ツイステッドワンダーランド
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「なんだぁ?実家から絹の反物でも送ってきたのか?」
「「お前の家と一緒にするな」」
「いえ、そんなすごいものじゃない……かな?えと、僕の故郷は林檎が特産品で……たぶんこれ全部、林檎ジュース……です」
林檎……?
「全部!?ジューススタンドでも開けそうな量じゃん」
「あ、箱の中に手紙が入ってる。なになに…………『売れ残ってしまい、賞味期限が近いです。学校の友達と分けてください』……も~!売れ残りば押しつげるなよ。でも、こんなに売れ残ってるなんて……」
「飲み物だけをたくさん送ってくれるってエペルもすごいお坊ちゃまなんだな」
「えっ!?」
……売れ残りつってたから違うと思うけど。
デュースの言葉に驚くフェルミエの反応からしてそうだし。
「あ、なるほど。エペルは林檎ジュースのブランドにこだわりがあって、これしか飲みたくないとか?」
「ぜ、ぜんぜんそういうわけじゃない……かな!?よかったらみんなも飲んで。林檎果汁100%、保存料ナシ。ビタミンたっぷりだから、ジュースだけどヴィルサンも怒らない……かも。味は保証するよ!!」
「なんだ、やっぱりジュースにこだわりあるんじゃん」
「あっ、あはは……」
「メルシー!ムシュー・姫林檎・ありがたくごちそうになるよ。ご実家のみなさまに感謝を伝えておくれ」
「……貰ってもいいか?」
「あ、はい!」
ジュースを一つ取り出したアキが俺へと差し出した。
「ハル、貰ったらどうだ?」
「有り難いけど、自分で貰えるっつーの……」
「ハル様は林檎が好物ですからね」
「アキ様渡したくてウズウズしてましたものね」
「「うるさい」」
余計な事を言ったルアとソルを二人でウリウリと撫でる。
「(林檎が好物なのか。覚えておこう)玄関をダンボールで塞がれていては出入りもできない。とりあえずこの箱たちを談話室へ移動させよう」
「それは俺がやる」
ジャミルの一言でアキが一度輝石化し、談話室へ運んだ。
「アキクン、荷物の移動をしてくれてありがとう……ございます。早速だけど、双子クンもみんなもよかった林檎ジュース飲んでいって。林檎に含まれるクエン酸やポリフェノールは疲労によく効くんだ。歌やダンスのレッスンで疲れた身体にぴったりのはず……かな?」
トクトク……
「おぉ……栓をあけただけで林檎の甘酸っぱい良い匂いが」
「みずみずしい香りだ。私もいただこう」
「……飲むからそんな見んな」
俺をジッと見るアキに苦笑し、コップに入れたジュースを飲む。
ごくごくっ……
「これは……セ・ボン!実に美味だよ、エペルくん!」
「……凄い美味いな、コレ」
「「(可愛い……)」」
「どれどれ、オレにも一口くれよ……ごくっ。おぉ~、本当にうまい!林檎そのものって感じの味がするぜ!」
「林檎100%なんだから、それはそうだろう。うん、でも……確かに美味いな」
「さっぱりしてて、いくらでも飲めちまいそうなんだゾ~!」
「こら、グリム!瓶に口をつけるな!」
「まあラッパ飲みしたくなるのもわかるかも。ごくごくいけんね」
「酸っぱすぎず、甘すぎず。のどごしの爽やかさはまるで林檎畑を吹き抜ける爽やかな風のようさ。愛情を込めて真摯に作られているのはわかる逸品だ」
皆が絶賛する様に、林檎ジュースはとても美味かった。
「そうでしょう!このジュースは何種類かの林檎をブレンドして作ってる、故郷の自信作なんです!はちみつを混ぜれば喉にも良いし歌の練習の後にはピッタリかも!あ、ジュースだけじゃなくて、とれたての林檎もたげんめぇ……美味しいんですよ!」
其れは凄く興味あるな。
「はっはっは!熱の入ったトークだ。良いね。ムシュー・姫林檎が故郷をとても愛しているのが伝わってくるよ」
