ツイステッドワンダーランド
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『全国魔法士養成学校騒動文化祭』というのが、ナイトレイブンカレッジで行われるらしい。
俺は特に興味もなく……つーか、人が集まるなら引き籠っててぇ。
そんな矢先、優羽達が『ボーカル&ダンスチャンピオンシップ』の出場メンバーのオーディションに参加するから練習に付き合ってくれと頼まれた。
俺達は彼等が歌って踊ってるタイミングで体育館に着き、その様子を見学する。
……ん、慣れてない感丸出しの演技だな。
「ぷはっ!デュース。お前、簡単なステップもマトモに踏めてねぇじゃん」
「なっ……しょうがねーだろダンスなんかやったことねぇんだから!」
「ぐぬぬぅ~。手と足が同時に出ちまうんだゾ~」
「自主練だと限界がありそうな気が……」
「つってもなー……」
「俺達は教えられないしな」
「おっ?お前らもダンスかぁ?オレたちも混ぜてくれよ」
そこにジャミルを連れたカリムがやって来た。
「ふなっ。スカラビアのギクシャクコンビ」
「「ギクシャクコンビ」」
「変なコンビ名をつけるな。双子も繰り返さないでくれ。それに、別にギクシャクはしてない」
「もしかして、カリム先輩とジャミル先輩も『VDC』のオーディション受けるんスか?」
VDCというのはボーカル&ダンスチャンピオンシップの略らしい。
「おう!だって、でかい祭なんだろ?せっかくなら踊りたいじゃないか。オレもジャミルもダンスと歌は得意だし。な、ジャミル!」
「俺は目立つことはあまりしたくないんだがな……はぁ」
「しかし、後ろから見てたけどお前ら本当にヘッタクソだな~!ゾウが二本足でどすどす慌ててるみたいだったぜ!あっはっは!」
……流石にそれは失礼だと思うけどな。
「踊りだけでおぼつかないのに、本番じゃ歌わないといけないだろ。大丈夫か?」
「うぐっ……悪気がないぶん、逆に刺さる」
「そうだ。ジャミル先輩、前にバスケ部でフロイド先輩にダンス教えてたことありますよね。たしか、ダンスが趣味なんでしょ?オレらにもダンスのコツ、教えてくださいよ」
「おう、いいぜ!ジャミルのコーチなら間違いない」
「なんでお前が返事をするんだ!」
ジャミルの言葉は尤もだな。
此奴、こうやってジャミルを追い詰めてたの分かってねぇのか?
「ゴホン……まあ、誰かに教えるのは自分の復習にもなるし。いいだろう。素人ならまずはアイソレーションからだな。足を肩幅に開いて……」
それからジャミルの指導が入る。
すると、昼休み終了を知らせる鐘が鳴った。
「おっと。もう午後の授業が始まるな。ダンスの練習はここまでにしよう」
「ええ、もう?踊ってると時間があっという間だな~」
「はぁ、はぁ……バイパー先輩、アジーム先輩特訓あざっした!」
デュースがジャミルに頭を下げる。
「さすがジャミル先輩。教え慣れてるるーかなんつーか……たった何十分かで、デュース達もすこしは踊れるようになってきたじゃん」
「リズム感はともかく、運動神経は悪くない。練習を重ねれば問題無く踊れるようになるんじゃないか?」
「押忍!アザッス!!」
「グリムは上達したかどうかの判断に困るが……キレはある。と、思う。たぶん」
……まぁ、確かにアレは判断に困るはな。
多分動きが良くなった様な気がするって感じだし。
「踊るのって結構楽しいんだゾ。明日は、もっとキレキレなダンスを見せてやる!」
「だが、踊りだけに夢中になっていると歌のほうがおろそかになる。どちらもバランス良くレッスンをしていかないとな」
「そうだった。まだまだ課題は山積みだな」
「なあ、お前たち。明日からも一緒に練習しないか?ジャミルは歌も上手いからさ。見て貰えよ」
笑顔でカリムがそう提案してきた。
「なっ!お前はまた勝手に……!」
「いいじゃねーか。歌と踊りと宴は人数多い方が楽しいだろ?」
「「「よろしくお願いしまーす!」」」
「おう!一緒に頑張ろうな!」
