堕天使シリーズ (流血・暴力表現注意)
我が名はルキフェル。堕天使だ。
今日もいつもと同じ、そして充実した一日であった。
吸い込んだ空気が、私の肺も心も満たしてくれる。
ふと振り返ると、そこには夕日に照らされた会社がある。
その窓には明かりがついている。
あそこにいる社畜様達は今頃、帰り支度をしているところだろうか?
そういえば先ほどあの会社から出てきたあの二人組は何者だったのであろうか? 見覚えのない顔であったが、制服を見る限りウチの関連会社ではなさそうだし、怪異の類ではなかろうか。
だとしたら、一体どこから来たのか? まさか、封印されし魔の洞窟が解放されたというのだろうか。これはいけない。至急調査する必要があるだろう。
私は踵を返し歩き始める。もうすっかり日は暮れてしまっているが問題はない。
むしろ夜の闇に紛れてしまえばこそ私の姿など見えなくなってしまうだろうから。
これならば誰にも邪魔されることもなく自由に行動することができるというもの。
「うわああぁぁ!助けてくれぇええ!!」
悲鳴の方へと振り向くと、スーツ姿の若い男が必死の形相で駆けてくるではないか。いったい何があったというのだ?それにあの男……どこか見覚えがあるような……。
はっ!?まさか!!あれは先程私が眺めていた会社の人間ではないだろうか?なんたることだ。奴らがこの世に蘇っていたとは!!やはりあの会社は魔窟なのだな。そうとわかればもはや放っておくわけにもいくまい。奴らをこのまま放置しておけばまた犠牲者が出てしまうかもしれないからな。よし決めたぞ。今夜中にでも殲滅してやるとするかな。
だがしかし。今の私はあくまで堕天使である。いかに私が最強最悪だとしても、素手で立ち向かうにはあまりに分が悪いだろう。何か武器になるようなものが必要だな。
ちょうどいい所に良いものがあるじゃないか。私は近くの電信柱へ飛び乗る。
電柱の天辺に立つと街を一望できるのだが、ここは絶好の場所と言えよう。
目の前にある電線に触れないように注意しつつ周囲を見渡していると、運良く一筋の雷光が空を裂いた。私はその稲光を掴み取る。
するとたちまち手の中には黒い大鎌が握られていた。
そうこれこそが我が主『神』より授かりし究極の破壊の力。名を『デスサイズ』と言う。まさに今の私に相応しい武具であるといえる。
よし、準備完了だ。
それではこれより敵地への突撃を開始することとしよう。覚悟するがいい。貴様らに明日はこない!! まず最初に目に付いたものがいた。
それは道端に転げ回るようにして倒れている若い女性だった。どうやら彼女はすでに事切れてしまっているようだ。彼女のそばには血溜まりがあり、そしてその上で倒れ伏す別の女性の姿があった。
こちらも既にこときれてしまっているようで動く気配がない。
彼女らの周りにはすでに人が集まっていて警察を呼ぶ者や写真を撮るものなどそれぞれ好きなように動き回っていて非常に混沌としている。
私はその中でただひとりだけ平然とした表情のまま立っている青年を見つけ、彼の元へと向かった。おそらく彼はこの中の中心人物に違いないだろうと考えたからだ。
青年は私の接近に気がついたようでこちらを振り向いた。そして私の姿を捉えるなり驚いた様子を見せたもののすぐに元の冷静な顔に戻り問いかけてきた。
「君も見たのか?」
その問いに対して無言を貫くことで肯定の意を示すと青年はさらに続けた。
「ということはキミもこの人たちと同じなのかい?だったら残念だよ」
彼が言う同じというのは怪異に襲われた被害者という意味でのものだ。
ならばここではっきりと言っておかねばならないだろう。なぜなら私は決してこの者達の仲間などではないし、彼らのことを憐れんでなどいないということを。
そもそも私は人間でも怪異でもなく堕天使であって決して悪魔とかそういう類のものとは違うのだ。だから断じて彼らに同情する気持ちなどありはしない。
それに彼らもまた自ら進んで死地に足を踏み入れたという側面もある。だからこそ彼らが殺されてしまったところで自業自得だとしか言いようが無いのである。
そんなこともわからない愚か者には制裁を下すべきであろう。そう考えた結果、私は鎌を構えて彼へと突進していった。
突然の襲撃に慌てたのか彼は一瞬戸惑うような様子を見せた。しかしその程度の動揺で回避が遅れてしまうあたり、まだ経験不足といったところだろうか。
彼の身体は綺麗に二つに分断されてその場に倒れた。もちろん即死である。
さてと残党を見つけるとするか。それにしても何故こんなに多くの人間が死んだのだろうか?いくら夜とはいえあまりにも人が少なすぎる気がするが……。
(鎌から滴る血が赤黒く影を彩る。)
まぁそんなことはどうでもいいか。それよりも次の獲物を探し出すことに専念すべきだ。
~Fin~
今日もいつもと同じ、そして充実した一日であった。
吸い込んだ空気が、私の肺も心も満たしてくれる。
ふと振り返ると、そこには夕日に照らされた会社がある。
その窓には明かりがついている。
あそこにいる社畜様達は今頃、帰り支度をしているところだろうか?
