ツイステッドワンダーランド
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──数日後
「はぁ~~~~~……やっちまった。完全に八つ当たりだ。優等生のやることじゃない」
「「デュース?」」
「!双子……」
皆の様子を見にポムフィオーレを訪れると、外に何故かデュースが居た。
其れから落ち込んでいるらしいデュースの話を聞く。
「こんなところにいた。あ、双子も来てたんだ」
「優しいマネージャー様が、ドリンクを持ってきてやったんだゾ」
「監督生。グリム。悪い、飛び出したりしちまって」
大体話を聞き終えた頃に優羽達が来た。
「まったくなんだゾ。オマエらが大会で優勝してくれねぇとツナ缶富豪の夢がパァだ。だからエペルもオメーも、早いとこ立ち直って練習に戻るんだゾ」
「はは、ほんとグリムはブレないな……羨ましいくらいだ」
「つーかよぉ、デュース。なんでヴィルとエペルのイザコザに首をつっこんだんだ?メンドクセーことになるのオレ様にだってわかるんだゾ」
「だよな。バカなことしたって、僕も思う。でも、中庭の井戸の前で出会ったときからずっとエペルのことがひっかかってて……たぶん、僕とあいつは似てるんだ」
「えぇ?オメーとエペルが?顔も性格も全然違うんだゾ」
「うまく言えないんだが『変わりたくても、変われない』っていうか……でも自分を変える方法がわからなくてジタバタしてるっていうか。あー、くそ」
「…………」
……その気持ちは、良く分かるな。
俺も変わりたくて、もう奪われない強さが欲しくて足掻いてた頃があったから。
「エースの言うとおりだ、僕はバカで要領が悪いから上手く伝えれない。悔しいな…………」
「その悔しさは、青春の甘い痛みさ!ムシュー・スペード!」
「どうしたどうした!?元気出せよ!」
「「うわっ!!??」」
いきなり大声で話し掛けてきたハントとカリムにデュースとグリムはお驚きの声を挙げる。
「び、びっくりした!ハント先輩、アジーム先輩。どうしてここに!?」
「そろそろダンスレッスンを再開するから様子を見に来たんだ」
「ポールルームには戻れそうかい?」
「…………僕、戻ってもいいんでしょうか」
「え?あたりまえだろ」
「シェーンハイト先輩にも言われたけど足を引っ張ってる自覚はあるんです。メンバーに選ばれたからには頑張ろうと思ってる。でも、このままじゃ……」
「うぬぼれてはいけない、ムシュー・スペード」
ハントは何時もの笑顔では無く、真剣な表情で言った。
「キミたちはまだ、卵の中の雛鳥も同然。殻も破っていないうちから、自分の限界を決めてしまうのはナンセンスだ。美しい囀りも、山脈を飛び越える羽も卵の中で蹲っているだけでは手に入らないよ」
「ハント先輩…………」
「大丈夫。私にはずっと聞こえているんだ」
また何時もの笑顔を浮かべるハント。
「コツコツと硬い殻を破ろうと奮闘するキミたちのくちばしの音がね。知っているかい?卵の中にいる雛鳥は……殻を破るためにくちばしの先端に硬く尖った卵歯という角のようなものを持っているんだ。だが雛が持つ鋭い卵歯は、成長するにつれて失われてしまう。つまり、私がなにを言いたいかというと……キミたちにも、
……随分遠回りな言い方だな。
「今の僕にしかない、強さって……うぅん………………………………」
凄い悩んでんなぁ。
「ダメだ。いくら考えても、少し足が速いことくらいしか思い付かない。頭も、要領もよくない。僕のいいところなんて……」
「なあ、デュース。お前、そうやって頭でいろいろ考えちまうから良くないんじゃないか?」
「え?」
