4日目 懐かしい味

「母ちゃん?あー、それ職場でも言われたことあるワ。『銀さん、オレのお母さんですか?』ってさ。最近入った学生でよォ、オレからしたらよっぽどそっちの方が母ちゃんって感じなんだけどな。あーだ、こーだ細かい事うっせーけど、結構気の利く働き者のバイトでさ」
普段あまり自分の事を話さない銀時から、仕事の話を聞くのは初めてだ。もちろん、そこまで何度も会っているわけではないのだから、まだまだ知らない事の方が多いのは当たり前なのだが、それでも自分の知らなかった銀時の私生活の一面を聞けるのは何だか嬉しい。
「ふふっじゃあ銀ちゃんとそのバイト生は似たもの同士ネ」
神楽がそう返せば、困ったように眉根を寄せながらも銀時も口端を緩める。
「似たもの同士ねェ」
そんな他愛もない、けれど神楽にとっては新鮮なやり取りをしながらの帰り道もあっという間にアパートへと着いてしまった。少し名残惜しさを感じながらも銀時の部屋の前で
「それじゃあ…」
と手を上げた神楽に
「あっちょっと待ってくんね?」
そういうと銀時は一度部屋の中へと姿を消し、何やらタッパーを一つ抱えて戻ってきた。
「神楽ちゃんのお母さんついでに。『母ちゃんの手作り』ってわけにはいかねェけどよ。オレんち、ババァ…じゃなくて、伯母が時々差し入れって時々料理を届けてくれるんだけど、一人じゃ食べこなせなくてよォ。これ肉じゃが。もしよかったら神楽ちゃんもらってくんね?甥のオレがいうのもなんだけどよォ、うちのババァ、スナック経営してるから昔から料理だけは天下一品なんだぜ」
口は悪いが本当に伯母産の事を尊敬しているのだろう。誇らしげにそう言われては断るのも申し訳ない気がする。
「でも…いいアルカ?」
もう一度確認すると銀時はにこりと微笑む。「神楽ちゃん痩せすぎだからちゃんと食べた方がいいと思うけど?」
風呂屋への道すがら、グイと銀時に引き寄せられ、バランスを崩しかけた所を支えて貰った感触が蘇る。温泉のお湯で体はまだぽかぽかだけれど、それ以上にかぁっと頬に熱が集まるのを感じた。
「そ、それはもういいアル。でも、美味しそうだから肉じゃがは頂きます」
スッと手を差し出せば
「おう!食べる前にレンチンしてな」
という返事と共にタッパーが手渡される。
ぺこりと頭を下げて、今度こそ別れを告げると神楽は隣の自分の部屋へと向かった。
夕食は既に済ませていたが銀時に貰った肉じゃがが気になる。
「ちょっとだけ…味見させてもらっちゃおう」
借りたタッパーも早めに返した方がいいだろう。中身を手持ちの皿に移し買え、その中から少しだけ小分けにしてレンジに掛ける。
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