2日目 それはまるでドラマのような

「小さい頃からの口癖…って言うか…へ、変でごめんなさいヨ」
普通に話そうとすればするほど焦って語尾にいつもの癖が出てしまう。これ以上そんな失態を晒したくなくて神楽は腕に抱えたカゴを抱えなおしてぺこりと銀時に頭を下げる。
「わ、私急いでますのでこれで…」
「ああ。あの、その荷物重くないですか?もしこれから帰る所だったら、方向一緒だし、オレ、持ちましょうか?」
くるりと銀時に背をむけた神楽の耳に銀時の優しい言葉が届く。けれどその親切心に警戒なく甘える勇気と余裕は今の神楽にはなかった。
「大丈夫アル。ホント、ごめんなさい」
ぶんぶんと首を横に振って断りを入れると、背中を向けたまま、神楽は足早にその場を走り去ってしまった。

***

「っていう事があってネ…」
時刻は午後6時。1時にスタートしたランチ会は大いに盛り上がり、神楽が作ったラザニアも、お妙が持参した超人気店のからあげも、あやめが持参した特大ピザも、そよが持って来てくれたお家のシェフの手作りサンドイッチとポテトサラダもあっと言う間に皿が開いてしまった。今代わりに並んでいるのは生ハムやチーズ、カルパスにナッツ類といったおつまみの類と、先輩方が飲む満々で持参したアルコールだ。
「え~っ素敵じゃなぁい、そういうの、運命の出会いっていうんじゃないかしら?」
「ちょっとぉ、それは言いすぎよぉ。お隣さんなんだもん、そりゃ買い物でばったり会うくらいあるでしょぉ。っていうか、お妙、あんた飲みすぎなのよ、そのビール何本目ぇ?」
“いやそういうさっちゃん先輩こそ、そのワインは何杯目アルカ?”という言葉をグッと飲み込んで神楽は目の前のデロンデロンの酔っぱらい二人を少しだけ静観する。こうなってしまった二人を無理に止めると逆効果だという事は学習済みだからだ。
一通り会社のオジサン上司共への溜まりに溜まった鬱憤を吐き出しきった所で、次は何かキュンキュンするような恋バナでもないかしら?とほろ酔いのお妙にしつこく問われ、そう急に話を振られてもネタがないし、けれど一応異性ではあるしまぁいっか、くらいの話で持ち出した昨日の出来事が以外にもこの先輩2人にはウケてしまったというわけだ。
「でも、神楽ちゃんはあまりその方の事、恋愛対象としては見られていないようですが…」冷静な見解で意見を述べてくれるのはこの場で唯一お酒に手を付けていないそよだ。もともとアルコールは強くないらしく、今日はソフトドリンクしか飲んでいない。人の恋沙汰を酒の肴にしようとたくらむ先輩2人とはちがって、生粋のお嬢様育ちのそよは真剣に神楽の気持ちを汲み取ろうと話を聞いてくれていた。
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