「でも…………輝石の国の片田舎で作っているせいかどうも知名度が低くて……」
「へぇ。こんなに美味いのに、なんかもったいないな」
「年々観光客も減ってて、このままじゃ……」
コツコツコツ
「アンタたち。いつまで談話室にたむろっているの?」
と、其処にヴィルがやって来る。
「……と、いうかこのダンボールの山はなに?」
「エペルくんの実家から林檎ジュースが届いてね。みんなで頂いていたところさ」
「お、お砂糖は入ってません!保存料も!だからその、長期間保管ができないので……ヴィルサンもよければ、飲んでください」
「ふぅん、そう。気が向いたらいただくわ。それよりそろそろ22時になる。就寝時間よ」
……ん、もうそんな時間か。
「22時就寝!?小学生かよ」
「寝る時間が早いイコール子どもだなんて考えこそお子ちゃまマインドね。美しい肌と髪を保つためには、7時間以上の睡眠が推奨されてるんだから」
其れ、俺達には関係ねぇんだよな。
「ああ、そうだ。全員に聞いておこうと思ってたけど……アンタたち、ヘアケアとスキンケアはどこのメーカーを使ってるの?」
「え?ケアって……なんですか?」
「洗いざらしにしておくと髪が絡まるのでヘアオイルはつけていますが……肌は特になにも」
「実家にいた頃はいろいろつけられてたけど寮生活になってからはなにもしてねーや」
「俺の場合はアキとルアが色々やりたがるけど……異世界産のメーカーだな」
まぁ、俺自体はそんなに細目にやろうなんて思わねぇんだけど。
「油分を洗い流した肌をそのまま放置しているなんて、正気!?今からアタシのお手製スキンケアグッズを配るわ。それで朝晩の洗顔のあとは必ずケアして。双子のはチェックしてからね」
「では、現品をお持ちしますね」
「僕も行きます」
ルアとソルが談話室を出て行った。
一方で、ヴィルは幾つかの瓶を机の上に置く。
「おお、ヴィルは化粧品を自分で作ってんのか?すげーな!」
「さすがはポムフィオーレ寮長。薬草学の知識が豊富なだけありますね」
「私とエペルくんはこのヴィルお手製スキンケアを使い始めてから肌荒れ知らずさ」
「はい。これ以外にも日焼け止めとか、ルースパウダーとか、リップクリームとかハンドクリームとか……いっぱい押し付……いただきました」
「ほう?今度見せてくれ」
「ええ、いいわよ」
「ちょっと待て。それ絶対自分じゃなくて、俺に使う気だろ」
「当然だ。お前の綺麗さを保つ為なら」
「綺麗とか言うな。つーか、俺達の場合、其処まで影響無いっつーの……」
アキはちょっと気を抜くと、直ぐに俺にやりたがるんだよな。
過保護め。
「ところで……瓶がいくつもあるけどどうやって使うんだ?」
「そこから?仕方ないわね……まずは洗顔料から教えましょう」
「カリムをモデルに実践するからアンタたちよく見て覚えなさい」
「「「は、はい」」」
ヴィルに威圧にエーデュースとジャミルは素直に頷いた。
「カリム。アンタ普段洗顔する時、なにを使ってるの?」
「水!」
「論外!まず、ネットでよく泡立てた洗顔料の泡で顔を包む込むように洗って。ゴシゴシ擦るのは厳禁」
「あはは、なんかくすぐったいな」
其れからヴィルのスキンケア講座が始まる。
「あのー、ヴィル先輩って魔法が得意だから寮長になったんですよね?」
急に言い出すエース。
「肌とか髪とか、魔法でパパッと綺麗にする方法ってないんすか?」
「アンタたちも魔法士なら理解していると思うけどほとんどの魔法や魔法薬に永続的な効果はないわ。魔法で取り繕った美は、一瞬夢を見せてくれるでしょうけど……アタシは、午前0時の鐘で解ける魔法に興味はないの」
午前0時……ああ、シンデレラか。
「偽りのない純粋な美しさを手に入れたい。魔法の鏡が認めた、“美しい女王”のようにね(それに、彼……特にハーヴェル兄様の様な……)」
「?」
何で今、俺の方をチラッと見たんだ?