「ったく、調子のいい奴らだ……」
「悪ぃな、ジャミル」
「俺達もサポートはする」
苦労人なジャミルの頭を撫でる。
「ありがとう、双子……いいだろう。ただし、優しい教え方は期待するなよ」
「余裕でしょ。スパルタにはウチの寮長で慣れてるし」
「ビシバシオネシャス!」
「それじゃあ、引き上げる前に使ったフロアの整備だ。倉庫からモップを取ってこい」
「「「はーい」」」
エーデュースに挟まれて一緒に返事をするカリム。
「カリム、お前はしなくていい……はぁ」
コツコツ……
「ああ、よかった。ここにいらしたんですね。ジャミルさん」
その時、アズールが歩み寄ってきて、ジャミルに声を掛けた。
「アズール?なんの用だ」
「クラスメイト相手に、そんな嫌そうな顔で隠れなくてもいいでしょう。ジャミルさん、日直ですよね?午後の魔法士が自習になるそうです。職員室まで課題プリントを取りに来て欲しいとトレイン先生が」
「わかった。すぐ行く」
ジャミルは嫌そうな顔で俺の背後に回っている。
「そういえばジャミルのヤツ、アズールに本音ぶちまけ裏実況を全世界に放映されちまったんだっけ」
「あれからどうなったんだろう」
念の為、ルアに調べて貰ったが……
「嫌ですねぇ。あんなの『もう言い逃れできない』と思わせるためのハッタリに決まってるじゃないですか」
「ふなっ!?」
そう、ネット界隈にそんなものは無かった。
「クラスメイトを社会的に終わらせるような真似を慈悲深い僕がするとでも?」
「…………いや、お前ならやるだろ」
「…………慈悲深いヤツは、あんなひでー嘘つかねぇんだゾ」
「フフフ。本当にあの日はジェイドとスマホで通話していただけです。僕はレオナさんと違って、必要以上に相手をいたぶって楽しむ趣味はありませんから。せっかく手に入れた秘密です。自ら価値を暴落させるようなマネはしませんよ」
「はぁ、どの口が……でも、そうだな」
ジャミルが俺の後ろから出ながら溜息を吐く。
「──悔しいが、アズールの慈悲のおかげで俺の親も、アジーム家も、俺がオーバーブロットした本当の理由は知らないままだ。寮生たちは…………」
ジャミルが副寮長である事に不満を持った寮生は、カリムが上手く宥めたらしい。
「……その後も付かず離れず適当にやっている。スカラビア寮生は“深謀深慮”がモットー。どいつもこいつも結論を急ぐのは避けて、誰につくのか解くか、注意深く動向を窺ってるんだろうさ。俺や、カリムも含めてな」
ああ、だからスカラビア寮生を中心にジャミルを見ていたのか。
「フフ。実にスカラビアらしい。みなさん、とんでもなく面の皮が厚くていらっしゃる。あんなことがあったのに、よく一緒にダンスなど踊れるものだ」
「フン。なんとでも言え。俺の場合、オーバーブロットの件で寮内外からの評価が地に落ちてるからな。スカラビア内外での地位向上のために、しばらくは大人しくカリムに従っておくつもりだよ」
今回グリムやエーデュースの指導を渋々引き受けたのもそれが理由なんだろう。
「フフ。きっと寮生たちは虎視眈々とあなたの席を狙ってるんでしょうね。性格の不一致さえなければ、カリムさんは使えるのにこれ以上ない、魅力的な主だ。いずれ彼が継承するであろう“数々の財宝”。それは現代社会において、魔法よりもよほど万能に近いパワーを持っていますから」
……権力は、大きな力だからな。
俺は興味ねぇけど……厄介なもんだ。
「……ホリデーの計画は俺にとって一世一代の勝負だったし、失敗して人生全部ダメになったと思った。でも、結局そんなに変わっていない……“ありがたい”ことにな。カリムに解雇されない限りは俺の従者の席に居座り続ける。せいぜい俺の有能は働きぶりを周りの奴らに見せつけ続けてやるさ。カリムにも。寮生にも、両親にも、アジーム家にも……お前らにもな」
「ジャミル、オメー、ホリデー前と後でキャラが変わりすぎなんだゾ」
「俺はこれくらいの方が好きだけどな」
「本当か?」
「おう」
俺を見詰めながら聞いてくるジャミルに頷いた。
