原型ポケモン
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バトルの最中に相手のメガデンリュウが放ったほうでんが飛び火し、◯◯の手首をかすった。びりっとした痛みが一瞬走ったけれど、ぱっと見怪我をしたわけでもなさそうなので、その時はあまり気にかけずすぐさまバトルに意識を戻した。この後あんな大変な事態になるとは、思いもよらずに。誰そ彼
「お、お疲れー」
見事白星をあげたパートナーに声をかけると、彼はいつもより大人びた表情で小さくうなずいた。うわー絡みづらー。ルカリオは普段でも饒舌なほうではなかったが、◯◯の話にはたとえどんなにくだらない内容でもきちんと言葉 で相槌を打ってくれたのだ。でもこのもう一段階進化した姿、メガルカリオになってしまえば話は別。バトル中に◯◯が指示を出しても、彼はうんともすんとも返事をせず、ただ黙々と言われたとおりに動くだけ。もふもふ度が増して房が伸びてあちこち赤くなっただけなはずなのに、何だか中身まで私の知らないルカリオになっちゃったみたいだ──と、そこで##NAME1##はあることに気がついた。ちょっと待って何かおかしい。
「ね、ねえあんた、何で戻らないの?」
『……さあ』
相手のメガデンリュウはとっくにつんつるてんのデンリュウに戻っているのに、◯◯の相棒は一向にメガシンカが解ける兆しがない。何でだ。メガルカリオもメガルカリオで、バトルの間でしか見られない自分の姿をまじまじと観察している。そうだよねーいつもはじっくり見てる暇なんかないもんねーでも今は話し合うべきだと思うんだ!
テンパッてる主人の波導を感じ取ったらしく、メガルカリオはすっと顔を上げたかと思うと、すぐに◯◯の左腕に視線を向けた。
『それ』
「え、どれ?」
『メガリング。さっき攻撃が当たった』
「……あっ」
『壊れたんじゃないか』
「そんな馬鹿な」
こんなことってあるんだろうか。いやでも現にメガルカリオはルカリオに戻れていないし、それ以外に理由は考えられない、か? 手首に巻いたメガリングをよーく見てみると、メガストーンが微妙に帯電してるようなしてないようなやっぱりしてるような……よく分からない。ま、まあ電気を放出したなら吸収もできるはずだよね、と先ほどまでバトルしていた相手に助けを求め、ってあああいない! デンリュウどころかトレーナーもいない! あいつ逃げたな! 今度会ったらお前の頭もつるつるにしてやる!
「っていうか賞金もらってないしー!」
◯◯は 考えるのを やめた!▼
◯◯が一人でわたわたしてる間にも、メガルカリオは両手をぐっぱぐっぱさせながら体の具合を確かめている。あんたのことでこんなに悩んでるのに! 頭を抱えてうずくまる◯◯を見て、メガルカリオはその場に膝を折り、◯◯の頬を両手で包み込んだ。どこの王子さまだと問いたい。片や◯◯といえば、押された弾みで頬の中の空気がぶっと音を立てて口から漏れ、何ともマヌケな顔になっている。やめてこれ女の子のする顔と違う!
「ど、どーしたのルカリ」
『嫌か』
「お?」
『◯◯はこの姿の俺は嫌いか』
「……えーと……」
『俺は◯◯が好きだから、◯◯のために強くなりたいと思い、この姿になった。なのに◯◯は、俺がこの姿になるといつも一歩距離を置いている』
じいっと見つめてくるメガルカリオの目力に、◯◯は思わず肩をすくめた。背中からぶわっと嫌な汗が吹き出す。きっと今まで彼に向けていた苦手意識は波導のおかげで筒抜けだったに違いない。なんて面倒な能力! そしてこう思ったのももちろんメガルカリオには丸聞こえだったのだが、混乱している◯◯は分かっていない。この危機的状況をどう切り抜けるか、それが問題だ。とりあえず気まずい空気を打破するために笑ってみる。にこっ。しかしメガルカリオはそんな◯◯をスルーして会話を続けた。何の解決にもなっていない。
『確かにメガシンカする前とは外見も違うし、性格も幾分か変わっていると自分でも思う。だけど◯◯、俺はあなたのパートナーであることに変わりはないんだ』
「私の……」
◯◯はメガルカリオの真紅の瞳に、いつもそばにいてくれる大切な相棒の影を見た。そして同時に胸が痛んだ。前にも一度同じようなことがあったのに、それをすっかり忘れてしまっていた。彼がルカリオに進化した時、◯◯は小さい頃から一緒に育ってきた大好きなリオルがいなくなってしまったと思いこみ、大泣きしたのだ。あの瞬間のルカリオの気持ちは相当なものだったはず。そんな思いを、私は彼にまたさせてしまっていたのか。
頬に当てられたままのメガルカリオの手に、そっと自分の手を重ねる。一瞬、ぴくりと彼の指先が動いた。けれど拒まれることはなかった。どうでもいいが◯◯はまだオクタンのように唇を尖らせたままであるが、これは当然キスを求めているわけではない。閑話休題。
「ごめん」
『……』
「私、また馬鹿やっちゃったね。メガシンカしても、あんたは私の大好きなルカリオだ」
『だいすき』
「うん。いくら今まで以上に無口で何考えてるのか分かんなくて突然こんな積極的な行動取っちゃっても、メガルカリオはルカリオなんだよね」
『……それはそれでむかつく』
「何で!?」
『確かに俺はルカリオでルカリオは俺だけど、今の俺はメガルカリオだから、この姿の俺を見てほしい』
「ややこしいわ!」
その後◯◯はミアレのプラターヌ博士を訪ね、無事メガリングを修理してもらった。メガシンカが解けたルカリオは、◯◯に迫ったことを思い出しては赤面していた。やっぱりルカリオとメガルカリオは違うんじゃないかな、ルカリオにはあんな大胆なことできないし。しかし◯◯がそう思うたび、彼が熱を孕んだような眼差しでこちらを見ていることに彼女は気づいていない。
メガリングの故障というまさかの偶然で生じた謎の三角関係。その後の彼らがどうなったのかは、まあ、ご想像にお任せということで。
(20140705/25*la)