4日目 懐かしい味

そんな姿に神楽は
「じゃあ…銀ちゃん」
自分がちゃん付けならと、考えた末頭にポンと浮かんだ言葉をそのまま言葉にしてみる。
“いやいやいや、さすがにこんな大人の、しかも多分私より歳上の男の人にちゃん付けって…”
慌てて謝ろうとした神楽だったが、しかし銀時の反応は神楽の心配をよそにまんざらでもないという満足げな顔をしている。
「銀ちゃん…か。いいなそれ!オレのことそーいう風に言ってくれる人いないから神楽ちゃんだけの呼び方だし、んじゃそれで決まりな」
爽やかな笑顔で頷かれれば神楽も納得するしかない。そうして、二人の関係は「ただの隣人から『友達』へと一歩進展したのであった――。

***

そうこう話を弾ませての銭湯までの道のりはあっという間で、銭湯を前に分かれるとそれぞれの姿は男湯、女湯へと消えて行った。
帰りは特に時間の待ち合わせをしているわけではない。
けれど、神楽は急ぎ足で帰り支度をすると足早に銭湯を出る。
「おっもう上がったの?」
銭湯の暖簾をくぐると外からそんな声が飛んできた。
「ごめんアル。また待たせちゃった…」
銭湯の前に置かれた簡素なベンチ、そこでイチゴ牛乳のパックを片手ににこにこと微笑む銀時の髪は街灯に照らされてキラキラと光ていた。けれど神楽は思うのだ、街灯に反射する銀時の銀髪も綺麗だけれど、月に照らされるその髪はふんわりわたあめのように優しいのに、目が離せなくなるほど美しいのだと。
「そんなに待っちゃいねェよ、それより神楽ちゃん、ちゃんと髪乾かしてねェだろ?」
つんつんと銀時は自分の襟足を指差す。
「へっ?神楽が慌てて自分のうなじに触れれば、完全に乾ききっていない髪から雫が落ちる」
「そんな慌てなくていいから、ちゃんと乾かさねェと。風邪引いちまうぞ?」
「うー…そうアルナ」
困ったように笑う銀時の姿に神楽はちょっとだけ肩を落としてこくんと頷いた。
「銀ちゃんって時々、お母さんみたいネ」
銭湯からの帰り道、月に照らされて伸びる影を追いかけるように銀時と肩を並べて歩きながら神楽はぽつりとつぶやく。
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