4日目 懐かしい味

「うーん、疲れた!でも何とか定時終了ねっ!!」
ぐっと思い切り両腕を伸ばしてお妙が伸びをする。
「あたりまえじゃない、今日は花金なのよっ!残業なんてやってらんないわよ!」
鼻息荒くお妙の言葉に答えるのはあやめだ。
「さっこれから街に繰り出すわよ~。その為に今日は必死に働いたんだからっ!!」
一息つく暇さえもったいないと言いたげに、あやめはそそくさと退勤の準備に入っている。
「神楽ちゃんそよちゃん、急なんだけど、今日この後、何か予定あるかしら?」
時刻は午後6時。一週間の終わりにほっと息を付きながら終業のための片付けに入っていた神楽とそよにお妙がそう声を掛けてきた。
「ほら、うちの新ちゃんがね、最近アルバイトを始めたんだけど、今日はそのお店に飲みに行こうって、さっき猿飛さんと話してたの」
その言葉に神楽とそよが顔を見合わせる。普段は4人で同じ部署に所属しており、和気藹々とたまには世間話をしながら仕事をしているのだが、今日は急な来客があり、そよと神楽は午後から会議室へのお茶出しに借り出されていた。きっとその間にまとまった話なのだろう。
「えっと…先輩すみません!今日は、兄と食事に行く約束があって…」
バツが悪そうにそよが謝るとお妙はひらひらと手を振って気さくな笑顔で答える。
「あら、ならいいのよ。兄妹水入らず?徳川さんは、お兄さんと仲がいいのね。こっちのことは気にしないで。急なお誘いだったし、また機会があったらお誘いするわ。神楽ちゃんはどうかしら?」
お妙の視線が神楽へと向けられる。
「あっあの、私も今日はチョット約束があって…」
大好きなお妙のお誘いだ。随分と心が揺れたがそれでも今日の神楽には優先させたい予定がある。
「まぁめずらしい。でもそれなら仕方ないわね。今度はちゃんと前もって予定を立てるから、そしたらまたみんなでご飯でも行きましょ。というわけで猿飛さん、今日は二人きりだけど、めいっぱい楽しみましょうね」
「もちろん、望むところよー!」
きらりとメガネの奥の瞳を輝かせて、あやめが気合十分の返事を返す。
「あっじゃあ私…これで失礼しますアル」
「ええ、またね。良い週末を」
にっこりと微笑むお妙とその隣でいそいそと帰り支度を進めるあやめに礼儀正しくぺこりとお辞儀をして、同僚のそよに小さく手を振ると、神楽は足早に会社を後にする。
“約束、かぁ…。ホントは約束ってわけじゃないんだけど、それでも、私にとっては大事な予定なのよネ”
自然と早くなる足で神楽はまっすぐ自宅へと向かった。
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