原型ポケモン
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大変言いにくいことではあるが、私◯◯は非常に悪質なストーカー被害に悩まされていた。何故だか分からないが奴は心底私にご執心のようで、私の近くにいる者すべてを排除しようとしていた。いわゆる独占恋愛型ヤンデレというやつだ。そのせいで次第に周りの人間は巻き込まれるのを恐れて私と関わろうとはしなくなり、私は完全に孤立無援状態。外に出れば奴は必ず私の前に現れた。何日も眠れない日々が続いた。やがて私は引きこもるようになった。しかしある日、私の頭の中の豆電球がピカーンと光ったのだ。──そうだ、引っ越そう。
そして1時間前。私はついにこの新天地、イッシュ地方はヒウンシティに到着した。ヒウンは飛ぶ雲、めでたい雲。見るもの感じるもの、何もかもが美しかった。ここなら奴もいない。私を見放した人たちもいない。ここで私の第2の人生を始めよう。輝く大海に誓いを立てていた矢先、少し離れた場所にいた男の子が発した言葉に背筋がこおった。
「パパ見てあれ! でっかいジャローダが空飛んでる!」
ジャローダとは確か、イッシュ地方の初心者向けポケモンのうち1体の最終進化形だったと記憶している。ハブネークやミロカロスのようなにょろにょろした姿をしていたはずだ。男の子の視線を恐る恐るたどれば、なるほどそこには緑色の長い体を持った何かが、まるで海を泳ぐかのように体をくねらせながら空を飛んでいた。
しかし私の勘が正しければ、あれはジャローダでもハブネークでもミロカロスでもなく、レックウザだ。そう、単によく見かける、野生のレックウザに違いない。私が知らないだけで、きっとイッシュでは普通のことなのだ。近くで大量発生でもしているのだろう。いかにホウエンがド田舎であったかがよく分かる。先進国イッシュではレックウザなんてそこらへんにうじゃうじゃ生息してるのだ。そうだよね、そうなんだよね、お願い神様そうだと言って。
「やあ◯◯、今日はずいぶん遠くまで来たのだな」
「さよなら私の新しい人生」
大量発生したレックウザではなかった。こいつは私のよく知るヤンデレストーカーのレックウザだった。ご苦労なことに遠路遥々私を追いかけてきたらしい。どんだけ私のことを好いているのかと。一体私の何が奴をこんなにも惹きつけているのかと。ご存じの方がいたら是非教えてほしい。
「ん? ただの散歩にしてはやけに大荷物じゃないか……ああなるほど! 今日からここで暮らすのだな? いやはや◯◯は気が早いな、我々はまだ結婚もしていないというのに……まあ君がそう望むのならば私はそれに従うまでだが」
「何で一緒に住むの前提なんだよ……」
「そうだろう? そうなんだろう? そうだと言え◯◯、いい子だから」
「……ハイ、ソウデス」
「ハッハッハ、良かった良かった。否定されたらどうしてやろうかと思ったぞ」
お分かりいただけただろうか。こいつは今「どうしてやろうかと思った」と言ったのだ。「どうしようかと思った」ではない。本当に恐ろしいポケモンである。もうやだヤンデレこわい。
無駄だと思ったが私は助けを求めるべく周りに視線を巡らせた。さっきの男の子と目が合った。化け物でも見たかのようなその目は一瞬で逸らされてしまった。泣きたい。ヤンデレこわい。
「さあ◯◯、我らの新しい愛の巣に案内してくれ」
うるさい黙れ。
(20140927/25*la)