「自分が馬鹿って分かってるのに、なんでわざわざ脳みそ使って答えを出そうとするんだよ。お前を見てると、利き手と逆の手で字をかいて、『オレはなんて字が下手なんだ~!!』って叫んでるように見える。苦手ってわかりきってることをして、ダメな結果を自分に突きつけて落ち込んでるっていうか。そんなんじゃ、自分の良いとこなんか見えてこないだろ」
「フフフ、カリムくん。キミの瞳はいつも雨上がりの空気のように澄んでいるね。その真っ直ぐさ、その無垢なる輝き。まさしくそれはキミの強さだ、
……確かに、カリムの純粋無垢さは強さであり、長所なのかもな。
「ん?オレ今、褒められてるか?サンキュー、ルーク!」
「カリムくんの言うとおりさ、デュースくん。キミの強さは、きっと“頭をつかうこと”ではないんだ」
「確かに。デュースがうんうん考えたアイデアってたいていろくな結果にならねぇんだゾ。エースを投げつけてオレ様を捕まえようとして10億マドルのシャンデリアぶっこわすとか」
「ん?あれデュースの案だったのか」
「?」
「た、頼む。その話はもうやめてくれ」
懐かしいな……あの一件が、優羽とエーデュースの友情の始まりだな。
その頃はまだ来てないアキは首を傾げ、優羽は苦笑しながらも懐かしそうな顔をする。
「オレもよく考えなしだとか、能天気すぎるとかジャミルに言われるけどさ。落ち込んでも、食って寝て踊ればすぐに『なんとかなるさ』って忘れちまえる。それはオレの良いところだって、自分で思う。だからさ、ダメに感じるところにも、良いことはあるっていうか。上手く言えねえけど」
「短所は長所になりえるってことですね」
「…………!!」
優羽の言葉にデュースがハッとした様な顔をした。
「……そうか。そういうことか……!ありがとうございます、アジーム先輩。ハント先輩。僕、少しだけ見えた気がします!」
「おお?そりゃ良かった!」
「あの、最後に1つ質問いいでしょうか」
「ウィ。私たちで答えられるならなんなりと」
「この学園で、アレを借りれるところを知りませんか?」
「「アレ?」」
それからアレを借りれる場所を聞いたデュースはフェルミエの所に行くと駆け出して行く。
「……若いな」
「分かるけど、爺臭いぞ」
それから、デュースとフェルミエは遅い時間に帰って来た。
……無断外出と喧嘩というオマケ付きで。
どうやら、デュースが連れ出した先で絡まれ、喧嘩に勃発してしまったらしい。
まぁ、一応向こうが先に手を出し、デュースが怪我をしたという事で正当防衛が認められ、VDCに影響は無いとの事だ。
そんな出来事から二週間後。
先に休んだアキを起こさない様に中庭に出ると、同じタイミングで優羽も出て来る。
「…………」
「こんばんは」
「よぉ、ツノ太郎」
「おや。久しぶりだな、ヒトの子らよ。変わりはないか?」
其処に居たのはツノ太郎だった。
「うん」
「まぁな」
彼に言葉に俺達は頷く。
「それはそれは……楽しそうでなによりだ」
と、優羽が何か思い出した様な顔をした。
「もしかして、ホリデーカードを送ってくれたのは……」
「!そういえばリリアにカードを預けたんだった……返事はこなかったが。ああ。お前たちは僕のことをよく知らない世間知らずなんだったな。フフフ」
「カードのお礼に、よかったらお友だちと……」
そう言って優羽はVDCのチケットを彼に差し出す。
……そういや、俺達も学園長に渡されたな。
「……これは……今度の文化祭で行われるステージのチケット?まさか、この僕を招待しようというのか?」
「?」
俺が首を傾げる一方、優羽は素直に頷いた。
「フ、フフフッ……ハハハッ!お前は本当に恐れを知らないとみえる。いいだろう。この招待、謹んで受けとろう。お前も舞台に上がるのか?」
その言葉に優羽はマネージャーで、俺は前座として上がる事を説明する。
