原型ポケモン
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「……しまった」
こたつでまどろみながらテレビを観ていた時、シャンパンを買ってないことに気づいた。今日は12月25日、毎年クリスマスにはケーキと一緒にシャンパンを飲むのが恒例となっている私にとって、それはかなりの痛手だった。
若干うとうとしかけていたところだったし愛しのこたつがどうも私を離そうとしないので、まあ今年は我慢するかとも考えたが、困ったことにないとなると余計飲みたくなるのが人間の性 である。仕方ないとこたつの誘惑を振り払い、横で丸くなっているニューラに声をかけた。
「私今から買い物行くけど、どうする? 一緒に来る?」
というか一人じゃ寂しいからついてきてください。
心の声が聞こえたのか、ニューラはめんどくさそうな顔をしながらしぶしぶ立ち上がった。ありがとうマイパートナー、そしてごめん。しかしお礼にローストチキンを買ってあげるねと言ったら、ニューラは嬉々として玄関まで走っていった。……現金なヤツめ。
外は想像以上に寒かった。つい先ほどまでこたつにあたってたのが原因かも知れない。念のためマフラーと手袋してきて正解だった。隣でスキップしているニューラを見ながらぼんやり思う。普段はツンツンしてる分そのギャップがものすごく可愛い。小さく鼻歌まで歌っちゃってまあ、そんなにチキンがお好きかねニューラさんや。
私の視線に気づいたのか、ニューラは持っていたエコバッグで私をばしばし攻撃してきた。痛っ、痛いよニューラさん、痛いってばごめん! ちょ、ごめんって言ってるでしょ!
それでもなお攻撃をやめないニューラに、こちらも負けじとショルダーバッグで応戦する。端から見るとかなり滑稽だが、私たちはいたって真剣である。両者一歩も譲らぬ攻防を繰り広げていると、不意に頬にひんやりとした感覚が走った。
「わあ」
空を見上げれば、はらはらと舞い降りてくる粉雪。今年初めての雪だ。その幻想的な風景にしばし見惚れていたら、勝機と悟ったニューラの渾身の一撃(ただしエコバッグ)が私の鼻に見事にヒットした。
「い……ったあ!」
涙目で鼻を抑えていると、ニシシシッと意地の悪い笑い声が聞こえた。こんにゃろ、もう許さん。頭にきた私は今のこいつにとって死刑に等しい罰を下してやった。
「ニューラなんて嫌い。ローストチキンも私が全部食べてやる」
絶望に染まっていくニューラの表情は見ていてすこぶる面白かった。サッと私の肩に飛び乗ったと思えば、じんじん痛む鼻先に舌を這わせ舐め出す。ちょっとどんだけ必死なのこの子。可愛い。可愛いけど重い下りて28キロ。
ニューラを抱えて地面に下ろし、頭を撫でてやる。おそるおそるといった感じで私の頬に手を伸ばしてきた彼に「うそうそ、ふたりで食べようね」と笑いかけると、ニューラは違うというように首を横に振った。え、じゃあ何よ……。しばらく考えて、ようやく合点がいった。
「冗談だよ。あんたのこと嫌うわけないでしょう? 好き好き、だーいすき」
とたんニューラは泣きそうな顔で抱きついてきた。私の首に腕を回しぐりぐり頭を押しつけるその仕草があまりにも可愛すぎて、思わず私も抱き返した。ああもう、私はとことんこの子に甘いらしい。
しんしんと雪が降る町を、ニューラとふたり手を繋ぎながら歩く。願わくば来年のクリスマスも、彼と一緒に過ごせますように。幸せなら手を繋ごう
私の願いを乗せた吐息は、白く染まって世界に溶けた。
(20111215/25*la)