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堕天使シリーズ (流血・暴力表現注意)

我が名はルキフェル。堕天使だ。
本日、神から命じられた任務は、見回りと、社畜から背骨を抜いて剣にする事と、臀部からチェンソーを出して筍を切り取る事であった。
それは昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない事であった。

任務の帰りにふらりと店に寄ると、なんとそこには、先ほどまで戦っていた相手が居たのだ。

「……何故貴様がここにいる」
私は思わずそう言った。
すると奴も私に気付き、「……おや、これは奇遇ですね」と言った。

店内には他に客はいない。
店員もどこかへ行ったきり帰ってこない。
私達は二人だけで向かい合う事になった。

「今日はもう終わりですか?」
奴が言う。
「ああ、そうだな」
私が答える。
「では、少し話でもしていきませんか? 実は僕もまだ仕事中なんですよね」
「いいだろう」

断る理由も無いしな。
それに、こいつは敵ではあるが、そこそこ話が分かる男でもある。
こうして会話する分には面白い相手なのだ。
「それで、何の話をするんだ?」
私が問うと、奴は「えーっと陰部の痒みについてはどうでしょうか?」と答えた。

なるほど確かに興味深い話題ではあるな。
だが残念ながら、それについて語り合えるだけの知識を私は持ち合わせていない。

「すまんが他を当たってくれないか」
そう答えたのだが、奴はまだ諦めきれないようで、「じゃあ、何か質問は無いんですか?」と言ってきた。
「そうだな……」

そこで私は考えた。
そして気付いた時にはこう言っていた。
「お前は一体誰なんだ?」
その時の奴の顔といったらなかったぜ! 顔中の穴という穴から体液を噴出させながら、奴は笑った。
大声でゲラゲラ笑いながら椅子から転げ落ちた。
そのまま床の上でジタバタとのたうち回るものだから、辺り一面水浸しになってしまったよ。
まったく仕方の無い男だ。
そんなんじゃあ女にもてないぞ。

「おい、大丈夫か?」
私は手を差し伸べたが、奴はそれを無視して一人で立ち上がった。
奴の手を見ると爪が伸びていた。
それも人間の物とは思えない程に長く鋭く尖っている。
まるで刃物のようにだ。
そしてそれが奴の腕ごと消えてしまった。
消えたというよりは溶けたという方が正しいかもしれない。奴の肘があったはずの場所からは血の代わりに液体が流れ出していたからだ。

奴はそのまま腕を引きちぎるとそれを私に差し出した。
「これで良いですか?」
「いや、そういう事をしたかったわけじゃないんだが……」
私は困ってしまった。

しかしよく考えると、差し出された以上は受け取らない訳にはいかないよな? 仕方なく受け取ると、私の身体は勝手に動き始めた。
受け取ったばかりの肉塊で自分の首を切り落としたんだ。

凄まじい痛みが全身を襲う。あまりの痛さに気絶しそうになるが、何故か意識を失う事ができないのだ。

やがて、切断面から噴水の如く血液が噴き出す。
その飛沫を浴びると同時に私の身体は自由になった。……ああ、ようやく死ねるのか。良かった……。

そう思った瞬間、今度は猛烈な勢いで腹部が熱くなった。熱い、とにかく熱い。
焼け爛れてしまいそうな程の激痛に耐え切れずその場にうずくまると、頭上から奴の声が聞こえてきた。

「駄目ですよ、こんな簡単に死んだら」

……何だって? 奴の言葉を理解するよりも早く、またも私の身体は勝手に動いた。再び首を切断しようとしているのだ。私は慌てて自らの肉体を抑え込もうとしたが無駄だった。……結局それから二回、計三度、私は自分自身の手で命を絶つ羽目となった。

その後、傷口を塞いで貰ってなんとか一命を取り留めたものの、しばらくは動けなかった。

奴は何事も無かったかのように「さて、そろそろ行きますかね」などと言いながら立ち去ろうとしたが、私が「待ってくれ!」と言うと、「何ですか?」と振り返った。

「最後に一つだけ聞かせてくれ」
「はい、何でしょう?」
「どうして私を助けた?」
すると奴はニヤリと笑って言った。
「それは勿論――」

……そこまで言うと奴の姿は掻き消えるようにして消え失せてしまった。……まあいいか。
今度こそ本当に死ぬことができたみたいだしな。



<コメント:バッドエンド編>
5.神罰が下る時(バッドエンディング)
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