真昼の白いお月さま

「さん…銀さん」
控えめに掛けられる新八の声に、銀時の意識がゆっくりと浮上する。
「ん、何?」
寝ぼけ眼で見上げた視界の先に新八の申し分けなさそうな顔が映った。
「銀さん、実は今、下でお登勢さんに会ったんですけど、回覧版に挟み忘れた文書があったそうなんです。だけど僕、さっき買い物ついでにもうペドロさんとこに回しちゃってて…。なので今から追加の文書届けてきますので、買ってきた食材、冷蔵庫に入れといてもらえますか?」
「んーなこと神楽に頼めよォ」
気持ち良く昼寝をむさぼっていた所を起された理不尽さに不満全開でそう答えると申し訳なさそうにしていた新八の口調が変わる。
「あんたねェ、僕が買い物に行く前から寝てるんだから、そろそろ起きて仕事してもいいと思いますよ。それに、神楽ちゃんはいないんじゃないですか?奥にいるにしては静かすぎるし、多分外で遊んでますよ。ってわけで、牛乳とかお魚とか、早めに冷蔵庫入れないと困るものもあるのでよろしくお願いしますね!」
半ば一方的にそう告げると新八は慌てた様子で玄関から出て行った。
「はー・・・めどくせェ」
ぼやきの言葉といっしょに大きな伸びをして銀時は横になっていたソファから身を起こす。
その拍子に腹部に掛かっていた何かがはらりと床に落ちる。
「ん?何だ?」
銀時が拾いあげたそれは薄手のブランケットだった。柔らかい手触りに、ふわりとかすかに鼻をかすめるのは暖かなお日様の匂い。
“そういやこれ、新八が今朝洗濯してたやつだよな”
ようやく窓から入ってくるようになった涼しい秋風にうとうとしてしまった自分に新八が掛けてくれたのだろうか?拾ったブランケットを軽くたたんでソファに掛けると銀時はテーブルの上で存在感を強調する2つの買い物袋を提げて台所へと向かった。冷蔵保存が必要なものを一通り冷蔵庫に詰め、その他のものも定位置へと収納して、銀時は手元に残ったひとつの物に視線を落とした。それは神楽の大好物の『酢昆布』。きっと買い物に行く新八に買ってきてくれとねだったのだろう。
しかしそれを渡す相手である神楽の姿がない。新八にパシリを頼んでおきながらそれを忘れて遊びに行くだろうか?それも大好きな酢昆布を忘れて。
銀時はふと思い経ち自分の寝室へと向かった。
襖をそっと明けるとふわりと秋の涼しい風が銀時の髪を揺らす。窓が開いたままになっているのは、新八が朝から布団を干していたせいだ。
けれど、その肝心の布団は今、ベランダから室内へと引きずりこまれ、その上では幸せそうな寝息を立てる神楽の姿があった。
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