ツイステッドワンダーランド
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「全く口が挟めないまま合宿が決まってしまった……」
「そーね……ま、たまにいいんじゃね?だって合宿中は、ハートの女王の法律違反で首をはねられることもないってことだろ。いつもより気楽じゃん」
「オクタヴィネルの次は、ハーツラビュル、スカラビア、ポムフィオーレの合同合宿か。こりゃ、にぎやかで楽しくなりそうだ!」
「学園長の決定なら仕方がない……逆らって心証を悪くしたくはないからな」
皆がアキから視線を逸らしながら話す。
……最近アキもストレス溜まってそうだったしなぁ……まぁ、休養の筈の俺の穢れが消える所か増えてる事にもストレス溜まってから、俺が原因の一つなんだろうけど。
「……ちょっと行って来る」
「「いってらっしゃい」」
アキはソルを俺に渡して出て行った。
「……強化合宿についてのミューティングは以上。次は……早速、レッスンを始めるわよ!」
「えっ、レッスンは強化合宿が始まったらじゃないの?」
「うぬぼれないで、新ジャが1号。アンタたちは歌も踊りもまだド素人。1分たりとも無駄にできる時間はない」
「いいね!我らがNRCトライブの旅立ちを祝し汽笛がわりに1曲奏でようじゃないか」
「………………」
「さあ、音楽をかけてちょうだい。『Piece of world』!」
七人全員でパフォーマンスを見て、俺と優羽はオンボロ寮へと戻る。
「アキは本当にハルの事が大事なんだね」
「あー……過保護なんだよ」
「でもちょっと楽しみ。双子のパフォーマンスなら凄いだろうし、ハルは綺麗だしなぁ」
「綺麗とか言うな」
「……!」
優羽が足を止めた。
其れに俺達もグリムも首を傾げる。
「どうした?」
「……ううん、何でもない」
「?」
そして、合宿初日。
「ボンジュール!監督生くん。グリムくん。これから4週間、お世話になるね。よろしくたのむよ」
「これもツナ缶のためだ。しかたねぇんだゾ」
「いらっしゃいませ」
「あら、思ったより綺麗にしてるのね」
「お邪魔します…………」
ゾロゾロと先ずはポムフィオーレの三人がやって来た。
「おぉ、なんか天井が低い屋敷だな。魔法の絨毯に乗ったら頭をぶつけちまいそうだ」
「はぁ……まず、屋内で飛ぼうとするな。監督生、双子、悪いが俺の部屋はカリムと同じか隣の部屋にしてくれないか?鏡舎を通らないぶん、スカラビアよりもセキュリティが甘いからな」
「相変わらず心配性だなぁ、ジャミルは。学園内で刺客に狙われたことなんか入学以来一度もないだろ?」
「別にお前の心配をしてるわけじゃない。お前になにかあれば従者である俺の立場が悪くなる。昨日まで平和だったからって今日も同じとは限らないんだよ」
続いてスカラビアの二人がやって来る。
「そうだな……同じ方がいいなら、広めの部屋を用意してやるけど」
「ん、悪いなハル……因みにハルの部屋は?」
「ジャミル?」
「……わかってるさ」
アキの言葉にジャミルは肩を竦めた。
「お邪魔しまーす」
「監督生、双子、今日から世話になる。これ、トレイ先輩から」
「おう、いらっしゃい」
そして、エーデュースがやって来る。
俺はデュースから箱を受け取った。
「ん?箱の中から甘くていい匂いがするんだゾ」
「トレイ先輩特製のチョコレートケーキとアップルパイ。別の寮に世話になるんだから、手土産くらい持って行けってさ。お母さんかっての。あとでみんなで調べようぜ」
