原型ポケモン
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そのチョロネコはサンヨウシティのはずれにある、夢の跡地に1匹で住んでいます。可愛らしい仕草で油断させて相手の持ち物を盗んだり、おしゃべりをしてる最中にいきなりツメで引っ掻いてきたりするので、チョロネコは人間からも、同じポケモンからも嫌われていました。
いつだったかミネズミが勇気を出して、どうしてそんな意地悪ばかりするのかと聞いたことがありました。するとチョロネコはニヤニヤ笑いながらこう答えたそうです。誰かが困っているのを見るのが何より楽しいから!──その噂はたちまち広まり、いつしか嫌われ者のそばには誰も近寄ってこなくなりました。
チョロネコは毎日退屈で仕方ありません。誰かが訪ねてこなければ、悪戯もしようがないからですからね。
さてこのお話は、そんな暇をもてあましたチョロネコのもとに、一人の女の子がやってきたところから始まります。§
その子は◯◯といいました。つい先日サンヨウシティに引っ越してきたばかりの、小さな女の子です。パパとママは荷ほどきに手を焼いて◯◯の相手をしてくれません。荷物が片付いたら一緒に遊んであげるから、お外を散歩しておいで。ママにそう言われ、◯◯は大好きな人形を胸に抱き夢の跡地へやってきたのでした。
それを見たチョロネコは顔をしかめました。人間の女の子はすぐ大声で泣き出すのであまり好きではありません。よおし、久しぶりの獲物だけど、早く追い返しちゃおう。チョロネコはぺろりと舌舐めずりをすると、草むらから勢いよく飛び出しました。
ばあ!
いきなり現れた紫色のポケモンを見て、◯◯は固まってしまいました。へへ、驚いてるぞ! チョロネコは思いました。ところが少女は一度自分の手の中の人形に視線を落とすと、とたんに目をきらきらさせながらこう言ったのです。
「チョロネコだ! ほんもののチョロネコだあ!」
◯◯が大切に抱きしめていたのは、チョロネコドールでした。◯◯のパパが誕生日のプレゼントに買ってきてくれたもので、それ以来◯◯の一番の友達でした。
驚いたのはチョロネコのほうです。まさか喜ばれるとは思ってもみなかったので戸惑ってしまいました。どうしたらおどかすことができるだろう。少し考えたあと、チョロネコは少女に『すなかけ』をしました。ほら、早く出ていけ! するとどうでしょう、◯◯は「おすなあそびね! わたしもすき!」とチョロネコに砂をかけ返したのです。おかしいなあ、意地悪してるのに楽しそうだぞ。
鋭いツメを立てて襲いかかるフリをしても、「おにごっこ? あなたがおにね!」と◯◯は夢の跡地を走り回ります。チョロネコは思わず少女の背中を追いかけました。思いどおりにいかずイライラしていたチョロネコですが、きゃあきゃあ笑いながら逃げる◯◯を見ていると、何だか次第に楽しくなってきました。考えてみれば、チョロネコはいつも誰かをおどかすだけで、誰かと一緒に遊んだことがなかったのです。待て待て、捕まえちゃうぞ! チョロネコは自分が笑っていることに気がつきました。誰かと遊ぶのって、楽しいことなんだ!
ところが。
びりっ!
チョロネコは◯◯を捕まえようとして、うっかり彼女が持っていた人形をツメで破ってしまいました。中から白い綿が飛び出し、ボタンの目が取れました。チョロネコはこの女の子が泣き出しちゃうかもと焦りました。泣いてる子どものなぐさめ方を、チョロネコは知りません。
しかし、◯◯は泣きませんでした。ただ、取れたボタンを拾い、うつむいたままさよならも言わずに夢の跡地を出ていきました。
残されたチョロネコは、長い間その場に立ちつくしていました。最初から追い出そうとしてたんだ、うまくいって良かったじゃないか。そう考えても全然嬉しくありません。チョロネコは生まれて初めて、誰かに嫌われたくないなと思いました。§
何日か経ったあと、◯◯は再び夢の跡地にやってきました。物影からその様子を見ていたチョロネコは、出ていくか迷っていました。◯◯はあのチョロネコドールを持っていません。ああやっぱり、もう捨てちゃったのかな。
「チョロネコー! どこにいるのー?」
◯◯が呼んでいます。何度も何度も呼んでいます。やがてチョロネコは、そっと顔をのぞかせました。チョロネコを見つけた◯◯は、ぱっと顔を輝かせて走り寄ってきました。
「いっしょにあそぼ!」
笑顔を浮かべながら◯◯が言います。あれあれ、怒ってないのかな? 不思議に思っているチョロネコの両手を、◯◯はぎゅっとにぎりしめました。
「やぶれたおにんぎょうはママがなおしてくれたわ。でもね、ほんとのおともだちがいるから、いえにおいてきたの!」
本当の友達。それを聞いてチョロネコは、◯◯の手を引いて走り出しました。今日は何をして遊ぼうか。鬼ごっこ、かくれんぼ、お昼寝でもいいなあ。友達と一緒ならきっと、何をしても楽しいと思うからね。
(20140419/25*la)