そういえば先ほどあの会社から出てきたあの二人組は何者だったのであろうか? 見覚えのない顔であったが、制服を見る限りウチの関連会社ではなさそうだし、怪異の類ではなかろうか。
だとしたら、一体どこから来たのか? まさか、封印されし魔の洞窟が解放されたというのだろうか。これはいけない。至急調査する必要があるだろう。
私は踵を返し歩き始める。もうすっかり日は暮れてしまっているが問題はない。
むしろ夜の闇に紛れてしまえばこそ私の姿など見えなくなってしまうだろうから。
これならば誰にも邪魔されることもなく自由に行動することができるというもの。
「うわああぁぁ!助けてくれぇええ!!」
悲鳴の方へと振り向くと、スーツ姿の若い男が必死の形相で駆けてくるではないか。いったい何があったというのだ?それにあの男……どこか見覚えがあるような……。
はっ!?まさか!!あれは先程私が眺めていた会社の人間ではないだろうか?なんたることだ。奴らがこの世に蘇っていたとは!!やはりあの会社は魔窟なのだな。そうとわかればもはや放っておくわけにもいくまい。奴らをこのまま放置しておけばまた犠牲者が出てしまうかもしれないからな。よし決めたぞ。今夜中にでも殲滅してやるとするかな。
だがしかし。今の私はあくまで堕天使である。いかに私が最強最悪だとしても、素手で立ち向かうにはあまりに分が悪いだろう。何か武器になるようなものが必要だな。
ちょうどいい所に良いものがあるじゃないか。私は近くの電信柱へ飛び乗る。
電柱の天辺に立つと街を一望できるのだが、ここは絶好の場所と言えよう。
目の前にある電線に触れないように注意しつつ周囲を見渡していると、運良く一筋の雷光が空を裂いた。私はその稲光を掴み取る。
するとたちまち手の中には黒い大鎌が握られていた。
そうこれこそが我が主『神』より授かりし究極の破壊の力。名を『デスサイズ』と言う。まさに今の私に相応しい武具であるといえる。
よし、準備完了だ。
それではこれより敵地への突撃を開始することとしよう。覚悟するがいい。貴様らに明日はこない!! まず最初に目に付いたものがいた。
それは道端に転げ回るようにして倒れている若い女性だった。どうやら彼女はすでに事切れてしまっているようだ。彼女のそばには血溜まりがあり、そしてその上で倒れ伏す別の女性の姿があった。
こちらも既にこときれてしまっているようで動く気配がない。
彼女らの周りにはすでに人が集まっていて警察を呼ぶ者や写真を撮るものなどそれぞれ好きなように動き回っていて非常に混沌としている。
私はその中でただひとりだけ平然とした表情のまま立っている青年を見つけ、彼の元へと向かった。おそらく彼はこの中の中心人物に違いないだろうと考えたからだ。
青年は私の接近に気がついたようでこちらを振り向いた。そして私の姿を捉えるなり驚いた様子を見せたもののすぐに元の冷静な顔に戻り問いかけてきた。
「君も見たのか?」
その問いに対して無言を貫くことで肯定の意を示すと青年はさらに続けた。
「ということはキミもこの人たちと同じなのかい?だったら残念だよ」
彼が言う同じというのは怪異に襲われた被害者という意味でのものだ。
ならばここではっきりと言っておかねばならないだろう。なぜなら私は決してこの者達の仲間などではないし、彼らのことを憐れんでなどいないということを。
そもそも私は人間でも怪異でもなく堕天使であって決して悪魔とかそういう類のものとは違うのだ。だから断じて彼らに同情する気持ちなどありはしない。
それに彼らもまた自ら進んで死地に足を踏み入れたという側面もある。だからこそ彼らが殺されてしまったところで自業自得だとしか言いようが無いのである。
そんなこともわからない愚か者には制裁を下すべきであろう。そう考えた結果、私は鎌を構えて彼へと突進していった。
突然の襲撃に慌てたのか彼は一瞬戸惑うような様子を見せた。しかしその程度の動揺で回避が遅れてしまうあたり、まだ経験不足といったところだろうか。
彼の身体は綺麗に二つに分断されてその場に倒れた。もちろん即死である。
さてと残党を見つけるとするか。それにしても何故こんなに多くの人間が死んだのだろうか?いくら夜とはいえあまりにも人が少なすぎる気がするが……。
(鎌から滴る血が赤黒く影を彩る。)
まぁそんなことはどうでもいいか。それよりも次の獲物を探し出すことに専念すべきだ。
~Fin~