「……なに?ヒトの子はマネージャー?それは残念だ。だが、お前やシェーンハイトとアジームが出演するのか。フフ、それはなかなかの華やかさだろうな。文化祭当日、楽しみにしている……おやすみ、ユウ。ハル」
そして、ツノ太郎はそのまま消えた。
「そういえば、また名前を聞き忘れた」
「……そうだな」
まぁ、大体の予想は付いてるけどな。
さて、折角だから俺はあの子を招待するかな。
そして……遂に本番当日となる。
俺達は一足先に会場に向かい、誰にも見られない内に簡単にリハーサルを済ませて置いた。
その後、学園長と確認し、ステージに戻ると……設営担当の運動部とリドルとトレイ、そして優羽とグリムが居るのを発見する。
「優羽、来ていたのか」
「あ、双子」
「オマエらどこ行ってたんだゾ?」
「俺達の前座は基本的に内緒だからな」
「誰も居ない時間にリハを済ませていた」
「……双子はこの後用は?」
「「いや、無い」」
「じゃあ、双子も一緒に行かない?」
何でも優羽とグリムは此れからブースを巡回しに行くリドル達について行くらしい。
其れに俺達は視線を交わした。
「「分かった」」
「よし」
「あ、そう言えばルアとソルは?」
優羽が俺達の腕や肩を見ながら聞いてくる。
「ああ、彼奴等には迎えに行って貰ってる」
「迎え?」
「どうせなら見せようと思ってる奴が居るから」
「ソイツの迎えに行って貰ってる」
「そうなんだ」
「さて、そろそろ出発しよう」
それから俺達は展示ブースを回った。
『ボードゲーム部』に『山を愛する会』、『ガーゴイル同好会』……こうしてみると、様々な部があるんだな。
サイドストリートに来ると、一般の開場前だというのに大勢の人が居た。
「まだ開場前だってのに、すげえ人なんだゾ!」
「全国魔法士養成学校総合文化祭は、その名の通り全国の高校生が集まる芸術祭だからな。関係者だけでも、かなりの人数にのぼる」
ジリリリリリ…
『みなさま、大変おまたせいたしました。ただいまより全国魔法士養成学校総合文化祭を開催いたします』
学園長の放送に拍手が聞こえる。
その直後……
「『ボーカル&ダンスチャンピオンシップ』の会場パープルステージってどっち!?」
「キャンセル枠の当日券の待機場所どこ!?」
「生ネージュくん、早く会いた~い!」
「キャーッ!ここがヴィル様の通ってる学園!?すご~い、マジカメにアップしよっと!」
「おい人間!!!走るな!!!そして歩きスマホをするな!!!」
「当日券の抽選は、先着順ではありません。スタッフの指示に従い、落ち着いて並んでください」
押しかけて来た一般客に前に会ったディアソムニアの二人が対応していた。
「な、なんなんだゾ、あの客の大群は!?」
「おそらく、ヴィル先輩とネージュ・リュバンシェとやらのファンだろう」
「「ネージュ・リュバンシェ?」」
「世界的に人気があるのは知ってはいたけど、こりゃすごいな。というか、双子は知らないのか?」
俺達がトレイにネージュ・リュバンシェとやらの事を聞かされている間に、リドルが彼等に声を掛けに行く。
話し終えると彼等にこの場を託し、俺達はメインストリートへと来た。
「東校舎は、体育館にあるブルーステージと、運動場にあるレッドステージで発表を行う部活の控室になっている。我が校だけでなく、他校の生徒もそこを利用するんだ」
「おお、じゃあ『VDC』に出るヤツらもソコに集まるのか?」
「いいや。コロシアムには楽屋施設があるから、『VDC』の出場者はそちらだね」
「今年はロイヤルソードアカデミーの生徒も大勢参加している。こまめに巡回が必要だな。そうでなくてもうちの学園は血の気が多くて喧嘩っ早いヤツが多いのに、ライバル校の生徒がいるとなれば……」