治金丸
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雨が降ると、主は頭が痛くなるという。テイキアツがどうとか、キショウビョウがどうとからしいのだけれど、その辺りの知識はオレにはあんまりないから、寝込む彼女を前にしても、何もしてあげられない自分がいつも歯がゆかった。
「膝を貸そうか」
ある日、居ても立ってもいられなくて、そう声をかけた。今思うとずいぶん的外れな進言だったに違いない。でも、人間は弱ると人恋しくなるらしいので、誰かと触れ合っていたほうがいいのかもしれないと、その時は本当に 思ったのさ。
言ってから、しまった、となった。男のオレの膝なんて、硬くて寝心地なんて悪いに決まってるじゃないか。脇差の中でも、体格は良いほうだと自覚している。そんなオレの膝に頭を乗っけたら、余計頭痛がひどくなりそうだ。
ところが、「やっぱり今のナシ」とオレが口を開く前に、主は小さく返事をした。
「いいの?」
いいのって、主。それはむしろ、オレの台詞なんだけどなぁ。
オレは「や」を発するはずだった口を、一旦閉じた。雨の音だけが、部屋の中に響いている。
正座を崩し、あぐらをかく。たぶん、こっちのほうがいいはずだ、多少は。
主はゆっくり と上体を起こすと、ためらうことなくオレの膝に頭をあずけた。そのまま納まりのいい角度に何度か乗せ直すので、1枚の布越しに擦れる髪がくすぐったくて。
「治金丸」
「ん?」
「ちがねまる」
「……うん」
額の髪をすっと掻きあげたら、頬をふっくらさせて笑う主と目が合った。
ずれ落ちたタオルケットを引き寄せ、その身体にかけてやる。さっきまで痛いと嘆いていた頭をそおっと撫でれば、「ふふふ」と彼女は声を漏らした。
これから雨の季節になるけれど、オレなんかの膝でいいのなら、いつでも貸すからさ。
(20230529/にこら)