「にゃっはー!さすがは食えないメガネ、気が利いてるんだゾ」
「──残念だけど、その手土産は没収させてもらうわ」
「おっと?」
と、俺の手の上から彼が箱を抜き取る。
「へっ!?な、なんで!?」
「まったく、トレイは相変わらずね。『良かれ』で甘やかして相手をダメにする一番気を付けなきゃいけないタイプ」
「もしかして、オメーもリドルみてぇにルールだとかいって食料を捨てるつもりか!?食い物を粗末にするヤツはオレ様が許さねぇんだゾ!」
「はぁ?なんの話?捨てるなんて言ってないでしょう。合宿前に大事な話をするから、みんな荷物を持ったまま談話室に集合してちょうだい」
その言葉に俺達は顔を見合わせて談話室へと移動した。
「で、ヴィル。なんなんだ?大事な話って」
「みんな、持ってきた荷物を開けてみせてちょうだい」
「えぇ?荷物広げるなら部屋に行ってからのほうが……」
「いいから開けて」
ガサゴソ
彼等は戸惑いつつも、談話室で荷物を広げる。
「…………やっぱりね。新ジャガ1号、2号。なに?このスナック菓子と炭酸ジュースは。クッキーにキャンディ、チョコレートバーまである!」
「夜にお腹がすくので……」
「せっかくの合宿だし、監督生たちと食おうかなって」
取りあえずエーデュースの持ち込んだ菓子とジュースは別の場所に置かれた。
「カリム。アンタの荷物も、大半が食べ物の入った容器じゃない!」
「おう!ジャミルに作ってもらった揚げ饅頭とクナーファっていう小麦粉の菓子だ。ナッツやチーズ、クリームなんかをのせるとうまい。お前らに食ってもらおうと思ってさ!」
「ジャミルは食べ物は持ち込んでいないようだけど……なに?この大きな布の包みは」
「有事の際にすぐ解毒薬を調合できるように魔法薬と薬草のセットです。魔法薬学に長けたヴィル先輩がいらっしゃるので必要ないかとも思ったのですが。念のために」
「なんか物騒ね……まあいいわ」
確かに物騒。
カリムの容器はエーデュースの菓子類と同じ所に、ジャミルの解毒薬セットは彼の所に戻される。
「エペル。まさかお菓子なんて持ってきてないわよね?」
「えっと……は、はい。でも……自分で作った林檎のドライチップはちょっとだけ……」
「ナッツやドライフルーツは食べすぎない限りOKよ。最後にルーク。アンタのことは信頼しているわ。でも荷物が分厚いアルバムだけって……一体なんなの?」
ハントの前に置かれた分厚いアルバム。
確かに此れだけとか異様だな。
「はは、それはだたのライフワークの記録さ。肌身放さず持っておきたくてね。プライベートなものだから、今ここで開かれると恥ずかしいのだけど……」
「失礼ね。アタシも他人のプライベートを侵す気はないわ。さて、それじゃあ……ここにある砂糖や小麦粉を使ったお菓子ドリンク類はすべて没収よ!!」
「「「えぇ~~~~っ!?」」」
エーデュースとカリムが大きな声を出した。
「なんでだよ。別に毒なんか入ってないぜ?」
「スカラビアコンビは発想がいちいち物騒!そういうことじゃないわよ。強化合宿をなんだと思ってるの?アンタたちには『VDC』に向けて、心身を曇り一つない鏡のように磨き上げてもらわなきゃならない。本番までの4週間……肥満の原因になりすい単糖類と小糖類たっぷりのスイーツやドリンク。そして肌荒れの原因になる資質や香辛料も多量に含んだ食事は一切禁止!」
「えーっ!?」
……となると、食事に気を付けなきゃいけねぇのか?
其れとも、合宿中は食堂で食うのか?
