になると思ってるんだ。とっくに全員、外に避難させた!」
「「流石ジャミル」」
「エェッ!?どうやって!?」
驚く彼等にジャミルはネージュ・リュバンシェを操り、上手く外に誘導した事を説明した。
「最小限のリスクで全員を外へ……!?」
「さっきネージュたちのリハを見た後、ヴィル先輩の顔を見て嫌な予感がしたんだ。どっかの誰かさんたちが蜂の巣を突くような真似をして、最悪の事態を招くんじゃないかってな」
「えーーーっ!!なんだよその言い方!?だって、放っておけないだろ!?」
「……それが善意であれ、悪意であれ、結果として蜂の巣は落とされた。あとはどう始末をつけるかだ」
「く~~~~っ……でも、助かった!ありがとな、ジャミル!」
「ったく、黙っていればネージュ1人の犠牲で済んだかもしれないのに。余計なことを……」
小声で言ったジャミルの言葉に苦笑する。
確かにその通りだけどな……後始末が面倒なんだよな。
「マーベラスだ、ジャミルくん。キミの鋭い瞳はカリムくんのどんな小さな違和感すら見逃さない。従者の枠を超えた深い絆……実にボーテ!」
「やめてください。そんなんじゃなく、ただの経験の蓄積です。だいたい……このままじゃ、せっかくイメージを回復させ、アーキス兄さんに認めて貰うという俺の計画が、台無しになるだろうが!」
「「そっちか」」
……別に俺が護るし、アキは其処まで否定的じゃねぇと思うんだけどな。
タッタッタッ
「ジャミル先輩ーーー!」
と、エーデュースとフェルミエが駆け込んで来た。
「言われた通りコロシアムに残ってた関係者は適当な理由つけて全員避難させたけど……誰もいないことを確認して、最後にオレらが外に出ようとしたら、紫色の霧がこのコロシアムを覆ちゃってて」
「あの霧、触ってだけで肌が焼けるように痛くなってとても突っ切れなかった……あれ、なんなんですか!?」
「一体、なにおごちゃんだ?」
俺達が駆け付けられたのもギリギリだったのかもしれねぇな。
「毒の君がオーバーブロットしてしまった」
「「ええっ!?」」
「詳しい説明は後だ!来るぞ!」
ガラガラ……ピシャーン!!
「「「うわぁっ!!」」」
雷鳴と共に、彼が降り立つ。
「逃がさないわ……アタシの醜い姿を見た者は誰一人生かしておくもんですか!アーッハッハッハッハ!!」
「っ……」
「……ハル……」
高笑いをするヴィル。
……マズいな、俺は戦えるか微妙なとこだ。
「今は総合文化祭。力のある魔法士がこの学校に集まっている。これだけの異常事態に、誰も気付かないわけがないだろう。だが、救援があの毒霧を突破してきてくれるまでは、俺たちだけで持ち堪える必要がある。腹をくくるしかなさそうだな」
「ああ。それにもし助けがくるまでに魔力が尽きれば、ヴィルの命があぶない。早く正気に戻してやらなきゃ!」
「今日は……今日こそは、絶対に負けられない!」
「ヴィル……その痛みの檻から、今キミを解き放とう」
皆はやる気の様だな。
なら……
「悪ぃ、俺は微妙だ」
「え、ハル?」
「どうした?」
「正直、負が溜まってる所為で、これ以上ヴィルに近付けば上手く体が動かせねぇかもしれねぇ」
「……無理はするなよ」
皆が動揺する中、アキだけは察してるらしい。
流石俺の片割れ。
「だから、この毒だけは俺が受け持つ」
「「「「えっ!?」」」」
辺りを覆う毒。
其れを俺に集中させた。
「ハル、何を……」
「ハルなら毒で死ぬ事は無い、俺はハルのフォローに回る……お前達、やれるか」
「……はっ、トーゼン!」
「こっちは任せてくれ!」
そして、彼等がヴィルと対峙する。
軈て、彼等がヴィルを追い詰めると……
「あぁ……おせっかいなジャガイモども!こうなったら……お前たちもろとも道ずれにしてやる……!」
ジュワアアア……!
「チッ」
更に毒が噴き出した。
「ヴィル、もうやめろ!!このままじゃ、お前の命が……!」
「くっ!あと少しでブロットの化身を破壊できそうなのに」
「はぁ、はぁ……ッ!オレ、もう魔力が尽きそうなんだけど!」
「オレ様も、もう一吹きたりとも炎が出せねぇんだゾ~……」
「クソ……」
「駄目だ、ハル!これ以上近付けば、お前が……」
「──お前ら、伏せろ!」
その時、デュースが叫ぶ。
「へっ!?」
「あっ……そうか!みんな、デュースの言う通りにして!はやぐ!」
「「「えっ!?」」」
フェルミエの言葉に戸惑いながらも、皆がそれに従った。
「俺は、頭を使って考えるのが苦手だ。なんども繰り返し叩き込まないと、理解できない。でも……何十回、何百回、叩き込まれればモノにできる!」
デュースに魔力が大きくなっていくのを感じる。
「なんだ……デュースくんがまとう魔力が膨れ上がっていく!?」
「は!?えっ、まさか……」
「なん……ですって……どこに、そんな魔力を、残して……!」
「これは、俺の魔力じゃない……シェーンハイト先輩、アンタが俺に叩き込んだ魔力だ!そしてこれが、今の俺にしかない、“パワー”!!」
この感じ、ユニーク魔法……!
「落とし前つけてもらう!歯ァ食いしばれ!
デュースから放たれた魔力は、鋭い一撃となり……彼にぶつかった。
『ハル……』
『ああ、いつものだな』
白黒の世界。
主人公……最後まで舞台に立ちたいと願った彼の姿。
唯、彼は悪役に選ばれてしまっていた。
『ヴィル……』
『貴方とも約束したのに……いつか、アタシが主人公の美しい映画を見せてあげるって……アタシは選ばれなかった……』
『……全く、あの世界の人間は見る目がない。あんたの姿も、演技も、あんたが努力して誰よりも美しいものとなっているのに』
顔を覆っているヴィルを抱き締める。
『……すまない。俺が見てみたいと言ったからだな。やっぱり、俺は駄目な奴だ』
『!そんな事……』
『俺は唯、あんたの輝いてる姿が見たいだけだ……其れに、やっぱりあんたは綺麗だ。醜くなんか無い』
『……本当に?』
『ああ……あんたが望むなら、俺達が舞台を用意しよう』
『……ハーヴェル兄様の作る舞台なら、きっと素敵ね』