小さな嘘
「神楽ちゃーん、ちょっとこっちきて銀さんと話しない?」
「…」
押入れから返る声はない
そう易々と心を開く気はないらしい。
記憶にないとはいえ、自分は本当に間違いを犯してしまったのだろうか?銀時の頭の中をさっちゃん事件がふと蘇る。誤解だったとはいえ、それがはっきりするまでの神楽はどこかよそよそしく、自分を見る目がとても冷やかだったのをリアルに思い出す。
「あっそうだ!お前、昨日のイチゴ牛乳の件、今出てきたら許してやっぞ。あと酢昆布2箱おごってやる」
重い沈黙に『こんなんじゃつられねーか』と半分あきらめかけたその時、ススーッと後ろで押入れの開く音がした。
「ほんとアルな?」
振り返ると神楽が立っていた。
「銀ちゃんほんとに酢昆布おごってくれるアルか?」
ちょっとだけす拗ねたような顔だがちゃんと銀時と視線を合わせて神楽がしゃべる。
「約束は守る」
内心ほっとして銀時が答えた。
「じゃあ昨日のイチゴ牛乳ももう怒ってないアルか?」
今度は神楽の瞳少しだけ不安げな色に曇る。
そんな様子に思わず銀時は口元が緩んだ。『本気で怒れるわけねーよ』
――ちょうど昨夜、ふろ上がりの神楽にイチゴ牛乳をねだられた銀時はそれが最後の一杯だと確認せずに譲ってしまったのだ。
後に気付いた時には既に遅し。『お前さぁ最後の一杯だって分かってたら銀さんに残しとくべきじゃねーの?』なんて軽い気持ちで神楽につっかかり、『ちゃんと把握してない銀ちゃんが悪いネ』とご最もな説教を喰らいそのまま気晴らしに長谷川を誘って飲みに出かけたのだだから神楽は銀時が怒って飲みに行ってしまったのだと、そう思っているのだ――
そんな神楽の素直さを利用するようで少し気が引けたが、それに加えて酢昆布で釣る作戦も功を制したようで神楽はこうして出てきてくれた。これで取り合えず話の席は設けられたわけだ。
「ああ、怒ってねぇからここ座れよ」
銀時はだらけた姿勢から座りなおすと空いた隣をポンポンと叩いてみせる。
神楽はその言葉に素直に従い、銀時の隣に座るとソファーの上で膝を抱きその上にちょこんと小さな頭を乗せた。
まだお団子に結われていない髪の毛がさらさらと肩から落ちる。
「神楽…悪かったよ。覚えてない事も、その…もしかしたら神楽ちゃんにそ、そんな事しちゃったかもしれないこともさ…」
「?そんなことって何アルか?」
澄んだ青いまなざしがきょとんとして銀時を見つめる。
「えっだから…そんなことは…アレだよ、お前が一番よく分かってんだろ、それ怒ってんだし」
銀時は顔を赤らめて俯くと頭をポリポリとかく
「私が怒ってること、銀ちゃんが今朝私を追い出そうとしたことネ」
「へ?それだけ?」
思わぬ神楽の答えに銀時は気の抜けた返事を返す。
「それだけって何ヨ!銀ちゃんから誘ってきたくせにっ!」
ぷうっと頬を膨らませると神楽はまたジワリと涙を浮かべる。
「あー悪かったよ、俺が悪かったってー」
ぶんぶんと手を振って銀時は冷や汗を浮かべる。
「…」
押入れから返る声はない
そう易々と心を開く気はないらしい。
記憶にないとはいえ、自分は本当に間違いを犯してしまったのだろうか?銀時の頭の中をさっちゃん事件がふと蘇る。誤解だったとはいえ、それがはっきりするまでの神楽はどこかよそよそしく、自分を見る目がとても冷やかだったのをリアルに思い出す。
「あっそうだ!お前、昨日のイチゴ牛乳の件、今出てきたら許してやっぞ。あと酢昆布2箱おごってやる」
重い沈黙に『こんなんじゃつられねーか』と半分あきらめかけたその時、ススーッと後ろで押入れの開く音がした。
「ほんとアルな?」
振り返ると神楽が立っていた。
「銀ちゃんほんとに酢昆布おごってくれるアルか?」
ちょっとだけす拗ねたような顔だがちゃんと銀時と視線を合わせて神楽がしゃべる。
「約束は守る」
内心ほっとして銀時が答えた。
「じゃあ昨日のイチゴ牛乳ももう怒ってないアルか?」
今度は神楽の瞳少しだけ不安げな色に曇る。
そんな様子に思わず銀時は口元が緩んだ。『本気で怒れるわけねーよ』
――ちょうど昨夜、ふろ上がりの神楽にイチゴ牛乳をねだられた銀時はそれが最後の一杯だと確認せずに譲ってしまったのだ。
後に気付いた時には既に遅し。『お前さぁ最後の一杯だって分かってたら銀さんに残しとくべきじゃねーの?』なんて軽い気持ちで神楽につっかかり、『ちゃんと把握してない銀ちゃんが悪いネ』とご最もな説教を喰らいそのまま気晴らしに長谷川を誘って飲みに出かけたのだだから神楽は銀時が怒って飲みに行ってしまったのだと、そう思っているのだ――
そんな神楽の素直さを利用するようで少し気が引けたが、それに加えて酢昆布で釣る作戦も功を制したようで神楽はこうして出てきてくれた。これで取り合えず話の席は設けられたわけだ。
「ああ、怒ってねぇからここ座れよ」
銀時はだらけた姿勢から座りなおすと空いた隣をポンポンと叩いてみせる。
神楽はその言葉に素直に従い、銀時の隣に座るとソファーの上で膝を抱きその上にちょこんと小さな頭を乗せた。
まだお団子に結われていない髪の毛がさらさらと肩から落ちる。
「神楽…悪かったよ。覚えてない事も、その…もしかしたら神楽ちゃんにそ、そんな事しちゃったかもしれないこともさ…」
「?そんなことって何アルか?」
澄んだ青いまなざしがきょとんとして銀時を見つめる。
「えっだから…そんなことは…アレだよ、お前が一番よく分かってんだろ、それ怒ってんだし」
銀時は顔を赤らめて俯くと頭をポリポリとかく
「私が怒ってること、銀ちゃんが今朝私を追い出そうとしたことネ」
「へ?それだけ?」
思わぬ神楽の答えに銀時は気の抜けた返事を返す。
「それだけって何ヨ!銀ちゃんから誘ってきたくせにっ!」
ぷうっと頬を膨らませると神楽はまたジワリと涙を浮かべる。
「あー悪かったよ、俺が悪かったってー」
ぶんぶんと手を振って銀時は冷や汗を浮かべる。