「フフ。そうでなくてはね。カリムさんに解雇されたらいつでもオクタヴィネルへどうぞ。ジャミルさんほど有能な方なら大歓迎だ」
「それはどうも。なにがあってもオクタヴィネルにだけは絶対に転寮しないけどな。いよいよになったらハーヴェル兄さんのところに行くし、ハルと一緒になる」
「ジャ…「ジャミル、そう簡単には渡さないぞ?」…アキ」
「もちろん。地位向上にはアーキス兄さんに認めてもらうというのも入ってるからな」
アキとジャミルが視線をぶつけ合う一方、優羽達の視線は俺に向けられる。
其れに俺は顔ごと目を逸らした。
……まだ、ジャミルの其れがどういうのなのか分かんねぇしな。
「おーい、お前ら~。もうそろそろ行かないと午後の授業に遅れるぜ!」
「カリムさんに急かされるとは……ですが確かにその通りですね」
「アズールなんかと話している場合じゃなかった。早く課題のプリントを取りに行かないと」
カリムの声に解散する事に。
「げっ、オレら次の移動授業、西校舎で遠いじゃん」
「急ぐぞ、監督生、グリム!」
「ふなっ!オマエら、待つんだゾ~!」
「ハル、途中まで一緒に行くぞ」
「……おう」
其れから三日後。
「昼休み、体育館でオーディション課題曲のレッスンするヤツら増えてきたねー」
体育館は練習する生徒で賑わっている。
「みんな優勝金を狙ってんのか?ツナ缶は渡さねぇんだゾ!」
「賞金よりも、これを機にプロデビューを狙う生徒のほうが多いんじゃないか?」
「プロか……言われてみると、どいつもこいつも身のこなしか
確かに、皆真剣な顔でいい動きをしていた。
「そう身構えなくても。君たちも歌いながらのパフォーマンスが様になってきてる。最初の頃の“慌てた象”に比べればだいぶマシだ」
「うんうん。歌声の伸びも良くなったし、音も外さなくなった。真面目にボイストレーニングを頑張ったおかげだな。えらいぞ、お前たち!よーし、じゃあ今日は1曲最後まで通してみるか!」
「「「はーい!」」」
そして、彼等は一曲踊り切る。
「よっしゃ!1回もトチらずに居踊りきれたぞ!途中で歌詞も飛ばなかった!」
「にゃっはー!オレ様も!1回も尻尾を踏んづけなかったんだゾ」
「さっすがジャミル先輩。物覚え悪いヤツらがこの短期間でパフォーマンスをモノにできるなんて」
「だろだろ~?ジャミルの教え方、すげーわかりやすいよな!俺も昔から世話になってんだ」
「ゴホン!俺の話はいいから……これで一通りの基礎は教えたはずだ。あとは各自で練習して、オーディションに挑んでくれ」
……ジャミルは自分の事になると話を変えようとするのは相変わらずなんだな。
「当日はライバルってことになるな。でも、お前たちの健闘、祈ってるぜ!」
「まあ、負ける気はしないけどな」
「先輩たち余裕じゃないっすか。ま、オレも落ちる気ないんで」
「うっとりする歌声とキレきれのダンスで審査員を魅了してやるんだゾ!」
「バイパー先輩、アジーム先輩、世話んなりました!押忍!」
やる気と自信が満ちてるな。
俺達は参加しねぇが、楽しめりゃいいんだけど。
「そうだ。君たちもうオーディション参加の申し込みはしたのか?」
「え?なんだソレ?」
「やれやれ、君たちもうっかりしていそうなタイプだしもしやと思っていたが……確認しておいて正解だった」
あー……俺達は参加する気全く無かったから、其処まで確認してなかった。
「あっはっは!さすがはジャミル。よくそんなこと気付くよなぁ」
「日頃から、何処かの誰かさんのおかげで慣れっこだからな。『VDC』のオーディションは事前に申し込みが必要だ。3年A組のルーク・ハント先輩が受け付けてる」
「あ、そういえばポスターにそんなこと書いてあったっけ」
「オーディション前日が申し込み期限のはずだ。忘れないうちに済ませておけよ」
「はい。ありがとうございます!」
「ルーク先輩は、金髪のおかっぱ頭に帽子がトレードマークだ。まあ……きっと会えばすぐわかるさ」
……それって、リドル達と有能なマジフト選手って事で見に行った奴じゃねぇか?