4日目 懐かしい味

最初に比べれば随分警戒は解けたけれど、本人は無自覚ながらその外見の愛らしさからナンパされる事が多い神楽にとって男性はどちらかといえば苦手な存在だ。お妙の弟である新八や職場の上司とは問題なく普通に話せるのだが、まだその距離感が完全につかめない銀時に対しては、完全に打ち溶けるまでもう少し時間がかかりそうだ。
そんな神楽のぎこちない反応にも、特に気にした様子はなく銀時は穏やかな口調で話を続ける。
「そっか、遅くまでお疲れさん。あそこの風呂屋、銭湯ってうたってっけど天然温泉だし、肩こりとかにも効果あるだよなァ。それもあって、昼間行くとじいちゃんばあちゃんで紺出る時もあるけど」
けらけらと屈託なく笑う銀時の笑顔につられるように神楽もくすりと笑いをこぼした。
と、“チリンチリン”と二人の後ろからベルの音が響く。神楽が振り返ると迫り来る自転車の姿が見える。
“えと、どっちに避ければ…”車道側んは銀時が立っており、反対側には建物の生垣がある。どちらに避けるべきか、神楽の動きが一瞬止まる。思わず固まってしまった神楽の腰をぐいっ誰かが引き寄せる。思わずバランスを崩しそうになった神楽はぎゅっと目を閉じたが、その体はがっしりと何かに支えられて倒れずに済んだ。
おそるおそる神楽が目を開ければ上から優しいテノールの声が降ってくる。
「急に悪りィ。大丈夫だった?」
神楽がゆっくりと顔を上げると心配そうに覗きこむ銀時の顔がある。
思わず目を見開いてこくこくと頷けばほっとしたように笑みをこぼして銀時の手が神楽から離れる。
「あー、びっくりさせてスンマセン。とっさだったからつい、言葉で知らせる前に体が動いちまって…」
くしゃくしゃと頭を搔く銀時に神楽はブンブンと首を横に振って答えた。
「あ、ありがとアル!」
ぺこりと神楽は頭を下げる。
「ぎ、銀時さんって力持ちアルナ」
“な、何かしゃべらなくちゃ…”
二人の間に生まれた微妙な沈黙に耐え切れず神楽はそう素直な気持ちを言葉に乗せる。
「へ?あ、ああ、ははっ。別にそんなでもないと思いますよ。神楽さんすっげー軽かったし。ちゃんと食べてます?」
緊張してしまったのは神楽だけではないようだ。必死に会話をつなげようと言葉を続ける。
「た、食べてますヨ。あ、私こう見えて結構大食いアルヨ。この前は上司のおごりだっていうから職場のみんなと仕事帰りにラーメン食べに行ったんだけど、そこの餃子がごっさおいしくって!ラーメンとは別につい3皿も食べちゃって上司に笑われるし…」
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