「もし伝説の鏡が存在していたら、きっとヴィルの美しさを認めていたに違いないさ」
「…………そうね。少し話しすぎたわ。全員部屋に戻りなさい。寝る前にスキンケアをするのを忘れないように!」
「「「は、はい……」」」
「「お待たせしました~」」
その頃にルアとソルが持って来た。
「此方は予備なので」
「持ち帰って頂いて構いませんよ」
「そう。ありがとう」
予備……幾つあるんだろうな。
「……っと、フェルミエ」
「えっと、どうかしたの……かな」
「いや、この林檎ジュースもうちょい貰ってもいいか?」
「あ、うん。好きなだけ持っていって……本当に林檎好きなんだね」
「まぁな。林檎が一番好きだ」
「ふふ、じゃあ今度故郷の林檎あげるね」
「マジか……なら、此処にある分のジュースは買い取らせてくれ」
「えっ!?」
ルアを見れば、直ぐに値段を調べ始める。
「そ、そんないいよ!」
「俺が気に入ったんだよ。ああ、勿論皆が飲める様にしとくから……その代わり、林檎期待してるからな」
フェルミエの頭を撫で、俺は部屋に向かった。
「そんなに気に入ったのか」
「ああ」
「…………」
「自分で買うから、あんたが態々買う必要ないからな」
同じく部屋に戻って来たアキにしっかり釘を刺しておく。
「~~~♪…………~~~♪」
「「?」」
と、中庭から歌声がした。
其れに優羽が部屋から出る気配を感じ、俺達もそっと部屋を出た。
歌を練習していたのはカリムらしい。
彼に優羽とグリムが話し掛けるのを聞く。
……一応、警備は万全のつもりだけど、念の為な。
軈て、カリムは寮へと戻っていった。
「………………」
その様子を一緒に見ていたジャミルの肩を二人で左右から叩く。
其れから部屋に戻り、今日は寝る気分じゃないらしいアキと歌とダンスのチェックをしていた。
「「…………」」
暫くすると、厨房の方が騒がしくなったのを感じた。
……エーデュースか?
俺は溜息を吐いて部屋を出る。
アキは呆れた目をした後、布団に潜った。
「僕も行きます」
と言うルアを抱き抱えて、厨房へと向かう。
「……何の騒ぎだ?」
優羽とヴィル、そして何故か床に転がっているエーデュースとグリム。
「ああ、ごめんなさい。起こしちゃった?」
「俺達の場合は睡眠は普通の人よりも大分少なくていいからな。今日は起きてたんだよ」
「……出来れば、本番までしっかり睡眠取って欲しいのだけど」
「……分かったよ。で?」
「えーっと、グリムたちがつまみ食いしちゃって」
優羽が事の経緯を説明してくれ、俺はまた溜息を吐いた。
「……悪ぃが、見捨てる」
「「「え゛」」」
「アキが寝るみてぇだったから、俺も横になって来るわ。明日の朝飯はレシピ通りでいいな?」
「ええ、お願いするわ」
という事で、俺はエーデュース達を見捨てて部屋に戻る。
最悪、此処のゴーストが如何にかするだろ。
「あ、ハル」
「おう、如何した?ジャミル」
部屋に戻る途中で、ジャミルと出会す。
「……その様子からして、刺客ではなさそうだな」
「ああ」
エーデュース達が転がっている部屋を指せば、ジャミルは一度確認し、微妙な表情で戻って来た。
「何なんだ?アレ」
優羽から聞いた事をそのまま伝えれば、ジャミルは呆れた様に溜め息を吐く。
「馬鹿馬鹿しい」
「同意見だ……ジャミルも今日は疲れただろ?よく休んでおけ」
「ああ、そうさせて貰う。お休み、ハル」
「ああ、お休み」
ジャミルが部屋に戻るのを見送り、俺も部屋へと戻った。
「…………彼奴等か?」
「ああ、もう寝たのかと思った。彼奴等だった」
「そうか……寝る」
「お休み」
眠そうなアキに返し、俺もルアを抱えたまま横になる。