2日目 それはまるでドラマのような

「神楽ちゃん、新居の住み心地はどう?」
オフィスのデスク。昼休みを知らせるチャイムに神楽が伸びをしていると背後から声が掛かった。
「あっアネゴ!」
振り向けばにこやかに微笑むポニーテール姿の女性の姿がある。彼女は志村妙。神楽にとって会社の先輩であり、公私共に頼りになる友人でもある。
「うん、だいぶ慣れてきたアルヨ。今までみたいにごっさ早起きして出勤しなくてよくなったし、残業で遅くなっても、電車1本で帰れるからすごい助かってるネ」
神楽の返答にお妙もほっとした表情を浮かべる。
「そう、それはよかったわ。引越しの方も落ち着いたかしら?」
「もともと荷物少ないし、あっという間に終わっちゃったネ。あっ初日に家の周りも散策したアルヨ。そしたらごっさ可愛い雑貨屋さんとか、喫茶店とか見つけて。喫茶店はお持ち帰りも出来るんだけど、イートインスペースがとってもオシャレで、ランチとかもやってるみたいだから今度アネゴも一緒に食べに行こうヨ」
「まぁそんなに素敵なお店なの?じゃあぜひランチに行かなくちゃね」
ふふふっとお妙は嬉しそうに笑って答えた。
「ああ、小鳥が丘だったわよね、神楽さんがアパート借りたってトコ。あの辺り、最近オシャレな店が増えたのよね。大きい商業施設もあるし、コンビ二やスーパーも揃ってる。よかったじゃない?いい物件が見つかって」
よかったといいながらもどこか興味なさそうに言ってくるのはお妙の同期で猿飛あやめ神楽にとっては先輩その2の人物だ。
他人の事に興味なさげな話し方は決して悪気があるのではなくもともとの彼女の性格だ。最初は戸惑ったし、嫌われているのかとも思ったが、そんな物言いながらも何かと情に熱く、面倒見のいい先輩で神楽もよく世話になっている。
「神楽ちゃん、今度新しい神楽ちゃんのアパート、私も遊びに行ってもいいですか?憧れるんですよねぇ一人暮らしって」
3人の会話にそう言って目をキラキラと輝かせるながら加わってきたのは神楽の同期、徳川そよだ。根っから箱入り娘の彼女は自宅暮らしなだけではなく、会社への通勤も家の使用人が運転する車だ。電車通勤に憧れて何度か両親に直談判したものの、お金持ちの家庭の過保護すぎる両親に、そのわがままは通らなかったのだという。
大切にされているといえばそうなのだが、少々窮屈さも感じているそうだ。だからこそ、神楽の一人暮らしに対しての憧れも人一倍強いらしい。
「うん、遊びに来てヨ。一人暮らしって言っても、私の場合引っ越す前と場所以外はそんなに替わったトコはないし、何もない部屋だけど、今度皆で女子会とかしたら楽しいよネ」
「まぁそういう事なら、行ってあげなくもないけど」
やはりそっけないながらもしっかり乗り気のあやめの言葉に他のメンバーからクスクスと楽しげな笑い声が零れた。

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