原型ポケモン
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◯◯の柔らかな指先が、そ、と私の本体である海藻に触れる。彼女は錨のアームに腰掛けて柄にもたれかかりながら、水平線に沈みゆく夕日をうっとりとした表情で見つめていた。橙色に染まるハノハノビーチ。辺りには私たちの他にも幾人もの男女がこの美しい景色を見ようと集まっていた。
手を絡ませる者、肩を寄せ合う者、そして口付けを交わす者──。周りをそういう者たちに囲まれていると、まるで自分も人間であるかのような錯覚を起こす。はたから見れば私たちはただのポケモントレーナーとそのパートナーだろう。けれども私と彼女はあやつらと同じく、確かに恋仲なのだ。
◯◯。聞いてくれ◯◯。私は君と繋ぐ手がほしいよ。君に口付けるための唇がほしいよ。
人間になりたいとは言わないが、せめて、せめて……。
彼女の耳には決して届かぬこの声は、叶わぬ夢は、波にさらわれ、泡となり、海の底へと沈んでいくのだ。
深海の花
(20170509/25*la)