真昼の白いお月さま

「なるほどね。新八も、奥にいるにしても静か過ぎるって言ってたが、そういうことか」
ふっと銀時の顔に小さな笑みがこぼれる。
「ったく無防備すぎんだろ」
銀時がゆっくりと神楽の元に歩みを進めても神楽が起きる気配はない。
白い頬に長いまつげ。呼吸に合わせて小さく上下する肩。
「おーい、神楽ちゃーん」
あまりに気持ちよさそうに眠る神楽の姿に銀時はわざと声を掛けてみる。けれど神楽から返る反応はなし。
「ちっ起きねェか」
新八に起された腹いせに神楽を起してやろうと声をかけたが、銀時以上に神楽の眠りは深いようだ。
「まさか寝た振りじゃねェよな」
そう思ってぐっと神楽に顔を近づけてみるも硬く閉じられた瞼は開く気配がない。けれど、何気なく覗きこんだその顔に銀時は視線を外せなくなってしまった。少しだけ大人になりかけの年頃の少女。どこかあどけなさの残る一方で、凛とした美しさがある。白い頬に掛かる髪をゆっくりと掻き揚げて、ぐっと顔を近づける。そのまま、うっすらと桜色に染まる神楽の唇に自分のそれをそっと重ねた。
柔らかくて暖かな感触にドクンと心臓が跳ねる。自分の心音にはっと我に返って銀時は身を引く。
「っ!なにやってんだか、オレはっ…」
くしゃくしゃと前髪を搔きながらちらりと神楽を見やるも、閉じた瞼は開く気配がない。
「おいおい、白雪姫でも眠りの森の美女でも、王子様のキスでは目を覚ますんだぜ?」
そんな皮肉も吹き抜ける秋風に軽く流されていく。
もう一度、神楽の頭に伸ばした手で、そっと優しく髪を梳いて、名残惜しそうに手を離そうとした所で、ふと銀時の手が止まった。
その視線は神楽から、開け放たれた窓の外へと向いている。そこに広がるのは雲ひとつない青空。夏の湿気の抜けた爽やかな風が揺らすのは、朝新八が干した洗濯物。気持ち良さそうに揺れるそれを見て、もう一度銀時は神楽へと視線を移す。
「オレに掛かってたブランケット、もしかして神楽が?」
新八が掛けて行ってくれたのだろうと思っていたが、今ははっきりそうじゃないと言える気がした。なぜなら、窓の外にはまだ揺れる洗濯物が残っているからだ。
新八の事だから、ブランケットを取りこんだなら洗濯物だって取りこむはずだ。それにさっきまで買い物い出掛けていて、帰って早々回覧版の追加の知らせを手に急ぎ足で出て行った新八に、洗濯物や布団を取りこむ余裕があったとは思えない。そして目の前でまだすやすやと眠る神楽。その下には干したての敷布団があるが、その上には何も羽織られていない。ソファーで眠る銀時を見つけて、神楽がブランケットだけ取りこんで掛けたのだ。
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