3日目 いい湯でしたね
女子会から数日後――
その日は残業を終えての帰宅となった。
自宅に着いたのは午後9時。それでも実家から通勤していた頃よりずっと早く帰れたのはありがたい。
終電を気にしながら仕事をしなくていい分、集中して取り組めたので、予定より30分早い上がりとなった。
先にお風呂に入ってゆっくりしようと神楽はいつものように湯沸し機のボタンに手を伸ばした。所が、「ピピピッ」と鋭い警告音が鳴り、パネルにはエラーの文字とエラー番号が表示されてしまった。
一度電源を切り、もう一度試したがやはり反応は一緒だった。
すぐに大家さんに電話を入れてみたが、つながらない。夜遅い時間帯だし、年配の大家さんの事だから、もしかしたらもう寝ているのかもしれない。連絡は翌日に回すことにして、神楽はふと近くに銭湯があった事を思い出した。
「こういう時こそ利用しないとネ!」
事務作業ですっかり凝り固まった肩を回す。ゆっくり温泉のお湯に浸かれば、凝りもきっとほぐれるはずだ。ルンルンと気持ちを高鳴らせながら神楽はいそいそと銭湯に向かう準備をした。
***
「はー、ごっさ気持ち良かったアル」
火照る頬を手団扇で扇ぎながら、神楽は空を見上げる。
漆黒の空には遠慮がちに浮かぶ二日月と満天の星が輝いていた。
「そういえば…」小さい頃、よく家族みんなで銭湯に入りに行ったっけ。4人で並んでお空を見上げながら帰ったの…懐かしいアル」
遠い記憶が頭の中に蘇る。
父と母、兄と神楽の4人で並んで手をつなぎ、暗い夜道を上機嫌に歌いながら帰った。
「湯冷めすると行けないからね」
そういって優しくカーディガンを着せてくれる母の笑顔が懐かしい。ふと、母が良く歌ってくれた子守唄を思い出してそっと口ずさんでみる。
神楽の小さな歌声は響く前にすっと広い空に吸い込まれて消えていく。遅い時間という事もあり、人通りもほとんどない。いつのまにか恥ずかしさすら忘れて気持ち良く歌っていたら後ろからくすくすっとどこかで聞いた笑い声がして、神楽はびくりと肩を震わせると振り返った。
その日は残業を終えての帰宅となった。
自宅に着いたのは午後9時。それでも実家から通勤していた頃よりずっと早く帰れたのはありがたい。
終電を気にしながら仕事をしなくていい分、集中して取り組めたので、予定より30分早い上がりとなった。
先にお風呂に入ってゆっくりしようと神楽はいつものように湯沸し機のボタンに手を伸ばした。所が、「ピピピッ」と鋭い警告音が鳴り、パネルにはエラーの文字とエラー番号が表示されてしまった。
一度電源を切り、もう一度試したがやはり反応は一緒だった。
すぐに大家さんに電話を入れてみたが、つながらない。夜遅い時間帯だし、年配の大家さんの事だから、もしかしたらもう寝ているのかもしれない。連絡は翌日に回すことにして、神楽はふと近くに銭湯があった事を思い出した。
「こういう時こそ利用しないとネ!」
事務作業ですっかり凝り固まった肩を回す。ゆっくり温泉のお湯に浸かれば、凝りもきっとほぐれるはずだ。ルンルンと気持ちを高鳴らせながら神楽はいそいそと銭湯に向かう準備をした。
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「はー、ごっさ気持ち良かったアル」
火照る頬を手団扇で扇ぎながら、神楽は空を見上げる。
漆黒の空には遠慮がちに浮かぶ二日月と満天の星が輝いていた。
「そういえば…」小さい頃、よく家族みんなで銭湯に入りに行ったっけ。4人で並んでお空を見上げながら帰ったの…懐かしいアル」
遠い記憶が頭の中に蘇る。
父と母、兄と神楽の4人で並んで手をつなぎ、暗い夜道を上機嫌に歌いながら帰った。
「湯冷めすると行けないからね」
そういって優しくカーディガンを着せてくれる母の笑顔が懐かしい。ふと、母が良く歌ってくれた子守唄を思い出してそっと口ずさんでみる。
神楽の小さな歌声は響く前にすっと広い空に吸い込まれて消えていく。遅い時間という事もあり、人通りもほとんどない。いつのまにか恥ずかしさすら忘れて気持ち良く歌っていたら後ろからくすくすっとどこかで聞いた笑い声がして、神楽はびくりと肩を震わせると振り返った。
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