オンボロ寮の食事は俺が作ってるからな……また確認しとかねぇと。
「心配しなくても、栄養豊富かつ高タンパク低カロリーの食事メニューを考えてあるわ。だらしないボディラインを徹底的に引き締めてもらうわよ」
「はぁ?オレら育ち盛りなんですけど?」
「あら。アタシは深夜にお菓子をつまみ食いしなくても183cmまで身長が伸びたわ。育ち盛りに大切なのは、栄養素を過不足なく摂り、しっかりと睡眠をとることであって。食べたいだけお菓子を貪って、あちこちニキビを作ることじゃない。覚えておきなさい」
「げー……マジかよ…」
183cmか……172しかねぇんだよな、俺。
微妙にアキの方が高いし……もうちょい欲しかったな……。
「なあ、オレ様たちは選抜メンバーじゃねぇんだから食ってもいいんだろ?」
「好きにすればいいけど、メンバーの前で食べてストレスを与えるのはやめて」
「確かに、正論ではあるけど……」
「……………………」
……ポールルームに居た時から気付いてたが……フェルミエの表情が暗いな。
「はっはっは。大丈夫、心配ないさ。なにもヴィルはキミたちにダイエットさせようとしているわけじゃない。食の観点からも、より効果的に身体を引き締め美しくなってもらおうというだけさ」
「さ、さすが、テッペン目指してる人は覚悟が違うな……」
「フッ……この程度で“覚悟”ですって?これはただの“基本”よ」
「じゃあさっさと自分の部屋に荷物を置いてきて。すぐにレッスンを始めるわよ」
「んじゃ、手分けして案内するわ」
「エーデュースは俺と来て」
「ポムフィオーレ組は俺だ」
「ジャミルとカリムは俺について来てくれ」
そして、俺達は其々の部屋へと向かった。
「おかえり」
ポムフィオーレから帰って来た彼等を出迎える。
「なんだか疲れちゃった……あ、手伝うよ!」
「ん、ああ……悪ぃな。出来たのを運んどいてくれ」
彼から渡された細かいレシピ表を見ながら飯作ってたら遅くなっちまった。
「そう言えば、双子は当日どうするの?」
「俺達個人への報酬と引き換えに受ける事になったが……関係者にも当日まで秘密な」
「あら、それはアタシたちにもって事?」
料理のチェックにでも来ただろう彼が声を掛けて来た。
「そうだな。学園長にも秘密にしてるし」
「……一応、兄様たちのもチェックしようと思ったのだけど」
「え、もしかしてヴィル先輩も?」
彼も覚えてるみてぇだな。
「俺達の方はルアとソルがチェックしてるからな。お前も楽しみにしといてくれ……お前は自分の方に集中してろ」
「……ええ」
「俺もお前が一番に輝く姿、楽しみさせて貰う」
「ええ。楽しみにしておいて……今度こそ、アタシが一番になってみせる」
そう言って出て行くヴィル。
「……優羽、ちょっと頼んでもいいか?」
「いいよ。何?」
「今回俺は自分達の方に掛り切りになるだろうからな……ヴィルの事、見といてくれ。何かあったら教えてくれ」
「……うん、任せて」
「ハル~!お腹空いた~!」
「おう。今出すからもうちょい待てや」
ヘトヘトな彼等に夕飯を出し、其々の部屋へと向かう。
「はぁ~……夕食食い終わったけどなんか物足りなかったな」
「わかる。まずくはなかったけど、全体的に辛さのパンチと油のコクが足りねえってかんじだ」
「そりゃ悪かったな」
「あ、いや、ハルの飯自体は美味かったからね」
案内する途中でエースに言えば、彼は慌てた様に返してきた。
「野菜、鶏肉のささみ、フルーツが中心のレシピだった。量は十分だと思ったが」
「『“痩せ”じゃなく“引き締め”のためのメニュー』と言ってましたね」
「でも、野菜ばっかじゃ食った気がしねぇんだゾ。オレ様とコイツは大会に出ねぇんだから肉と揚げ物食わせろってんだ~!」
あー……ヴィルに全員同じメニューって言われちまったから、優羽とグリムも同じメニューにしたんだよな。
やっぱ、グリムは不満だったか。
「ヘルシーで美味しかったよ」
「ありがとな、優羽」
ビーッ!
その時、インターホンが鳴り、アキがスッと玄関に向かう。
「ン?こんな時間に誰だ?」
全員気になったらしく、結局皆で玄関に向かった。
「お届け物でぇす。ポムフィオーレのエペル・フェルミエさんはこちらに?」
「はい。エペルは僕……です」
「サインお願いしまーす。大きなダンボールが10箱届いてます。玄関に置いてしまっても?」
「えっ、10箱も!?」
ダンボール10箱って……凄いな。
「はい。差出人は…あ、こちらもフェルミエさんです。ご実家からですかね?」
「玄関に構わない。俺が運ぶ」
「はい。どれも重たいので、持ち運びに気を付けて」
ドドドンッ!
玄関に置かれたダンボールの山。
「あっという間にダンボールでオンボロ寮の玄関が埋まったな……」
「うわぁっ!絶対ばっちゃ……あ、おばあさまからだ。もう、電話で何でも送らなくていいって言ったのに!」
「そう言ってやるな。実家からの好意なんだろ?」
呆れた様に言うフェルミエが微笑ましく、つい頭を撫でながら言う。