原型ポケモン
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独りよがり
俺は◯◯が好きだ。友愛や親愛ではなく、ひとりの女として◯◯が好きだった。 気づけばいつも◯◯を目で追っていた。いつも◯◯のことを考えていた。◯◯が笑っていれば、それだけで俺も自然と笑顔になれた。 気持ちを伝えたいとは思わない。何故なら俺はポケモンで、◯◯はヒトだからだ。いくら俺が◯◯を恋い慕おうとも、種族の差ばかりはどうすることもできない。それに1000年生きるといわれる俺たちだ。◯◯のほうが先に老い、死んでしまうだろう。どう足掻いても時は止まってくれやしないのだから。 ならばせめて俺は、少しでも長く彼女と同じ時間を過ごしたい。少しでも多く彼女の表情を、仕草を、声を覚えていたい。◯◯の喜びや楽しみを共に感じたい。悲しみや苦しみは共に背負ってやりたい。 パートナーとしての地位は誰にも譲る気はない。しかし、◯◯を幸せにするのは俺の役目じゃない。◯◯は将来、自分と同じ種族の男と結ばれるのだろう。◯◯はそいつと二人で幸せになるべきなのだ。
いつかくるその日までは、◯◯の一番は俺であってほしいと思う。 それは俺が抱く、唯一のわがままである。
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の
私には好きな人がいる。いや、人と言っては語弊がある。何故なら彼はポケモンだからだ。 知らずうちに草むらに足を踏み入れてしまい、野生のポケモンに襲われそうになった私を彼が助けてくれたのが、私たちの出会いだった。そしてそれは、私がアブソルに一目惚れした瞬間でもある。 最初は戸惑った。ポケモンに恋をするなんて、自分は狂ったのかと嫌悪すら感じた。しかしその思いは日に日に増すばかりで、とうとう私は自分の心と向き合った。 気持ちを伝えようとは思わない。私はヒトで、彼はポケモン。絶対的な種族の差。その壁を乗り越える勇気が、私にはなかった。私はどうしようもなく臆病だったのだ。 彼をパートナーにしたのは、私の醜い独占欲だ。他の誰にも取られたくない、私の隣にいてほしい。彼がモンスターボールに入ってくれた時よぎったのは、果たして満足感だっただろうか、罪悪感だっただろうか。今ではよく覚えていない。 「アブソル」というポケモンは大変寿命が長く、1000年は生きるといわれている。きっと私が死んだ後も、彼は変わらず生き続けるのだろう。もしかしたら違う誰かの手持ちになるかもしれない。そう考えると胸が締めつけられたが、私はそこまでアブソルを縛りつけたくはなかった。ただ、私が死ぬまででいい。アブソルが生きる長い時間のほんの一部を、私に頂戴。
私は欲張りだから、彼に忘れてほしくないと思う。全部じゃなくて構わない、頭の隅っこでいいから、ああ自分はこんなヒトと一緒に過ごしたこともあったな、と時々思い出してもらいたい。 それだけで私は、幸せを感じることができるのだから。
ピロートーク |
(20120110/25*la)