『いつかの夏祭り』
雨に打たれた体は神楽が思っていた以上に冷え込んでいた。温かい湯船に浸かって芯まで温まったおかげか、うっすらと上気する頬をタオルで冷やしながら居間へと向かった神楽の耳に飛び込んできたのは誰かと電話をしているような銀八の声だった。
邪魔しては悪いと扉の前で待っていたつもりが立ち聞きのようになってしまい少しだけ罪悪感を覚える。神楽が恐る恐る戸を開けると、銀八はいつもの穏やかな笑顔で迎えてくれた。
「温まったか?」
そう尋ねる手にはまだ黒電話の受話器が握られている。
「うん、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げれば受話器を置いた銀八の手が、神楽の首に掛かっていたタオルを取りワシャワシャとその髪を搔きまわした。
「じ、自分で出来るアル」
恥ずかしそうに答える神楽にクスクスと楽しげな銀八の笑い声が頭上から降ってくる。
「ちゃんと乾かさねぇと風引くからな。ドライヤードライヤーっと」
脱衣所へと姿を消した銀八がドライヤーを手に戻ってくる。
「ほら、そこに座れよ」
そう言われれば抵抗する理由もなく、神楽は勧められた硬めのソファーにちょこんと腰を下ろした。先程聞こえて来た電話の内容が少しだけ気になったが、意外にもその内容は銀八の方から語られた。
「たった今、下から電話があってよォ…」
ドライヤーの向こうに銀八の声が聞こえる。返事をする代わりにこくんと縦に首を振って頷く神楽に銀八は言葉を続けた。
「今日は、ババァのヤツ、従業員のキャサリン家に泊まってくるだとさ」
その言葉に神楽は思わず銀八を振り返った。
「ほら、まだ途中だから。ちゃんと前を向いてなさい」
思わず授業中に受ける注意のような銀八の口調に
「あ、はい」
と神楽も思わず生徒モードで素直に返してしまう。
「…もしかして、私が来ちゃったから、気を遣わせちゃったアルカ?」
恐る恐るそう口を開けば、銀八はのんびりと
「そんなこたねェよ」
と口を開いた。
「時々あんだよ。こういう事。ここからもうちょい先に『かまっ娘倶楽部』って店があってな、今日は早めに店閉めて、さっきまでウチの店に居た常連のオッサンどもと、既にそこで飲んでるらしいんだワ。んで、そこからだとこっちに戻ってくるより従業員のキャサリン家の方が近くてな」
邪魔しては悪いと扉の前で待っていたつもりが立ち聞きのようになってしまい少しだけ罪悪感を覚える。神楽が恐る恐る戸を開けると、銀八はいつもの穏やかな笑顔で迎えてくれた。
「温まったか?」
そう尋ねる手にはまだ黒電話の受話器が握られている。
「うん、ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げれば受話器を置いた銀八の手が、神楽の首に掛かっていたタオルを取りワシャワシャとその髪を搔きまわした。
「じ、自分で出来るアル」
恥ずかしそうに答える神楽にクスクスと楽しげな銀八の笑い声が頭上から降ってくる。
「ちゃんと乾かさねぇと風引くからな。ドライヤードライヤーっと」
脱衣所へと姿を消した銀八がドライヤーを手に戻ってくる。
「ほら、そこに座れよ」
そう言われれば抵抗する理由もなく、神楽は勧められた硬めのソファーにちょこんと腰を下ろした。先程聞こえて来た電話の内容が少しだけ気になったが、意外にもその内容は銀八の方から語られた。
「たった今、下から電話があってよォ…」
ドライヤーの向こうに銀八の声が聞こえる。返事をする代わりにこくんと縦に首を振って頷く神楽に銀八は言葉を続けた。
「今日は、ババァのヤツ、従業員のキャサリン家に泊まってくるだとさ」
その言葉に神楽は思わず銀八を振り返った。
「ほら、まだ途中だから。ちゃんと前を向いてなさい」
思わず授業中に受ける注意のような銀八の口調に
「あ、はい」
と神楽も思わず生徒モードで素直に返してしまう。
「…もしかして、私が来ちゃったから、気を遣わせちゃったアルカ?」
恐る恐るそう口を開けば、銀八はのんびりと
「そんなこたねェよ」
と口を開いた。
「時々あんだよ。こういう事。ここからもうちょい先に『かまっ娘倶楽部』って店があってな、今日は早めに店閉めて、さっきまでウチの店に居た常連のオッサンどもと、既にそこで飲んでるらしいんだワ。んで、そこからだとこっちに戻ってくるより従業員のキャサリン家の方が近くてな」
