原型ポケモン
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まったく情けないことである。昨日立ちよった町で警告されていたにもかかわらず、うっかりポチエナの巣に踏みいってしまった。その結果がこのザマだ。
『ほら、立てる?』
「ん、何とか……」
たおやかな動作でわたしの手をとり、立ち上がらせてくれるのは無二の相棒、サーナイト。反対の手でぽんぽんとわたしの腰の土をはらってくれるあたり本当にできた子だ。紳士すぎる。このサーナイトが紳士2019優勝間違いない。
それにくらべてわたしはどうだ。十数匹のポチエナに追いかけ回され、雑草だらけ泥だらけ。あげく軽い段差に気づかずすべり落ち、足首をひねってしまった。
『◯◯』
わたしの手をにぎったまま、サーナイトは語気を強めて名前を呼ぶ。
『どうしておれを出さなかったの』
「──だって……」
事前に注意されていたのに、うかつにポチエナの巣に近づいてしまったのはわたしの落ち度だ。彼らはその習性ゆえに追いかけてきただけ、悪いことは何もしていない。なのにサーナイトの手加減ナシのきあいだまの餌食になるなんて、あまりにも不憫じゃあないか。
『……はあ』
あからさまなため息をついたあと、サーナイトはあのね、と続ける。にぎられたままの手に力がこめられた。
『無意味なバトルを避けたい◯◯の心構えは素敵だと思うけどさ、おれとしてはもっと自分を大切にしてもらいたいんだ』
なんのためにおれがいると思ってるの。する、とすべらかな手のひらで頬をなでられる。
『おれに頼ってよ。ちゃんときみを守らせて』
無理だ、かっこよすぎる。このサーナイトがかっこいい2019優勝間違いなしだ。コータスみたいに煙が出てるんじゃないかってくらい顔が熱くなって、わたしは「ひゃい」と答えるので精一杯だった。情けないにもほどがある。
わたしの返事に満足したサーナイトは、にっこり微笑んでうなずいた。
『よし、じゃあ次の町へ急ごう!』
「うわっえっちょっ!?」
『ん?』
んじゃない、んじゃないよ。なぜお姫さま抱っこなのか。今のわたしは絶対ヘイガニよりも赤くなっている。
『歩くのつらそうだったから』
「で、でもおおおもいでしょわたし」
『おれ重力感じないから平気』
「そこは否定してよ!」
アハハとさわやかに笑いとばすサーナイトに、もう何を言っても無駄だと悟った。
『それと、おれだってちゃんと手加減くらいできるよ』
「え、嘘だあ」
『嘘じゃあないさ。1匹倒せばあとはみんな逃げてくだろ?』
「……」
誰だ紳士とか言ったの。
(20190923/25*la)