『いつかの夏祭り』

さすがに追いつかない思考と心の準備に神楽は必死にそう答えたものの、だからといって別の良い方法を思いつかないのも確かで。
「気にすんなよ、さっきも言ったろ。ここオレの実家なんだワ。普段はババァ…オレの育ての親で、伯母に当たる人が一人で住んでんだけど、今は下の店に出てるから、明け方まで上がって来ねぇし、まーオレのシャツとか着替えいくつか置いてるから、今日はそれ着て帰れよ。あっ、この期におよんで銀ちゃん先生の加齢臭がしそうな服は嫌だとかわがままは言うなよ?」
「そ、そ、そんな事…言わないもんっ!」
強気な台詞のわりには、俯き加減に答える神楽の声は消え入りそうに小さかったが、予想した辛辣な言葉とは180度真逆の反応に、銀八はふっと安堵の笑みをこぼして昇りきった階段先の玄関の戸口を開いた。

***

「…そういえば、銀ちゃん先生、今日は何でそんな格好してるアルカ?」
銀八が用意してくれたタオルを玄関先で受け取りながら、少しだけ冷静になった頭に浮かんだ疑問を神楽は素直にぶつけてみる。
「ああ、店の手伝いの時はいつもこの格好なんだよ。ウチはババァが和風スナックやっててよォ。雰囲気合わせるためにな。時間のある週末は時々手伝いに入ってんだよ。今日はみんな祭りの方に行ってたんだろうな、客足もまばらでよ。祭り帰りの客に期待したが、あいにくとそっちもこの雨ときた。おかげでお役ごめんで先に上がれって言われて、店を出た所でまさかのお前にバッタリってわけさ」
「ふーん、それでその格好…。あ、でもいつもの白衣もいいけど、その気流しもなかなか似合ってるヨ」
“余計なお世話だ”なんて言葉が返ってくる事を予想してた神楽だったが、それに反して一瞬戸惑うような顔をしながら視線をそらす銀八の耳は赤く染まっていた。
「そ、それよか風呂、入るだろ。タオルと着替え用意するから」
「…う、うん。お世話になりますアル」
銀八に案内されるまま小さく頷いた神楽は脱衣所へと向かった。

***

「…だからそんなんじゃねーって。ただの教え子。…んなわけあるかよ。えっ!?ちょ、それ長谷川さん情報だろ?んなモン信じんなよ!はぁ?ったく、もしもし?もしもーし?」
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